韓国に「たばこ1箱1000円時代」がやってくる?禁煙学会が新政権に値上げを強く求める理由

2025年08月07日 社会 #時事ジャーナル
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韓国で新政権が発足以降、たばこ価格の引き上げを主張する声が高まっている。最近、韓国禁煙学会がたばこ価格を経済協力開発機構(OECD)平均である1万ウォン(日本円=約1000円)に引き上げるべきだと主張したことによる。

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たばこ価格を引き上げてから10年が経過したことに加え、税収不足に苦しむ政府としては、値上げの名分が十分であるという分析だ。しかし、庶民に対する増税という批判が負担になる。一部では、「規制の死角地帯」とされる液状型電子たばこから手を付けるのではないかという見方も浮上している。

8月6日、業界によると、蔚山大学医科大学ソウル峨山病院家庭医学科のチョ・ホンジュン教授と韓国たばこ規制研究教育センターのイ・ソンギュ・センター長は、韓国禁煙学会誌の最新号に「新政権が必ず実行すべきたばこ規制政策」という研究を発表し、たばこ価格の引き上げの必要性を強調した。

研究陣は「たばことの戦いは短期的な成果ではなく、長期的な公共の利益への投資だ」とし、「今の選択が未来世代の健康を左右する以上、新政権による責任ある決断と実行が切実に求められる」と述べた。

研究陣は現在、1箱4500ウォン(約470円)のたばこ価格を、OECDの平均である1万ウォンまで最低でも引き上げるべきだと主張した。また、価格引き上げによって確保された財源の半分以上は、たばこ規制および禁煙支援事業に活用すべきだと付け加えた。

たばこ価格は2015年に従来の2500ウォン(約260円)から2000ウォン(約210円)引き上げられて以降、10年間据え置かれている。

10年間、同じ価格が維持されていることで、たばこ会社の負担も増しているという分析もある。IBK投資証券によると、10年以上価格据え置きが続く中、たばこ葉などの原材料価格が上昇し、売上原価率(単独基準)は2015年の33.5%から昨年は52%まで増加した。

製造コストが上昇している一方で、たばこ価格は据え置かれており、企業の収益性が悪化しているという意味だ。

写真はイメージ
(写真=サーチコリアニュース編集部)

たばこ価格の引き上げの可能性に重みが加わる最大の理由は、最近のチョン・ウンギョン保健福祉部長官の人事聴聞会での発言である。チョン長官は「たばこ価格政策によりたばこ消費および青少年の喫煙率が減少したが、最近は横ばいの状態であり、新種のたばこが拡散しているため、価格および非価格政策を点検・補完する必要があると考えている」と述べた。政府レベルでのたばこ価格に対する認識の変化がうかがえる発言である。

政府の財政状況が良くないことも、値上げ説を後押しする要因だ。尹錫悦(ユン・ソンニョル)前政権の減税政策と景気低迷が続き、2023年と2024年にはそれぞれ56兆4000億ウォン(約6兆165億円)、30兆8000億ウォン(約3億2856億円)の税収不足が発生した。これを受け、李在明(イ・ジェミョン)政権は税制改編案を通じて歳入基盤を回復し、税収を確保する計画だ。

代表的には、法人税率をすべての課税標準区間で1%ポイントずつ引き上げ、2022年の水準である最高25%に戻す。また、金融投資取引税の導入を前提に過去3年間段階的に引き下げてきた証券取引税も、0.15%から2023年水準の0.20%に戻す。最近議論となっている大株主の譲渡所得税の基準を50億ウォン(約5億3337万円)から10億ウォン(約1億668万円)に引き下げようとする動きも、税収確保の一環とされる。

企画財政部によると、たばこに課される各種税金や負担金を含む「諸税負担金」は、昨年で11兆7000億ウォン(約1兆2482億円)に上る。これは紙巻きたばこおよび加熱式たばこを含めた数値だ。販売量(約35億箱)が同じだと仮定した場合、専門家が主張する最低引き上げ基準の8000ウォン(約850円)にたばこ価格が上昇すると、算術的には諸税負担金は年間で20兆ウォン(約2兆1336万円)を超えるとされる。毎年9兆ウォン(約9601億円)以上の追加税収を確保できる計算であり、税収が不足している政府がたばこ価格引き上げカードを取り出そうとしている理由だ。

価格引き上げは電子たばこから?

たばこ価格が実際に引き上げられれば、喫煙者の反発と「庶民増税」といった批判は避けられない見通しだ。こうした理由から、紙巻きたばこや加熱式たばこではなく、液状型電子たばこに先にメスを入れるのではないかという見方が出ている。

チョン長官は「合成ニコチンを使用した液状型電子たばこも紙巻きたばこと同様に健康に有害であり、同等の規制が必要だ」という立場を示している。

現行のたばこ事業法では、「たばこ」はたばこ葉を原料の全部または一部とするものと定義されている。合成ニコチンで作られる液状型電子たばこが規制の死角地帯にある理由もここにある。

これを受けて、「たばこの定義を『たばこ葉およびニコチン』に拡大し、一般のたばこと同じ規制を適用すべきだ」との主張が絶えず提起されてきた。また、液状型電子たばこは無人店舗やオンラインでも販売が可能で、成人認証の手続きも甘く、青少年が容易にアクセスできる点も批判されている。

税収の観点からもプラスになる見込みだ。「国民の力」のソン・オンソク議員によると、立法の空白によって合成ニコチンを含む液状電子たばこに課税できなかった諸税負担金は、過去4年間で3兆3895億ウォン(約3614億円)に達するとの推計が出ている。

問題は課税基準だ。企画財政部が4月に発表した「2024年たばこ市場動向」によると、企画財政部は電子たばこの液体0.4mlの容量を、たばこ1箱と見なしている。しかし、2022年に疾病管理庁は4mlを1箱と同等と見なしていた。重量課税方式(従量税)に基づいて液状基準を定める際、その基準が機関ごとに異なるというわけだ。

これに対し、電子たばこ協会総連合会は「液状型電子たばこは使用する機器や液状ニコチンの濃度によって消費量が大きく異なるため、この特性を反映できない現行の従量課税方式では、課税の公平性に問題が生じ続けるしかない」と主張している。

電子たばこ業界は、消費量が異なる液状たばこの特性を反映して、現行の従量税を「従価税」(卸売価格の50%)に変更し、税制を現実化すべきだと主張する。海外の主要国も液状たばこに対しては従価税を採用している。アメリカでは全州の約60%が平均で卸売価格の45.7%に相当する従価税を適用しており、中国も卸売価格の36%に相当する従価税を課している。

電子たばこ協会総連合会側は「液状型電子たばこによる深刻な社会的副作用を解消するには、強力な規制とともに、まずその原因を診断しなければならない」とし、「納税可能な税率に変更し、強力な規制、国民の健康権、青少年保護、小規模事業者の安定化および健全な市場秩序が求められる時点に来ている」と述べた。

(記事提供=時事ジャーナル)

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