韓国・尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領の夫人であるキム・ゴンヒ氏が、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)側から高級ブランド品を2度受け取った事実を認めた。
これまで特別検察の取り調べでは一貫して否認してきたが、チョン・ソンベ氏が法廷で供述を翻し、物証も押収されたことを受け、ついに実際の受領を認めたとみられている。ただし、「尹前大統領の職務との関連性や対価性は一切ない」と主張し、容疑の否定を続けている。
キム・ゴンヒ氏の弁護団は11月5日、報道機関に送った声明で「キム・ゴンヒ氏がチョン・ソンベ氏から2度にわたりバッグの贈り物を受け取った事実を認める」と明らかにし、キム・ゴンヒ氏のコメントとして「自らの至らなさを深くお詫び申し上げます」と伝えた。
特定犯罪加重処罰法違反(斡旋収賄など)の疑いで、ミン・ジュンギ特別検事チームによって8月29日に拘束・起訴されたキム・ゴンヒ氏が、容疑に関する事実関係を一部認めたのは今回が初めて。彼女はこれまでの特検の調べに対し、「統一教会から高級品を受け取ったことはない」と一貫して否定していた。
特別検察チームによれば、チョン・ソンベ氏は政府に対して統一教会関連プロジェクトやイベント支援を依頼する見返りとして、2022年4月に約800万ウォン(約80万円)相当のシャネルのバッグ1点を、同年7月には市場価格約6220万ウォン(約620万円)のグラフのネックレス1点と、約1200万ウォン(約120万円)相当のシャネルのバッグ1点をキム・ゴンヒ氏側に渡したとみている。
また、シャネルのバッグの購入には、キム・ゴンヒ氏の側近であるユ・ギョンオク元大統領室行政官が関与しており、4月にはバッグ1点と靴1足、7月にはバッグ2点をシャネル店舗で購入・交換していたことが確認されている。
キム・ゴンヒ氏側はシャネルバッグ2点の受領は認めたものの、グラフのネックレスについては受け取っていないと主張。また「統一教会との共謀や、いかなる形の依頼・対価関係も存在しない」と強調した。
弁護団は受け取りの経緯について「(キム・ゴンヒ氏は)最初は断ったが、チョン・ソンベ氏の強い勧めを最後まで断り切れなかった」と説明し、「自らの過ちを痛感しており、贈り物は使用せず、すでにすべてチョン・ソンベ氏に返却済みである」と主張した。
さらに「公職者の配偶者として慎重であるべき立場にもかかわらず、不適切な行動で国民の皆さまにご迷惑と失望をおかけしたことを深く反省している」とし、「今後はすべての手続きに誠実に臨み、一切偽りなく真実を明らかにしていく」と付け加えた。
キム・ゴンヒ氏がブランド品の受領を認めた背景には、共犯者とされるチョン・ソンベ氏の証言翻覆が影響したとみられる。チョン・ソンベ氏は当初、特検の調べで「統一教会から受け取った金品を紛失した」と主張していたが、10月15日の初公判では「統一教会関係者から受け取った金品をユ元行政官に渡した」と証言を改めた。
その後、チョン・ソンベ氏はキム・ゴンヒ氏から返却されたとするグラフのネックレス1点、シャネルのバッグ3点、シャネルの靴1足を同月21日に特別検察に提出した。
キム・ゴンヒ氏側は受領の事実は認めつつも、尹前大統領との職務的関連性や見返り性は否定していることから、今後の法廷では激しい攻防が予想される。特定犯罪加重処罰法上の斡旋収賄罪は、「公務員の職務に関連する事項の斡旋に関して金品や利益を受け取った、または要求・約束した者」を処罰対象としている。
キム・ゴンヒ氏と弁護団は、チョン・ソンベ氏の証言や証拠から受領そのものを否定することは困難と判断しつつも、「受け取った品は公務員の職務と無関係であり、依頼を受けて斡旋行為を行った事実もない」という論理で防御する構えだ。
弁護団はまた、「特検は金品授受の見返りとして複数の依頼があったと主張しているが、これらの依頼はキム・ゴンヒ氏に伝達されていない」とし、「大統領の具体的職務権限とも無関係で、単なる漠然とした期待や好意的発言に過ぎない」と主張している。
さらに「(元統一教会世界本部長の)ユン・ヨンホ氏本人も、キム・ゴンヒ氏や大統領に具体的な依頼をした事実はないと述べており、これらの事実関係は特検が主張する“依頼”が斡旋収賄罪の構成要件を満たさないことを明確に示している」と付け加えた。
一方、拘置所に収監中のキム・ゴンヒ氏は現在、保釈を裁判所に申請中だ。「めまいや不安症状があり治療が必要」との理由を説明している。
特別検察チームは、斡旋収賄のほかにもキム・ゴンヒ氏がドイツモータース株価操作事件(資本市場法違反)や公認候補選定介入(政治資金法違反)など複数の容疑を受けており、主要証人との接触による証拠隠滅の恐れが残っているとして、保釈を認めない方向で意見書を提出する方針だという。
(記事提供=時事ジャーナル)
■『週刊文春』が報じた旧統一教会の“遠征賭博資金”を追及し始めた韓国検察
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