離婚訴訟の結果に不満を抱き、走行中の地下鉄に放火した60代の男に対し、ソウル南部地裁が懲役12年を言い渡した。
ソウル南部地裁刑事合議15部(ヤン・ファンスン部長判事)は10月14日、殺人未遂、現存電車放火致傷、鉄道安全法違反の罪で起訴された60代の男、ウォン某被告に懲役12年を宣告し、3年間の保護観察を命じた。
また、可燃性物質の所持禁止や保護観察所が指示するプログラムの履行などの遵守事項も課した一方で、検察が求めた10年間の位置追跡電子装置(GPS)装着命令は棄却された。
裁判所は判決で、「被告人は離婚訴訟の結果に対する個人的な不満を理由に、487人が乗車していた地下鉄電車内でガソリンを撒いて火をつけ、乗客を負傷させて恐怖に陥れた。犯行の性質は悪質で、非難の余地が大きい」と指摘した。
続けて「被告の犯行により公共交通の安全に対する一般市民の信頼が損なわれ、不安感も長く続いた。ごく一部の被害者を除いて被害の回復もなされていないことから、厳罰は避けられない」と述べた。
ただし、「明確な殺意をもって犯行に及んだわけではなく、同種の犯罪の前科や最近の刑事処罰歴がない点は有利な情状として考慮した」と付け加えた。
ウォン被告は5月31日午前8時42分ごろ、ソウル地下鉄5号線汝矣ナル(ヨイナル)駅を出発し、麻浦(マポ)駅に向かっていた電車の4号車で、床にガソリンを撒いて火をつけたとされる。
この火災でウォン被告を含む23人が煙を吸って病院に搬送され、現場では129人が応急処置を受けた。また列車1両の一部が焼損し、財産被害は3億ウォン(約3000万円)を超えたという。
検察の調べによると、被告は離婚訴訟の財産分与結果や妻への裏切り感に憤りを感じ、これを世間に知らしめようと不特定多数を狙って犯行に及んだという。犯行前にはガソリンを購入して機会をうかがい、定期預金や保険の解約、投資信託の換金などで全財産を整理したうえで、親族に送金するなど身辺を整理していたことも明らかになった。
検察は起訴にあたり、警察が当初適用した現存電車放火致傷罪に加え、乗客160人に対する殺人未遂罪を追加していた。
9月16日の公判で検察は、被告に懲役20年を求刑していた。
一方、地下鉄を運営するソウル交通公社は6月、ウォン被告に対して約1億8400万ウォン(約2000万円)の仮差押え申請および損害賠償訴訟をソウル東部地裁に提起している。
(記事提供=時事ジャーナル)
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