世界中で高齢化が急速に進んでいる。
日本はその傾向が顕著で、65歳以上の人口が全体の4分の1となった。一般的に、高齢者人口の比率が7~14%を「高齢化社会」、14~21%を「高齢社会」、21%以上を「超高齢化社会」と呼ぶため、日本はすでに超高齢化社会に突入しているわけだ。
韓国は2000年に総人口のうち、高齢者人口が占める比率が7%を超え、2013年は12.2%(統計庁)に。高齢社会、超高齢化社会が目前に迫っていることになる。ちなみに、2030年には31.4%、2050年には41.5%になるという予測も出ている。
とはいえ、韓国の高齢化に対する対策は万全とはいえない。
それは各種の数字を見れば明らかだ。
世界の高齢者たちの生活環境を比較調査している国際団体「ヘルプエイジ・インターナショナル」が2015年9月9日に発表したところによると、韓国の総合点数は44点で、96カ国中60位だった。1位のスイスは90.1点で、日本は8位の79.3点だ。
韓国は健康部門では42位で、60歳以上の残りの期待寿命は24年と長かったが、高齢者の貧困率は48.5%。同調査の平均貧困率12.9%を大きく上回る82位となっている。
2015年5月に経済開発機構(OECD)が発表した報告書でも、韓国の65歳以上の高齢者の相対的貧困率はOECD加盟国平均12.6%の3倍以上になる49.6%とはじき出されていた。
生活環境が苦しいためか、高齢者による犯罪も増加中だ。
韓国法務部が発表する高齢者犯罪現況資料によると、60歳以上の犯罪者は2010年に15万5171人だったが、2014年は21万6313人と39.4%も増加。人口に占める高齢者の比率が高くなったため、一概にはいえないとはいえ、2013年は強行犯罪だけで7万7000件に上っていることは問題視せずにはいられない。
生活苦や社会的地位の低下による不満が、高齢者たちを強行犯罪に走らせていると見てもいいだろう。
一方で、高齢者に対する虐待も少なくないようだ。
中央老人保護専門機関によれば、身体的・精神的・性的に暴行したり、経済的な搾取や放置などの虐待行為に関する申告件数は、2009年は2675件だったが、2013年には3520件にまで増加している。加害者は息子45%、娘14%、配偶者12%、嫁7% と、80%近くが身内からの虐待であるというショッキングな結果が出ている。
そんな韓国でとりわけ急速に増えているのが、一人暮らしの高齢者だ。
2000年に54万人だった60歳以上の一人暮らしは、2013年時点で125万人と倍以上に増えており、2035年には343万人に達する見通しだとされている。それに伴い、当然、孤独死する高齢者たちも増えている。とある市民団体の調査によると、2014年には年間600~700人が孤独死したそうだ。
それどころか、高齢者の自殺率も高まるばかり。もともと韓国はOECD加盟国の中でも10 万人当たりの自殺率が最も高いことで知られているが、その件数はここ数年で2倍に増え、80.3人に達した。前述した事例でもわかる通り、生活苦や虐待、孤独さを理由に命を絶ってしまう高齢者たちが後を絶たないからだ。
何よりも心苦しいのは、旧正月や秋夕(中秋節)の時期になると、一人暮らしの高齢者の自殺が増えるという話だろう。テレビや新聞で家族の帰省ラッシュが報じられ、近所でも家族団らんの光景が多く見られるこの頃、一人暮らしの高齢者たちはいつも以上に孤独を痛感し、生きる気力を失って自らの命を絶ってしまうという。
韓国の高齢者問題は、日本よりも深刻といえるかもしれない。
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