「韓国消滅の危機」に目を背ける巨大両党のリーダーたち…若者のための国はどこにもない絶望

2024年10月13日 政治
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2017年の大統領選挙で「共に民主党」の候補であったムン・ジェイン(文在寅)は「積弊清算」を掲げた。

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国政壟断事件とパク・クネ(朴槿恵)元大統領の弾劾の余波が残るなか、積弊清算に対する国民の期待は大きく、特に20・30代もこれに呼応した。若者たちは、圧倒的な支持を背にしたムン・ジェインが韓国社会の腐敗を根絶してくれることを望んでいた。

ムン・ジェイン大統領は就任直後、息つく間もなく改革課題を次々と推進した。公的機関の非正規職の正規職化、地方公立医大の設立、ブラインド採用などの政策が進められた。所得主導成長もその一環だった。

これらの政策に議論がなかったわけではない。しかし、その対立は、生活に関わる問題についての進歩と保守の対立であったという意味で、健全な論争だったと考える。

だが残念ながら、「健全な論争」は長続きしなかった。2019年の夏、チョ・グク事件が発生してからだ。検察との対立を深めたムン・ジェイン政権と「共に民主党」は、あらゆる政治的資源を検察改革に集中させた。

ムン・ジェイン前大統領
(写真提供=OSEN)ムン・ジェイン前大統領

2020年にはパンデミックの中、チュ・ミエ法務部長官とユン・ソンニョル(尹錫悦)検察総長の間で長い闘争が繰り広げられた。翌年、ムン・ジェイン政権の検察総長が「国民の力」の大統領候補として出馬した。彼に敗れた「共に民主党」は、政権交代を前に検察の捜査権を完全に奪うことに「オールイン」し、その結果、続く地方選挙での惨敗を迎えた。

ユン大統領、“夫人リスク”から一歩も進めず

ムン・ジェイン前大統領の在任期間は、世界的な大転換が行われていた時期だった。資産価値が急上昇し、貧富の差が拡大、ビッグテック企業が成長するなかで既存産業の構造が大きく揺れた。

20年以上一つだった世界は、アメリカと中国・ロシアを軸に再び二分された。社会の至るところで悲鳴が上がっていた。この重要な時期にムン・ジェイン政権は、多くの人々が一生関わることのない検察の改革に没頭し、この貴重な時間を浪費した。

その被害は様々な分野で現れている。2016年に1.17だった合計出生率は、2022年には0.78へと急落した。資産格差はさらに広がり、2017年には第1分位(最下位20%)と第5分位(最上位20%)の純資産格差は99.7倍だったが、2022年には140.1倍に拡大した。

地域間の不均衡も深刻化した。首都圏と非首都圏間の地域内総生産(GRDP)格差が拡大し、2017年には全人口の49.6%だった首都圏人口は、2022年には50.5%に達し、ついに全体の半分を超えた。

ムン・ジェイン前大統領
(写真提供=OSEN)ムン・ジェイン前大統領

他の政権であれば、野党の反対や既得権層の抵抗が原因だと弁明できたかもしれない。しかしムン・ジェイン政権は任期当初から野党が分裂している状況で、自らの決定だけで政策を推進した。年金改革などには手も付けなかった。

その高い支持率と多くの議席(地方議会も含む)をもって達成した成果は、惨憺たるものだった。検察改革のような政争に多くの資源を注ぎすぎた代償だ。若者や地方(特に全羅道)など、社会的に脆弱な支持基盤が崩壊するのは必然だった。

韓国社会のゴールデンタイムは、すでにムン・ジェイン政権時に過ぎ去ったと思う。政治が失った糸を、民間の成果でどうにかつないでいるだけだ。ゴールデンタイムを逃すと、その失敗を取り戻すために絶え間ない努力が必要となる。

しかし今の政界の2人のリーダー、ユン・ソンニョル大統領と「共に民主党」イ・ジェミョン(李在明)代表には、その姿勢は見られない。彼らは任期開始当初から政争の泥沼にはまり込んでいる。ユン大統領はキム・ゴンヒ夫人をめぐる数々の疑惑から一歩も前進できず、イ・ジェミョン代表も自らの司法リスクを守るために、すべての政治的資源を費やしている。

ユン・ソンニョル大統領、左はキム・ゴンヒ夫人
(写真提供=OSEN)ユン・ソンニョル大統領、左はキム・ゴンヒ夫人

イ・ジェミョン、「金融投資所得税」も解決できず

「共に民主党」も状況は変わらない。2020年の最高裁無罪判決(公職選挙法違反)で解消されたと思われていたイ・ジェミョン代表の司法リスクが、途切れることなく続いている。

城南(ソンナム)市長、京畿道知事時代のイ・ジェミョンは、進取的な行政家であった。

イ・ジェミョンは青年配当、無償制服、公的配達アプリなど、実験的な政策を武器に地方から中央へと進出。当時、女優との不倫疑惑や兄嫁への暴言問題などがあったものの、これらは大きな打撃にはならなかった。これらは法的な問題ではなく、彼の支持層は道徳性ではなく、彼の政策や成果を見て支持していたためだ。

イ・ジェミョン代表
(写真提供=OSEN)イ・ジェミョン代表

しかし2021年に「共に民主党」内から大庄洞(テジャンドン)開発疑惑が浮上し、その疑惑が次々と広がり、イ・ジェミョンの巨大な司法リスクへと発展した。被選挙権を失うことは、政治生命にとって致命的だ。

まるで一人の法務部長官を守るためにすべての政治的資源を注ぎ込んだムン・ジェイン政権のように、「共に民主党」は170議席を持ちながらも、そのほとんどをイ・ジェミョン代表を守るために消費している。「食の問題」に力を注ぐと言っているものの、実際には「金融投資所得税」一つすら解決できないでいる。

繰り返される聴聞会や特別検事法の強行採決は、政争機能だけが奇形的に肥大した「共に民主党」の現実を示している。

両政党が望む通りに互いを拘束し、検察を解体したとして、国民に何が残るのだろうか。支持層には一時的な感情の満足感や「正義を実現した」という満足感を与えるかもしれない。しかし代替案のない批判の効果はそこまでだ。

怒りに突き動かされる民主主義は、政権交代をもたらすだけで、生活の変革を促すことはできない。ユン・ソンニョル政権はそれを象徴的に示している。

両政党が政争の泥沼にはまっている間、韓国社会のあちこちでは警報が鳴り響いている。出生率は0.7台に落ち込んだまま回復の兆しも見えない。このままいけば韓国は、今年末には65歳以上の人口が全体の20%を超え、超高齢社会に突入する見通しである。

生産年齢人口の減少や高齢者介護の危機といった、目の前に迫る「確実な危機」について、政治家たちは誰も語ろうとしない。

青年層に人気のある経済・教養系のYouTubeチャンネルでは、いつの間にか人口減少や少子化、地域消滅といった問題が頻繁に取り上げられるようになっている。登録者数340万人を誇る「Syukaワールド」がその代表例だ。ユーチューバーも普通の若者たちも、国の未来を憂慮している時代である。

ところが、実際に国を率いるべき人々は政争に没頭し、この現実に目を向けていない。これこそが、今日の韓国の悲劇なのである。

(記事提供=時事ジャーナル)

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