韓国の与党「国民の力」のツートップであるクォン・ヨンセ非常対策委員長とクォン・ソンドン院内代表、さらにナ・ギョンウォン議員が尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領と接見した後、大統領の獄中メッセージをメディアに伝える「代弁者」の役割を買って出た。
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今後も「国民の力」の議員たちによる尹大統領への接見が予定されており、戒厳令を正当化する尹大統領の主張を代弁する姿勢はしばらく続くとみられる。
早期大統領選挙が現実味を帯びるなか、「党と尹大統領の一体化」が強まっていることに対し、党内からも懸念と批判の声が上がっている。
クォン委員長、クォン院内代表、ナ議員は2月3日、京畿道・義王(ウィワン)市のソウル拘置所を訪れ、約30分間、内乱罪の容疑で起訴された尹大統領と面会した。
クォン委員長とクォン院内代表は「人間的な道義を果たすための個人日程」と説明したが、党指導部内からは「無責任だ」という指摘が続いた。
接見後、彼らを通じて尹大統領のメッセージが詳細に公開された。
ナ議員は記者団に対し、尹大統領が「今回の戒厳令を通じて、国民がいかに共に民主党が国政を麻痺させたかを知ることができたのは幸いだ」と語ったと伝えた。クォン委員長は「尹大統領は、党が分裂せず、20~30代の若者や保守派の多様な人々が一体となって団結するようにと話した」と述べた。
さらに尹大統領は「過去、ナチスも選挙で政権を握ったが、共に民主党の独裁が同じ形にならないか心配だ」と語ったとされる。これは、院内第一党を「ナチス」に例え、彼らを阻止するために非常戒厳令を宣言したという尹大統領の論理が、与党指導部や重鎮議員を通じてそのまま伝えられた形だ。
一般面会が許可されたことにより、「国民の力」では親尹派の議員たちを中心に尹大統領への接見が相次ぐ見通しだ。
先立って、尹大統領の逮捕を阻止するためにソウル・漢南洞(ハンナムドン)の大統領官邸前に集まった約40人の議員が中心になるとみられる。これまで尹大統領のメッセージは主に弁護団を通じて伝えられてきたが、接見が許可されたことで、尹大統領は自身のメッセージを伝える窓口として「国民の力」議員などを積極的に活用するものと予想される。
党内外からは、強硬な支持層の結集と世論戦のために尹大統領が展開する「獄中政治」に、党が率先して代弁者役を務めているとの批判が噴出している。
特に、党論として独自の戒厳特検法まで発議した「国民の力」が、戒厳令の正当性を強調する尹大統領の主張を代弁する姿勢は矛盾しているという指摘もある。このままでは、党が戒厳令に同調しているという印象を中道層に与え、早期大統領選挙に悪影響を及ぼす恐れがあるという懸念だ。
「国民の力」のキム・サンウク議員は2月4日、CBSラジオの『キム・ヒョンジョンのニュースショー』で、「党を率いるツートップが王に謁見するような感じがした」と率直な心境を吐露した。
さらに「『尹大統領がこう言った』と降りてきた話がまるで指針のようになっている。党のリーダーがそのように動けば、党全体の雰囲気もそうならざるを得ない」と述べ、「(大統領は)憲法を違反し、民主主義と保守の価値を裏切ったのだから、最初に決別すべきだったし、当然決別しなければならない」と強調した。
また、元議員のユ・スンミン氏も前日、MBCラジオの『キム・ジョンベの視線集中』に出演し、「党指導部が大統領に『民意はこうだ』『ユーチューバーの言葉だけを聞くな』という話をしに面会に行くのならわかるが、会って大統領の話だけをひたすら聞くのは、尹大統領が望んでいることだ」と批判した。
そして「弾劾に党論として反対し、内乱ではないと強弁し、非常戒厳令が違憲・違法ではないと主張する党で大統領選挙を戦わなければならないのに、どうやって中道層の心をつかめるのか」と述べた。
与党が尹大統領と距離を置けず、むしろ関係を深めている背景には、強固な支持層の結集によって党の支持率が上昇している現象が無関係ではないと見られている。
しかし、尹大統領の弾劾審判の決定が近づき、早期大統領選挙が現実味を帯びるにつれて、与党は「固い支持層(保守支持層)」と「浮動層(中道・無党派層)」の間で葛藤することになるとの見方も出ている。
特に「国民の力」の大統領選挙での競争相手である、最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表は、連日「実用主義」や「成長」を強調し、右派寄りの姿勢を示している。
さらに「改革新党」のイ・ジュンソク議員も「世代交代」や「政治刷新」を掲げて出馬の意思を表明しており、本格的な支持層拡大に乗り出した形だ。
これに対して「国民の力」は、尹大統領との接点をさらに増やし、司法に対する圧力を強めるなど、むしろ支持基盤の幅を狭めているという指摘を受けている。党と有力な大統領候補たちは、尹大統領と強硬な支持層を意識するあまり、早期大統領選挙についてまともに言及すらできない状況だ。
各種世論調査で与党側の大統領候補として1位に挙げられているキム・ムンス雇用労働部長官は2月4日、国会で記者団から大統領選への出馬意思を問われ、「現在のところ、早期大統領選挙が行われるかどうかを断定することはできない」と述べた。
続けて「(出馬の意思を明らかにすることは)大統領に対しても、国民に対しても礼を欠くことであり、自分自身の良心にも反する」と答えた。
(記事提供=時事ジャーナル)
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