「謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」とした“安倍談話”から10年…“石破談話”はあるか、韓国も注目

2025年03月03日 国際 #時事ジャーナル
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第2次世界大戦の敗戦80周年を迎え、日本政府が「80周年談話」を発表すべきか、また発表するならばどのような内容にすべきかをめぐり、日本国内で意見が分かれている。

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日本政府は1995年の「村山談話」(50周年談話)で、侵略戦争に対する「痛切な反省」と「心からのお詫び」を表明したことを皮切りに、10年ごとに過去の歴史に関する反省と謝罪を含む首相談話を発表してきた。

2005年の「小泉談話」(60周年談話)と2015年の「安倍談話」(70周年談話)は、いずれも戦後日本の歴代内閣の歴史認識を継承すると表明しているが、謝罪や反省の具体的な表現には違いが見られる。

特に「安倍談話」は、「痛切な反省」と「心からのお詫び」を表明してきた歴代内閣の立場を継承するとしながらも、「あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」という内容を含んでいる。

そのため村山富市元首相から「村山談話を継承した印象はない」と酷評されたこともあった。

石破首相「内容と時期を慎重に検討」

尹錫悦大統領(左)と石破茂首相
(写真=韓国大統領室)尹錫悦大統領(左)と石破茂首相

80周年談話の発表をめぐる議論は、1月21日に『毎日新聞』が報じた石破首相のインタビューが発端となった。

石破首相は戦後80周年談話について「新たな談話を発表すべきかどうか、発表するならばどのような内容にすべきか、そしていつが適切なのかを検討したい」と述べた。この発言を受け、翌22日に首相官邸で開かれた定例記者会見では、記者から日本政府の方針について質問が相次ぎ、首相談話の発表の是非が世論の注目を集めることとなった。

これに対し、林官房長官は「現時点では新たな談話を発表するかどうか決まっていない」と慎重な姿勢を示した。一方、連立与党・公明党の斉藤鉄夫代表は「戦後80年という節目に談話を出すべきだ」「平和国家を志向する日本として談話を発表する意義がある」と述べ、首相談話の必要性を強調した。

その後、石破首相は1月29日、日本国際問題研究所主催のシンポジウム「東京グローバル・ダイアログ」に出席し、「今年は敗戦後80年だ。あえて『敗戦後』と言うのは、『終戦』という言葉では歴史の本質を間違える」と発言し、過去の歴史の検証が必要であるとの考えを示した。

これを受け、自民党内では80周年談話の発表に反対する声が本格的に浮上し始めた。

代表的な例として、小林鷹之前経済安全保障担当相は1月30日、「(首相談話を)出す必要はまったくない。そのために70周年談話がある」と述べ、戦後70周年の安倍談話が反省と謝罪を含む最後の首相談話であるべきだとの考えを示した。

安倍談話をもって過去の歴史に関する謝罪と反省の問題には「終止符を打った」ため、これ以上謝罪を盛り込んだ談話を発表する必要はないという主張だ。

2月に入っても、80周年談話の発表をめぐり、自民党内での意見対立は続いた。安倍内閣で防衛相を務めた稲田朋美氏は、2月18日に開かれた衆議院予算委員会で「戦後70周年談話で謝罪を終え、100年後の日本の将来像を示した以上、(新たな談話を発表し)安倍談話の内容を修正すべきではない。どっちつかずの談話を出すことは危険ですらある」と述べ、80周年談話の発表に反対した。

稲田氏は、自民党の代表的な保守派政治家である高市早苗氏とともに、「安倍ガールズ」(安倍晋三元首相と近しい関係を持つ右翼系女性政治家の呼称)と呼ばれる人物の一人だ。

特に稲田氏は「戦争とは無関係な世代に、謝罪を続ける宿命を背負わせるべきではない」と主張し、「戦後レジーム(体制)からの脱却」を掲げた安倍談話の核心部分を修正すべきではないと訴えた。

これに対し、林官房長官は「石破内閣は、歴代首相談話をはじめ、歴史認識に関する歴代内閣の立場を総合的に継承している」としながらも、「現時点では新たな談話を発表するかどうかは決まっていない」と改めて慎重な立場を示した。

談話を執筆する「ブレーン」不足の指摘も

石破茂首相
(写真=つのだよしお/アフロ)石破茂首相

80周年談話の発表をめぐる自民党内の対立について、旧安倍派に所属する中堅政治家は、石破首相が自身の政敵であった安倍元首相の遺産を否定するために「石破談話」の発表を準備していると説明した。

そして、旧安倍派を中心とする自民党内の保守系議員らが「石破談話の発表は不要だ」として強く反対している状況だと指摘した。

また、石破首相が早ければ5月中にも訪中を計画していることについても、党内から懸念の声が上がっている。もし石破首相が中国を訪問すれば、「安倍談話の修正」を求められることになるとの見方があり、党内では石破首相の訪中自体に反対する意見も出ている。

特に、ハト派として知られる石破首相が「自ら談話の内容を作成しようとしているのではないか」という懸念が高まっている。

このように自民党内の対立が続くなか、一部では「そもそも8月に予定されている首相談話の発表時点で、石破首相が依然として首相の座にとどまっているかも不確かだ」との声も上がっている。さらに「石破首相が『日本を戦後の状態に引き戻した首相』と呼ばれる悪夢は、絶対に避けなければならない」との意見も出ている。

『産経新聞』の論説委員である阿比留瑠比氏は、安倍元首相が2015年8月14日の戦後70周年談話を発表する直前に、首相官邸の執務室で「戦後の謝罪外交に終止符を打ちたい」という考えを明かしていたと指摘した。

そして、安倍談話発表後に行われた世論調査では、談話の内容に対する肯定的な評価が相次いだことを挙げ、「新たな談話の発表によって安倍談話の立場を後退させるべきではない」と主張した。

一方で、安倍談話は安倍首相(当時)と外務省関係者、そして学者や経済界の要人、ジャーナリストらで構成された談話作成の諮問機関が、半年間にわたる会議を経て慎重に作成したものだ。

それに対し、石破内閣には「石破談話の草案をまとめられるだけのブレーンが不足している」との指摘も出ている。

(記事提供=時事ジャーナル)

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