「たまたまコメントで見かけた提案に意義があると判断し、実行に移した。今後も斬新で有益な意見は積極的に検討し、反映していくつもりだ」(李在明=イ・ジェミョン大統領)
【注目】G7に出席する李在明大統領、「最初の15秒」に成否が?
「出勤すらしなかった大統領(尹錫悦=ユン・ソンニョル)を見ていたのが、今は退勤しない大統領(李在明)を見る時代になったようだ」(モ・ギョンジョン「共に民主党」議員)
「李在明記念の腕時計はないのかと大統領に聞いたところ、そんなものが何の役に立つのかとおっしゃっていた」(チョン・ヒョンヒ「共に民主党」最高委員)
李在明大統領が国民向けのメッセージや側近によるメディアインタビューを活用し、尹錫悦前大統領との差別化を本格化させる姿勢を見せている。
具体的には、①国民とコミュニケーションを取り、②仕事をし、③質素な政府というイメージを国民に印象づけ、政権初期の国政推進力を確保しようという戦略と読み取れる。
同時に、尹錫悦前大統領の否定的なイメージを呼び起こし、「3大特検(内乱、キム・ゴンヒ、チェ上等兵)」および「内乱鎮圧」の大義名分をさらに固める効果も狙っていると予想される。
李在明大統領は、6月4日の就任直後からほぼ毎日、フェイスブックやインスタグラムなどのSNSを通じて「国民向けメッセージ」を発信し、国民との「直接コミュニケーション」に積極的に乗り出している。
6月9日には、韓国の創作ミュージカル『もしかしたらハッピーエンディング』(原題)がトニー賞の最優秀ミュージカル作品賞を受賞したことについてフェイスブックで祝辞を投稿し、同日にはインスタグラムで「国民向け国政業務報告メッセージ」も掲載した。
国民とのコミュニケーション環境にも変化が見られている。特に大統領室はブリーフィングルームの運営方式に関し、史上初めてカメラ4台を新たに設置し、質問する記者まで中継する方式に変更すると明言した。国民の知る権利と、ブリーフィングの透明性向上のためだ。
これに関連して李在明大統領は6月8日、X(旧ツイッター)を通じて「コメントで見かけた提案に意義あると判断し、実行に移した」と直接説明した。また、閣僚級の人事に関しても、国民の推薦を受けて反映させるという破格の方針も同日明らかにした。
こうした姿勢は、尹錫悦前大統領の「不通」のイメージとの対比効果を狙っているものと見られる。尹前大統領が就任初期の2カ月間ほど実施した「ドアステッピング(通勤中に記者たちの簡単な質問に答えること)」のような現場リスクを避けつつ、異なる方法で国民との対話を強化する姿勢と解釈できる。
また、コメントなどを通じて寄せられる国民のフィードバックを積極的に取り入れることで、今回の政権の呼称である「国民主権政府」の理念を実践する意志を示すものでもあるだろう。
李在明大統領は大統領室内の規律を正すことで、「働く雰囲気」の醸成にも力を入れている。
6月5日の初の国務会議では、主要争点ごとに対案まで提示しながら意欲的に会議を主導し、当初予定されていた時間を大幅に超過したと伝えられている。会議に出席した大統領と閣僚らは皆、昼食をキンパ1本で済ませ、会議に集中する様子を見せた。
李在明大統領は最近、午前6時から夜10時まで残業することもいとわない日々を過ごしているという。一部のコミュニティでは、李大統領のそばで過密なスケジュールをこなし、疲れた様子のカン・フンシク大統領秘書室長の写真が出回った。
このような「ワーカホリック」気質は、城南(ソンナム)市長や京畿道知事を務めた時代から続いていると、側近たちは証言している。李在明大統領は大統領候補時代から「公職者の仕事には終わりがない。中央官僚も覚悟してほしい」と述べていた。
尹錫悦前大統領の「怠惰」なイメージとは対照的な場面だ。各種報道によると、尹前大統領は就任後も酒を楽しんで翌日遅刻することが多く、国務会議の所要時間も平均で40分程度だったという。
これに関連し、李在明大統領の京畿道知事時代に秘書官として仕えていたモ・ギョンジョン議員は6月5日、CBSラジオ『パク・ジェホンの一勝負』に出演し、「出勤すらしなかった大統領を見ていたが、今は退勤しない大統領を見る時代になったようだ」と表現した。
李在明大統領は勤務態度だけでなく成果も強調し、「働く政府」のイメージをアピールしている。
彼は6月10日、「国民向け国政業務報告メッセージ」を通じて、非常経済点検タスクフォース(TF)会議の内容や、日本の石破茂首相とのやり取りの結果などを共有し、「国民の皆さんが『李在明を選んで良かった』という効果と誇りを感じられるよう、すべての力を注ぐ。国内外の山積した懸案を、一つひとつ責任をもって処理していく」と強調した。
「税金を大切にする政府」のイメージも、李在明大統領が掲げる政府の核心的理念の一つだ。
特に最近、李在明大統領が国務会議など各種会議で着用している「腕時計」が注目され、彼の質素なイメージがさらに強調される雰囲気となっている。李在明大統領が着用している製品は、韓国国内ブランドのもので、定価は5万9900ウォン(約5990円)だが、オンライン市場では3万9900ウォン(約3990円)程度で販売されている中価格帯の商品だという。
また、李在明大統領は通常、招待行事の返礼品として用意される「大統領記念腕時計」についても、特別に準備する計画はないと一蹴した。彼は6月7日、与党の前・現職指導部との夕食会の場で、大統領時計について「そんなものが何の役に立つのか」と笑って済ませたという。
これに関連してチョン・ヒョンヒ「共に民主党」最高委員は、6月9日放送の『キム・オジュンのニュース工場』に出演し、「予算をむやみに使おうとはしないという趣旨の言葉だった」と解釈し、李在明大統領の「実用」「質素」なイメージをさらに際立たせた。
一方で、尹錫悦政権の「血税浪費」のイメージを浮き彫りにする動きでもある。特に「共に民主党」は当時の晩餐会で、青いタイルと大理石で仕上げられた小型プールの写真を掲載し、「ペット用プールではないか」という疑惑を提起した。
チョン・ヒョンヒ最高委員は「人の膝くらいの深さなので人間が使うものではなく、犬用プールと断定できる」とし、「私的な目的で使われ、公的な目的がないのであれば、国家財政の損失であり、国庫横領の罪に該当する可能性がある」と非難した。
李在明大統領のこうした歩みは、「イメージメイキング」戦略の一環という分析が出ている。与党と大統領が一体となったポジティブなイメージを定着させて世論を取り込み、それを原動力として国政課題を一気に推し進める狙いがあるという。
特に今回の政権は、非常戒厳と弾劾政局という混乱した状況を一刻も早く収束し、山積した国政課題を解決すべき立場にある。
なによりも李在明大統領に対する「司法リスク」が依然として残っているだけに、尹錫悦前大統領とのイメージの対比を通じて、否定的なイシューに対する関心を和らげる効果も期待できる。
また、与党が一丸となって強行している「刑事訴訟法改正」などの司法改革はもちろん、「3大特検」推進の大義名分も同時に固めることができる。すでに「共に民主党」は、3大特検法を可決したことに続き、刑訴法の改正も次の本会議で巨大議席をもって押し切る方針を公式化している。
野党に転落した保守系の「国民の力」は、「共に民主党」の戦略的な動きをただ見守るしかないのが現状だ。
「国民の力」の戦略担当者は『時事ジャーナル』の取材に対し、「与党と政府が絶対的な権力を持ち、戦略的に世論まで味方につける状況では、少数政党である我々が切れるカードはほとんどない」とし、「むしろ、我が党は内紛の収拾が急務であり、彼らの策略に対応する余裕もないようだ」と語った。
(記事提供=時事ジャーナル)
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