東京ドームで完成した「大逆転ドラマ」 “悪者扱い”も“恥呼ばわり”も乗り越えたLE SSERAFIM《韓国経済誌の視点》

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ガールズグループLE SSERAFIM(ルセラフィム)が、11月18日と19日の2日間にかけて日本・東京ドームで「2025 LE SSERAFIM TOUR 'EASY CRAZY HOT'」のアンコール公演を行った。

【写真】LE SSERAFIMの“見せパン”衣装

平日開催にもかかわらず2日間で約8万人が詰めかけ、日本の主要5大スポーツ紙がLE SSERAFIMを前面に打ち出した特別版を発行するほどの大成功を収めた。会場には巨大な歓声が鳴り響いた。

東京ドーム単独公演は、日本においてトップクラスのスターであることの象徴だ。K-POPアイドルにとっても、東京ドームは「夢の舞台」とされてきた。

近年では、アメリカのスタジアムで公演を行うことがグローバル最上位アイドルを分ける新たな基準として加わったが、それでもなお、東京ドーム公演が持つ象徴性は依然として有効だ。LE SSERAFIMがこの舞台を成功させたことで、「“一級の韓流スター”として確固たる地位をついに築いた」という評価が出ている。

この公演がとりわけ特別な意味を持つのは、LE SSERAFIMがこの2年間、激しい世論の逆風を乗り越えてきたからだ。

LE SSERAFIM
LE SSERAFIM(写真提供=SOURCE MUSIC)

発端は、2024年にアメリカで開催された「コーチェラ・フェスティバル」での公演だった。当時、一部でサウンド面の問題やライブの不安定さが見られたものの、全体としては無難なステージで、現地の反応も良好だった。

しかし、韓国国内のオンラインコミュニティで、ライブが一時的に不安定だった場面だけを切り取った映像が拡散され、「大失敗」という評価が広がっていった。

その後、HYBE傘下レーベルのADOR元代表取締役であるミン・ヒジン氏とNewJeansをめぐる騒動が起き、世論は手の付けられないほど悪化した。ミン・ヒジン氏が「もともとNewJeansがHYBEの第1号ガールズグループだったが、LE SSERAFIMに押し出された」と主張したためだ。

HYBE内部で「ニュ(NewJeans)を捨てて新しい体制を組む」という発言があったとされ、これもNewJeansが冷遇された証拠だとして、「“悪女役”のLE SSERAFIM対“悲劇のヒロイン役”のNewJeans」というフレームが形成された。

当時はミン・ヒジン氏とNewJeansが圧倒的な支持を受けていたため、反対側に立たされたLE SSERAFIMやILLITはほぼ“社会の敵”のように扱われた。凄まじい非難が浴びせられ、LE SSERAFIMのイメージは急落した。

こうした状況の中で再び頂点へと返り咲いたからこそ、今回の東京ドーム公演は格別の意味を持つ。

反転の始まりは今年4月の仁川(インチョン)公演だった。このステージで安定したライブを披露し、実力を証明したLE SSERAFIMは、その後の米国ツアーでも現地の熱い反応が相次いで伝えられた。

9月11日には、K-POPガールズグループとして初めて米NBCの代表的バラエティ番組『アメリカズ・ゴット・タレント』で特別ステージを披露。冷笑的で知られる審査員たちまで拍手を送るほど、観客の反応も良かった。

こうしたポジティブな流れが続き、LE SSERAFIMを見る目は徐々に変わり、東京ドーム公演によってついに劇的な大逆転の物語が完成した。

LE SSERAFIM
左からチェウォン、サクラ、カズハ、ユンジン、ウンチェ(写真提供=SOURCE MUSIC)

LE SSERAFIMをめぐる論争の出発点は「歌唱力」の問題だった。アイドル初期には歌唱力論争が重要なイシューだったが、いつしかパフォーマンス重視のグループが増え、一時は下火になっていた。

最近になって再び論争が大きくなった背景には、K-POPのアメリカ進出がある。アメリカの公演会場では、補正をかけずに現場の音をそのまま流すケースが多い。つまり、実力がそのまま露呈するわけだ。

ここで弱点が露わになると、「国の恥」という論理と結び付けられることがある。韓国人は海外からの視線に非常に敏感で、称賛を受ければ「国威発揚」に酔う一方、ミスが出れば国の恥だとして強い怒りや羞恥を覚える。

海外ライブで成功し、国威を高めた歌手は国民的英雄のように扱われるが、ライブで弱点を見せれば、国を辱めたとして猛攻撃を受ける。この流れの中で、ライブ実力の重要性が改めて高まった。

LE SSERAFIMのコーチェラ公演は現地の雰囲気とは異なり、韓国国内の世論では失敗と規定され攻撃の対象となった。一方で、NewJeansのロラパルーザ公演は現地での大合唱映像が拡散し、好意的に消費された。こうした視線の差も、2組に対する評価が分かれた理由の一つだ。

しかしその後、LE SSERAFIMは米国ツアー、米国のテレビ番組、東京ドーム公演などで相次いで安定したステージを見せ、世論の反転に成功した。

世論と事実の乖離…法廷判断で正される

今回の一連の出来事を通じて、「短い映像」の問題点も浮き彫りになった。

いわゆる「ショート動画」と呼ばれる短尺映像は野火のように広がり、世論を主導する。前後の文脈や事件の背景が取り除かれ、特定の場面だけが強調されるため、歪曲される可能性が高い。誰かに対する世論が悪化すると、再生数を狙った否定的な編集映像が急速に拡散することが多い。

LE SSERAFIMも、こうした短尺映像の被害者だった。最近に至るまで悪意あるショート動画が作られ続けているだけに、警戒が必要だ。

「悪者vs被害者」論についてはこれまで何度も反論が提起されてきたが、最近のNewJeans関連の裁判でも、一部の事実関係が確認された。「ニュを捨てて新しい体制を組む」という表現は、当時のLE SSERAFIMの広報戦略の文脈で出てきた言葉であり、NewJeansとは無関係だという点を裁判所が判断した。当該の文書を当時ミン・ヒジン氏本人が直接受け取っていながら、問題提起をしなかった事実も、判決文に言及されている。

また裁判所は、HYBEが210億ウォン(日本円=約22億円)を投資したNewJeansを戦略的に切り捨てるという主張は、合理的に見て成り立ちにくいと判断。実際、NewJeansが専属契約の解除を宣言した際も、HYBEは即座に違約金請求訴訟を起こすのではなく、契約有効確認訴訟を選択するという慎重な対応を見せた。この過程だけでも、HYBEが自社の資産であるNewJeansを簡単に放棄できないことは推察できる。

一方、HYBEガールズグループ「1号」をめぐる論争についても、LE SSERAFIMの所属事務所SOURCE MUSICとミン・ヒジン氏の裁判において、NewJeansのデビューがLE SSERAFIM以降に延期された背景について別の解釈が示された。

ミン・ヒジン氏がNewJeansを別レーベルとして分離し、ミン・ヒジン氏体制に編入する過程で生じた問題だという見方だ。この点は、今後の裁判を通じてより明確になる見通しだ。こうした事実関係を踏まえれば、数百億ウォンを投じて苦労の末に育て上げたグループを、LE SSERAFIMを押し上げるために犠牲にするという主張は理にかなわない。にもかかわらず、当時の世論はそうした推測に依拠してLE SSERAFIMを集中的に攻撃し、結果的に論争が過熱した。

悪化したイメージを改善するのは容易ではない。それでもLE SSERAFIMは、最終的に音楽と公演によって評価を取り戻した。今回の東京ドーム公演でも、長時間のステージを安定した歌唱力とパフォーマンスで埋め尽くし、実力を証明した。

歌手の本質はやはり歌と公演であることがわかる。公演でまだ披露し切れていない良い楽曲が残っている点を考えても、彼女たちが積み上げてきた音楽的基盤がいかに堅固かを改めて確認させられる。

アメリカの音楽専門メディア『Consequence』が選んだ「2025年最高の楽曲200選」において、韓国アーティストの楽曲として唯一ランクインしたのが、90位に選ばれたLE SSERAFIMの『Come Over』だった。

今後もこのような良曲が続けば、LE SSERAFIMのアメリカでの超大型公演も決して夢物語ではないだろう。

(記事提供=時事ジャーナル)

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