漫画『ピアノの森』の実写版? 主人公・一ノ瀬海とショパコン優勝のチョ・ソンジンとの共通点

2016年03月02日 話題
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2015年10月に行われた第17回ショパン国際ピアノ・コンクールで優勝を果たした、韓国出身のチョ・ソンジン。

韓国では彼のことを、「まるで日本の漫画『ピアノの森』の主人公・一ノ瀬海の実写版だ」と騒ぎ立てている。

『ピアノの森』は、天才ピアニスト少年・一ノ瀬海が世界的に最も権威あるショパン・コンクールに挑戦し最年少優勝を飾るストーリーで、韓国でもファンが多い作品だ。

はたしてチョ・ソンジンは、本当に「一ノ瀬海」の実写版といえるのだろうか?

韓国人が騒ぐ理由とは?

まず、幼年期の2人を比べるのは無理があるだろう。

一之瀬の幼年期は漫画らしくドラマチック。小学生の頃に風俗店の雑用をするなど不運な幼少年期を送ったが、チョ・ソンジンはサラリーマンの父と専業主婦の母を持つ、至極一般的な家庭で育った。

決して裕福だったわけではないが、かつてフィギュアスケート女王のキム・ヨナがそうだったように、早くからその才能に注目した企業の後援によって、高いレベルの音楽教育を受けることができたという。

ただし、2人には共通点もある。

ショパン・コンクール決戦でピアノ協奏曲第1番ホ短調Op.11を演奏したことだ。

もっとも漫画にも説明があるように、第1番と第2番の中でより難しい第1番を選ぶ出場者が圧倒的に多いことを考えると、やはり偶然とは言い難い。

映画『ピアノの森』

作中、ついに最年少で審査員満場一致での優勝という奇跡を起こす一ノ瀬だが、これはむしろ第14回目の優勝者である中国のピアニスト、ユンディ・リをモデルにしている感じが強い。

2009年の第7回浜松国際ピアノ・コンクールで15歳の最年少優勝という記録を持っているチョ・ソンジンは、今回のショパコンでは“最年少”ではなく、“韓国人初優勝”という極めてドメスティックな肩書きしか手にしていないのだ。

それでも興味深いチョ・ソンジンの物語

それでも興味深いのは、一之瀬とチョ・ソンジンの優勝ストーリーには、邪魔をする悪役キャラがしっかり存在していたことである。

公開された出場者の採点表によると、ほぼ完璧と評された最終決戦でのチョ・ソンジンの協奏曲第1番に対し、2人の審査員が最高点の10点、12人の審査員が9点を出した。が、フランス出身の審査員フィリップ・アントルモンは最低点の1点しか与えなかった。

しかも、アントルモンは決選前の第2次・第3次本選でも、チョ・ソンジンの次のラウンド進出を邪魔するかのように、審査員の中で唯一「no」を付けている。まさに韓国のクラシック・ファンからすれば、アントルモンは見事な悪役であった。

韓国のクラシック・ファンをさらに興奮させたエピソードもある。

韓国人ヴァイオリニストのチョン・キョンファの話によると、一番目の奏者であったチョ・ソンジンの演奏が終わった直後、彼女の携帯に世界的ピアニストのクリスティアン・ツィマーマンからこんなメッセージが届いたらしい。

「チョ・ソンジンが金メダルだ!」と。

11月23日に日本で行われた単独リサイタルの楽屋には、クリスティアン・ツィマーマンが珍しく姿を現したという噂も流れ、その信者たちが増える一方だというチョ・ソンジン。

韓国でのクラシック・ブームには、『キス』(白泉社)、『のだめカンタービレ』(講談社)などの日本の漫画が大きく影響している。

そんななか、今回のチョ・ソンジンの優勝は、「日本人が描いた漫画をついに韓国人が現実化した」といわれるほど盛り上がる大事件。特に、ショパコンでまだ日本人優勝者がいないことも、韓国にとっては大きな意味を持つのだろう。

いずれにせよ、2014年に引退してしまったキム・ヨナに代って世界を沸かせる“国際スター”の誕生に、韓国が沸いていることはたしかである。

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