韓国の人々は現在のJリーグについてどんな印象を持っているのだろうか。スポーツ紙『イルガン・スポーツ』のパク・リン記者はかつて語っていた。
「正直言って、Jリーグに寄せる関心はここ数年で急激に落ちている。韓国人選手の活躍がテレビニュースや一般紙で取り上げられることはなく、スポーツ新聞やネットニュースが短信で紹介する程度。韓国ファンの関心は代表や欧州組にあるので、必然的にJへの関心は低くなった。日本関連で言えば、最近はJよりも本田や香川といった日本の欧州組の記事のほうが反響があるほどです」
ファンもかつてほどJを強烈に意識してはいない。昨季Kリーグ王者・全北現代サポーターのイ・ヘチョルも言っていた。
「以前はACLとなれば最右翼のライバルとしていやがおうにもJを意識した。Jの実力はもちろん、2007年の浦和レッズ・サポーターの印象が強烈だったから。でも、最近は中東勢や、中国スーパーリーグのほうに脅威に感じている。なぜかって? 勝負所ではJクラブには負けないから」
ならば実際に戦う現場サイドはどうか。城南一和の監督として2010年ACLで川崎F、G大阪、2012年ACLでは名古屋と対戦したシン・テヨン監督(現U‐23韓国代表監督)は言っていた。
「誤解を恐れずに言えば、近年のJリーグの実力レベルは発展成長しているというよりも、やや停滞しているような印象を受ける。現役時代にもJクラブと何度も対戦した私から見ると、むしろ退歩しているような印象さえあるほどだ。昔はもっとシステマチックでスキのないサッカーをする印象だった。日本サッカー本来の特長であった繊細で統率感のある戦術的な強みが、薄れてしまったような感じがする。ただ、だからといってJリーグは恐れるに足らずとは思わない。競技力はやや停滞しているが、Jリーグの外国人選手の質はとても高く、次々と若い才能が頭角を現す。クラブ運営やスタジアムの雰囲気、環境面なども素晴らしい。リーグとしての総合力なら、Jはアジア・トップだろう」
実力はともかく、リーグや各クラブの運営に関して評価するのはシン・テヨン監督だけではない。Kリーグ屈指の人気と運営規模を誇るFCソウルのキム・テジュも、Jリーグのクラブ運営やマーケティングに関しては賞賛を惜しまなかった。
「KリーグではJのクラブ運営を参考にしているクラブが多い。Kリーグ各クラブが特に注目しているのは、地方都市で地域密着に成功しているクラブなどです。2012年にはKリーグ主導で各クラブ関係者がJの地方クラブを訪ねる視察研修も計画されました。我々もすでに浦和、FC東京、清水、G大阪などを視察しました。最近はJだけではなく、阪神タイガースも参考にさせてもらっています」
気になったのは、キ・ソンヨンやキム・ジュンウの代理人であるチュ・ヨングの言葉だ。
「10年前に比べると、Jの魅力は半減した。韓国人選手にとって、数年前は年俸面や環境の良さがJの大きな魅力だったが、最近はKのクラブもJに匹敵する予算と環境を整え、韓日の格差もなくなりつつある。最近のJクラブは年俸4000万円以下で移籍金ゼロのFA選手、もしくはC契約で獲得できる韓国人選手を要望してくるが、同様の条件ならKクラブも満たせる時代になった。それでもKのドラフト制度を嫌って日本に渡った有望若手選手は多いが、大成する者は少なく、平凡な選手になって韓国に戻ってくる。この悪循環を韓国サッカー界は問題視しており、2016年にはドラフト制度が廃止されることも決まった。そうなると韓国におけるJリーグの地位付けや見方は、ますます変わってくる。極論だが、韓国がJを意識しなくなる日も来るかもしれない」
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