BTS(防弾少年団)が、世界的に人気を広げている。
今年5月にはアメリカ・ラスベガスで開かれた『ビルボード・ミュージック・アワード』で“トップソーシャルアーティスト賞”をK-POPアーティストとして初めて受賞。
8月13日にはアメリカの放送局FOXが主管する『2017ティーン・チョイス・アワード』で“国際アーティスト賞”を獲得している。
また、彼らのヒット曲『DOPE』のMVはYouTube再生回数2億回を突破し、世界規模での人気を証明している。
ただ、BTSの海外進出は、これまでのK-POPアーティストとは一線を画す方法で進められている。
そもそもK-POPアーティストの海外進出が本格化したのは、2001年に日本デビューした女性歌手BoAからだった。
BoAの日本進出における戦略は、徹底した「現地化」だったと言われている。
実際、彼女は日本のエイベックスに所属して活動し、「まるで“メイド・イン・ジャパン商品”と感じられるほど」(『ヘラルド経済』)日本に溶け込んでいた。
その後、日本にK-POPブームを巻き起こした少女時代やKARA、東方神起などについても、いち早く日本語を習得したことや日本の作曲家・ディレクターを起用したことがヒットの要因だったという分析がある。
さらに現在は、「現地化」どころか「現地人」をグループに入れることが一般的になってきている。
日本でも人気のTWICEには日本人メンバーがいるし、EXOやGOT7などボーイズグループにも外国人メンバーが加入している。
周知のとおりこのヒットはYouTubeにアップされたMVが拡散されて起こったものだったが、その後の欧米でのプロモーション活動が成功したことには、ジャスティン・ビーバーのマネージャーであるスクーター・ブラウンのマーケティングが大きく影響していたと考えられている。
しかし、BTSの海外進出の方法は、こうした過去の事例のどれにも属していない。
彼らは「現地化」に力を入れていないし、外国人メンバーもいない。PSYのようにヒット曲を一発当てたわけでもない。
前出の『ヘラルド経済』は、防弾少年団がグローバルな人気を獲得できた理由についてこう断言している。
「防弾少年団は、ひとえに自らの音楽とパフォーマンス、MVだけでストーリーテリングを構築し、SNSを通じた直接的なコミュニケーションで国籍を超え国際的な共感を得ていった」
確かに防弾少年団は、デビュー当時から「青春」に関するストーリーをMVに込めて、人気を呼んでいる。
しかも、メンバー全員が作詞作曲を担っており、米ビルボードも「防弾少年団がアメリカで成功できた理由は、彼らが自分たちの物語を歌うから」と伝えている。
また、SNSでファンと交流するのは彼らの大きな特長だ。
例えば冒頭の『ビルボード・ミュージック・アワード』での受賞の際は、オフィシャルSNSを通じてメンバーそれぞれが喜びとファンへの感謝を伝えているし、ファンレターを読む姿を公開するなど“ファン密着型”のSNS活動を展開している。
世界が共感できる物語を自分の言葉で歌うこと。そして、ファンと直接的なコミュニケーションを取ること。BTSは大きくこの2つの武器を持って世界的な人気を獲得しているわけだ。
過去・現在のK-POPアーティストを見渡しても、彼らのようなやり方で海外進出を成功させた例はない。
BTSの海外進出成功は、K-POPにとって画期的な出来事だと言えるのだ。
これからは、彼らをモデルにしたK-POPアーティストが続々と登場するかもしれない。
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