3月3日から16日まで、韓国では「JFF」というものが行なわれた。正式名称は「第1回 Japan Film Festival」。その名の通り、日本映画祭りである。
韓国といえば、釜山国際映画祭をはじめ様々な映画祭が年に何回も開かれる、全国民が映画好きと言っても過言ではない国。
今までも何度か日本映画祭りが開催されてはいたが、今回が第1回となるJFFは、とりわけ韓国の若い日本オタク層をターゲットにして注目を集めた。
「隠していたオタク心を探して」「注意!出口のないオタク入門」といった露骨な宣伝文句が韓国の日本オタクたちの目を引き、ネットで反響を呼んでいたらしい。
というのも、第1回目のスペシャル・テーマは「日本の漫画」。
上映ラインナップには、漫画原作の『バクマン。』『ヒロイン失格』『アオハライド』『猫なんかよんでも来ない。』『ピース オブ ケイク』といった話題作がずらりと並ぶ。
他にも韓国にファンが多い広末涼子主演の『はなちゃんのみそ汁』や、韓国ではもはや日本映画のクラシックとも言う『バトルロイヤル』『いま、会いにゆきます』『かもめ食堂』なども再上映された。
意外としっかりしたラインナップに、韓国の日本オタクや日本映画ファンは開催前から大きな期待を寄せていた。
「こういうの待ってました。なんか、企画から面白い。これまで隠れて生きてきた我々日本オタも大ハシャギしようじゃないか!神木隆之介、佐藤健、桐谷美玲、風間俊介など若手人気俳優のファンもたくさん見に来ればいいさ。映画館で待ってまーす」
「気になっていた作品ばかりで驚いた。どの作品も韓国で公開されるかどうか確信がなかったけど、わざわざ日本に行かなくても見られるのはホントありがたい」といった具合だ。
とはいえ、このフェスティバルの興行や存続の可能性については若干疑問に思う。
韓国では最近、岩井俊二監督の『ラブレター』や、アニメ映画『時をかける少女』が再上映されたのだが、これはあくまでもレトロブームの結果だろう。
しかも、1999年の公開当時観客動員数120万人を超えた『ラブレター』は別格としても、2010年以降に韓国で公開された日本映画で観客数100万人を超えた作品は一つもない。
ジブリ作品や国際映画祭で評価された作品ではない限り、日本映画はまだまだ日本オタクや一部映画マニアの専有物でしかないのだ。
もともとこのフェスがオタク層狙いとはいえ、オタク層だけで利益を出すのはなかなか難しいのではないだろうか。
それに、最近の韓国映画界では、反日感情を煽る作品が人気だ。
日本水軍と戦う韓国の歴史的英雄の姿を描く『鳴梁(ミョンリャン)』を始め、日本統治時代を描く『暗殺』、『東柱(ドンジュ)』、慰安婦をテーマにした『帰郷』、『徳恵翁主』など、韓国人の反日感情を刺激する映画が次から次へと公開されている。
このような状況で、このフェスティバルはコミケのようなただのオタク祭りになりかねないのだが、果たしてどうなることか。
いずれにせよ、日本映画ファンにとっては、JFFの次回開催が待ち遠しいはずだ。
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