ドジャースの優勝を導いたのは大谷翔平ではなく、韓国系選手のエドマンだった

このエントリーをはてなブックマークに追加

スポーツで「クラッチ(clutch)」とは、勝敗を左右する重要な瞬間を意味する。

【写真】「大谷翔平と対戦したい」と高3でド軍入りした韓国投手

バスケットボールの試合終了とともに放たれる逆転のブザービーター、アイスホッケーのサドンデスでのゴールデンゴール、サッカーの後半ロスタイムに決まる決勝ゴール、野球のサヨナラヒットなどがクラッチに該当する。

「クラッチ状況で特に強いクラッチヒッターは本当に存在するのか」という疑問は、野球で長年の議論の種となってきた。統計野球の父とされるビル・ジェームズはクラッチヒッターの存在を否定したが、デビッド・オルティス(ボストン)が登場すると「もしかするといるかもしれない」と自身の主張を曲げた。

このようにジェームズの信念を揺るがせたオルティスは、4年の間に15本のサヨナラヒットを放った。しかし、引退時のクラッチ成績は全体の成績と差がなかった。クラッチ成績は一時的に急上昇することがあるが、結局は全体の成績に収束するというジェームズの主張が正しかったのだ。

小さく希少なパーツ

クラッチヒッターは存在しないかもしれない。しかし、重要な場面でより良い活躍をする選手はたしかに存在する。

野球統計サイトの「ファングラフス」は、より重要な状況でチームの勝率をどれだけ高めたかを示す「クラッチ」という指標を作ったが、2019年以降、この指標で1位を記録しているのは、メジャーリーグのスター競争でトップを争う大谷翔平でもアーロン・ジャッジでもなく、韓国系の選手であるトミー・ヒョンス・エドマンである。

エドマン
(写真=OSEN)エドマン

2023年のWBCを通じて韓国国内でも名が広まったエドマンは、韓国で生まれて5歳でアメリカへ移住した母親クァク・ギョンア氏と、大学で野球をしていた父親ジョン・エドマンの間に、1995年に生まれた。医師の家系で育ち、医師を目指していた母クァク氏は、大学2部リーグの選手であった父と出会い、恋に落ちた。大学で数理経済学を専攻した父は高校の数学教師であり野球コーチにもなり、2人の息子に野球を教えた。

特に優秀だったエドマンはスタンフォード大学に進学し、その名を聞くだけでも頭が痛くなるような数理計算科学(Mathematical Computational Science)を専攻。メジャーリーグに進む前に取得した成績は、スタンフォード出身のスポーツ選手の中で最高だった。

エドマンは小柄(178cm、87kg)でパワーが足りないため、レギュラーになるのは難しいという周囲の評価を覆し、セントルイス・カージナルスのレギュラー二塁手になった。派手なオールスター選手ではなかったが、チームのどんな要望にも応えられる頼もしい選手だった。内野手であるエドマンが外野の守備も軽々とこなすと、オリバー・マーモル監督は彼に「万能ナイフ(Swiss Army Knife)」というニックネームをつけた。

今シーズンはエドマンにとってデビュー以降、最大の危機だった。2023年10月に手術した右手首の回復が遅れ、3月の開幕に間に合わず、前半戦を逃した。カージナルスはエドマンをトレード市場に出したが、エドマンはリハビリの試合で足首の怪我まで負った。

それでもエドマンの人気は衰えなかった。ワールドシリーズ制覇を狙うチームには、高価なパーツよりも小さく希少なパーツが必要なことが多く、エドマンがそのような存在だったからだ。

ニューヨーク・ヤンキースはエドマンの獲得に最も積極的なチームの一つだった。それでもエドマンを獲得したのは、ヤンキースではなくロサンゼルス・ドジャースだった。今年のワールドシリーズでエドマンを獲得したドジャースが、エドマンを逃したヤンキースを破り優勝を果たしたのは運命的だった。

エドマン
(写真=OSEN)エドマン

ヤンキースがエドマンと交換しようとしたネスター・コルテスは、ワールドシリーズ第1戦でフレディ・フリーマンにシリーズ史上初のサヨナラ満塁ホームランを浴びた。

シリーズMVPに輝く

エドマンは足首の怪我から回復し、移籍後3週間が経ってようやくドジャースのユニフォームを着て登場した。しかしその実力が発揮されるまで、時間はかからなかった。

ドジャースのショートであるミゲル・ロハスの体調が問題だった。エドマンはロハスの代わりにショートで出場したり、外野で始まった試合でロハスが離脱するとショートに回ったりし、内野・外野を自在に駆け回った。

9月11日のシカゴ・カブス戦は、山本由伸と今永昇太という日本人投手同士の対決で話題を集めた。勝者は7イニング3失点で勝利を収めた今永だったが、エドマンは左腕の今永相手に2本のホームランを放ち、ポストシーズンでの活躍を予告した。

スイッチヒッターであるエドマンは本来左右の打席での成績に差はないが、今年は手首の不調から右打席で好成績を残し、左打席では不調だった。エドマンは右投手相手に打率0.181にとどまった一方で、左投手には0.412という猛打を振るった。

ドジャースはポストシーズンの開始とともに、大きな悪い知らせに見舞われた。ロハスの怪我が悪化したのだ。しかしエドマンがショートに就くと、ドジャースの秋が順調に進み始めた。

チャンピオンシップシリーズ第4戦。ニューヨーク・メッツの先発ホセ・キンタナはドジャースに強いと評判の左腕であり、1カ月以上も好投を続けていた。しかしドジャースはエドマンの二塁打を皮切りに、キンタナを打ち崩した。エドマンは8回にも左腕相手にダメ押しの2点ツーベースを放った。

第6戦の活躍はさらに目覚ましかった。メッツの先発は第2戦でドジャース打線を圧倒した左腕ショーン・マネイアだったが、エドマンはマネイア相手に4打点を挙げ、シリーズが6戦で終わるようにした。チャンピオンシップシリーズ6試合で11打点を記録したエドマンは、韓国国籍または韓国系選手として初めてポストシーズンでシリーズMVPに輝いた。

エドマンの活躍はワールドシリーズでも続いた。最も重要だった第1戦とシリーズの勝敗を決定づけた第5戦の勝負所には、必ずエドマンがいた。今年のワールドシリーズは細部が勝敗を分けたといえるが、エドマンはドジャースの細部を引き締めた選手だ。

ドジャースがワールドシリーズで優勝できたのは、相手の左腕先発と左腕リリーフを克服できたからだった。大谷とフリーマンという左打者を抱えるドジャースは、左投手を相手に苦戦する傾向があったが、エドマンは左投手相手に2本のホームランと4本のツーベースを含む17打数11安打9打点という信じがたい活躍を見せた。

この5年間で証明されたクラッチ能力が、秋の試合で遺憾なく発揮されたのだ。

エドマン
(写真=OSEN)エドマン

ドジャースの来季の目標は、2000年のヤンキース以来、25年ぶりにワールドシリーズ2連覇を達成することだ。ドジャースは1年間、シュートで悩まされてきたが、FA市場には30本塁打を打てるウィリー・アダメスがいる。しかし地元の世論では、アダメスではなくエドマンに来季のショートを任せるべきとの意見が主流だ。

MVPが3人もいるドジャースに必要なのは、30本塁打を打つショートよりも、繊細なプレーができるエドマンなのかもしれない。

エドマンは来季終了後にFAとなる。ドジャースはショートの補強だけでなく、新しいユーティリティプレーヤーも必要とされる。エドマンが来季もその実力を発揮するならば、母方の家族がいるロサンゼルスで熱い支持を受けて活躍することができるだろう。そしてドジャース王朝は、小さくも堅固なエドマンという礎の上に築かれることになるだろう。

さらに16カ月後の2026年3月にはエドマンが再び韓国代表としてWBCに出場し、キム・ハソンとともに世界最高のキーストーンコンビプレーを披露する姿を期待できるようになった。

(記事提供=時事ジャーナル)

【写真あり】大谷翔平も目撃!韓国野球を彩る「美脚美女」のド派手始球式

大谷翔平への“危険球”示唆発言もあった韓国人投手、マイナーで火だるま

日本では嫌悪の対象となったが…韓国が狙う36年夏期オリンピック、国民の反応は?

前へ

1 / 1

次へ

RELATION関連記事

デイリーランキングRANKING

世論調査Public Opinion

注目リサーチFeatured Research