政権交代でピンチの尹錫悦前大統領、夫婦そろって検察と警察の出頭要請を拒否…そもそも2人の容疑とは?

2025年06月11日 社会 #時事ジャーナル
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尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領とキム・ゴンヒ夫人を頂点とする「三大特検」の発足が目前に迫るなか、尹前大統領夫妻がそろって検察と警察の出頭要請を拒否した。

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尹前大統領とキム夫人側は、捜査機関に対して「召喚調査は不要」との立場を伝えたことがわかった。

検察と警察が強制的な身柄確保に動かなければ、7月初旬に特検の捜査が本格化した後に召喚調査が行われる可能性が高い。

夫婦そろって出頭要請を拒否

6月11日、法曹界によると、大統領選前に「政治ブローカー」ミョン・テギュン氏の公認介入疑惑などに関連してキム・ゴンヒ夫人の召喚を試みていた検察は、大統領選終了後も対面調査が実施できず、足踏み状態が続いている。キム夫人側は検察に「非公開での調査」を求める一方で、提示された容疑が成立しないという主張を展開している。

キム・ゴンヒ夫人は、尹前大統領とともに2022年の第20代大統領選挙の過程で、ミョン・テギュン氏から80回以上の世論調査を無償で受け、その見返りとして同年6月1日の国会議員補欠選挙において、キム・ヨンソン元「国民の力」議員が慶尚南道昌原・義昌選挙区で公認を受けられるよう働きかけたという疑惑が持たれている。

尹錫悦前大統領(左)とキム・ゴンヒ夫人
(写真=時事ジャーナル)尹錫悦前大統領(左)とキム・ゴンヒ夫人

検察は、まずキム・ゴンヒ夫人に対する召喚調査を実施し、その結果をもとに尹前大統領への対面調査に進むものとみられていた。

しかしキム・ゴンヒ夫人側は、5月14日にソウル中央地検「ミョン・テギュン疑惑専従捜査チーム」(チーム長:イ・ジヒョン次長検事)からの出頭要請に応じなかった。提出された不出頭理由書には、「早期大統領選に影響を及ぼす懸念があり、調査に応じるのは難しい」という内容や、健康上の理由で出頭できない旨が記載されていた。

大統領選終了後もキム・ゴンヒ夫人側は、提示された容疑が成立し得ないか、矛盾していると主張し、召喚に応じないとの立場を改めて伝えた。キム夫人側の弁護士は6月9日、検察が疑っている政治資金法違反や収賄の疑いについて、「構成要件を満たしていないか、または矛盾がある」という趣旨の意見書を捜査チームに提出した。

キム・ゴンヒ夫人の弁護人は、ミョン・テギュン氏が過去から個人的な目的で世論調査を繰り返していた点に触れ、「キム夫人の要請によって調査が行われたものではない」と主張。キム・ゴンヒ夫人が要請または介入したものではない以上、その結果を受け取ったとしても、それを「政治資金の提供」と見なすことはできないというのがキム夫人側の論理だ。

政界などでは、世論調査の結果を公式発表前に受け取る慣行があり、キム・ゴンヒ夫人も同様の文脈でミョン・テギュン氏から結果を共有されたという趣旨だ。

さらにキム・ゴンヒ夫人がミョン・テギュン氏に対して、公認などを明示的または黙示的に約束した、あるいは契約関係にあるとみなす客観的証拠も存在せず、政治資金法で制限されている「債務の免除・減免」行為にも該当しないと主張した。

また、検察が押収・捜索令状に記載した収賄罪や威力業務妨害罪についても、成立し得ないというのが弁護士の判断だ。収賄罪には職務関連性が認められなければならないが、「政党の公認」は大統領が関与できる職務範囲ではなく、ミョン・テギュン氏が提供した世論調査は経済的価値がないため、収賄罪は成立しないという立場である。

威力業務妨害罪についても、当時の「国民の力」の公認管理委員らが尹前大統領夫妻から外圧を受けたという客観的証拠が存在しないと主張し、検察が収賄罪と業務妨害罪を同時に適用しようとしていること自体が矛盾しているとも述べている。

キム・ゴンヒ夫人側が、提示された容疑に反論する意見書を文書で提出したのは、仮に対面調査が行われた場合でも、長時間の調査を回避するための布石だという見方も出ている。

検察は「キム・ゴンヒ夫人の調査に必要な手続きを進めていく」との立場を示している。検察は当初、キム夫人が出頭を拒否した場合、強制的な身柄確保まで検討するという意志を見せていたが、特検体制が進行しているなかで、対応を慎重に検討している。結果として、キム夫人への対面調査を実施できないまま、特検に事件を移管する公算が大きくなっている。

尹前大統領、2回目の出頭要請も拒否へ

逮捕状の執行妨害および秘密通信機器の削除指示の容疑を受けている尹前大統領も、警察による2回目の召喚要請に応じない方針を明らかにした。

警察は5月末、尹前大統領に対し、6月5日に出頭して取り調べを受けるよう要請したが、これを拒否。続いて6月12日の再出頭を通知している。

尹前大統領の弁護人であるユン・ガプクン弁護士は前日、『聯合ニュース』に「召喚調査は不要との立場を盛り込んだ意見書を11日に警察へ提出する予定だ」と述べた。ユン・ガプクン弁護士は提示された容疑について、「尹前大統領は関与していないというのが客観的事実であり、それを根拠に調査すること自体が成立し得ない」と主張した。

警察が訪問調査を打診してきた場合に応じるかという質問には、「意見書を提出した後、警察の対応を見て判断することになる」と答えた。

尹前大統領は今年1月、自身に対する逮捕を妨害するよう大統領警護処に指示した容疑(特殊公務執行妨害)を受けている。また、非常戒厳が発令されてから4日後の2023年12月7日、警護処に対し、クァク・ジョングン前陸軍特殊戦司令官、イ・ジンウ前首都防衛司令官、ヨ・インヒョン前国軍防諜司令官など、軍司令官の秘密通信機器に関する情報を削除するよう指示した疑い(警護処法上の職権乱用教唆)もある。

尹前大統領側は、内乱罪の捜査権を持たない高位公職者犯罪捜査処(公捜処)による逮捕状の執行は正当な公務執行ではなく違法であり、したがって公務執行妨害罪は成立しないと繰り返し主張している。秘密通信機器の削除に関しても、尹前大統領が指示した事実はないとの主張だ。

警察特別捜査団は、尹前大統領に対して通告した再出頭日である6月12日に取り調べが実施されなかった場合、3回目の出頭要請を行う見通しだ。尹前大統領が再度拒否すれば、強制的に身柄を確保するため、逮捕状を請求する可能性もあるとの見方が出ている。

シン・ジャンシク「祖国革新党」議員は前日、MBCラジオ『ニュースハイキック』に出演し、尹前大統領の身柄確保の可能性について「警察の決断にかかっている」と語った。

シン・ジャンシク議員は「警察が(尹前大統領に適用された)特殊公務執行妨害と証拠隠滅教唆の容疑で2回目の召喚通知まで出しているため、(これに応じない場合)本気になればすぐに逮捕状を請求する可能性がある」とし、「特検が発足する前に誰が身柄を確保するか、警察側も緊張感を高めており、(尹前大統領の逮捕に向けた)動きが加速する可能性もある」と見通した。

(記事提供=時事ジャーナル)

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