華やかな業績と名声の陰で…韓国サムスン“職業病”の死者118人に

2017年10月09日 社会
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韓国が誇る財閥企業、サムスン電子の勢いが止まらない。

米インターブランドが発表した2017年の世界ブランドランキングでは、昨年より1ランク上がった6位に。日本のトヨタ(7位)よりも上という高評価だ。

サムスン電子のブランド価値は562億ドル(約6兆3000億円)となっており、前年よりも9%上昇。世界屈指の大企業として存在感を示している。

ただ、その華やかな実績の裏には知られざる“ブラックな一面”があることをご存知だろうか。

118人目のサムスン“職業病”死亡者

10月4日、サムスン電子の半導体工場で働いていたイ・ヘジョンさん(41歳)がこの世を去った。

「サムスン半導体・集団白血病真相究明と労働基本権確保のための対策委員会」を前身とする団体「半導体労働者の健康と人権保護」によると、2007年11月以降、サムスンの系列社で発生した118人目の職業病死亡者だ。

亡くなったイさんは、1995年にサムスン電子の半導体部門を担う器興(キフン)工場に就職。半導体ウェーハの処理工程に携わり、作業の大半は手作業だったという。

彼女は3年後に仕事を辞めているが、勤務期間中は長らく頭痛や嘔吐に悩まされた。離職後も腕や肩のしびれや手の腫れがあったそうだ。

そして2013年2月、イさんは病院で「全身性硬化症」と診断された。時間とともに皮膚や内臓が固くなる病気で、日本では指定難病となっている。症状が回復することなく、今年10月4日に亡くなった。

「夫と子供たちに申し訳ない」

イさんは2015年に前出の団体のインタビューに答えている。

その映像でイさんは、サムスン半導体工場で行われた教育は「労働者の安全ではなくウェーハの安全を守るためのもの」と話している。

インタビュアーが「化学薬品の成分や人体にどんな影響を与えるか。そういった教育はありましたか?」と問うと、彼女は「そのような教育はまったくありませんでした」と答えて、こう続けている。

「もしどんな影響があるのか知っていたら、私は多分、工場を辞めていたと思う」

その後、涙をこらえながら「拳を握ることができない」「あくびをするだけで胸が痛い」「夫と子供たちに申し訳ない」と、病状や心情を語る彼女の姿は痛々しい。

「半導体労働者の健康と人権保護」は、サムスン職業病の被害者は10月5日時点で320人に上ると主張している。

CSR(企業の社会的責任)は89位の低評価

被害者側の一方的な主張では、信憑性に乏しいと感じるかもしれない。

が、実際に、サムスン電子は米リサーチ大手のReputation Instituteがまとめた2017年の「CSR(企業の社会的責任)企業ランキング」で、89位という低評価を受けている。

同ランキングは企業の支配構造や勤労者への待遇などから作られたものだが、サムスン電子は昨年よりも69位もランクダウンした。『中央日報』は「100位内企業のうち下落幅が最も大きかった」と報じている。

サムスン電子が企業のブランド価値(世界6位)と、企業の社会的責任(世界89位)に大きな格差が存在している企業であることは間違いないのだ。

イさんの不幸を報じる記事には、「サムスン職業病で100人が死んでいるのにサムスンは知らないふりをしている」「これがグローバル企業サムスンの素顔だ」「悪魔のような企業だ」といった韓国ネット民のコメントが書き込まれている。

被害者らが主張している通り、労働者の職業病の原因がサムスン側にあるのだとすれば、一刻も早い改善に踏み切るべきだろう。

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