井崎義治・流山市長に韓国経済誌が聞く 70代の自治体トップはなぜ若い子育て世代の心を掴んだのか【インタビュー】

2026年01月06日 社会 #時事ジャーナル
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千葉県流山市の井崎義治(いざき よしはる)市長は現在72歳。2003年に流山市長に就任して以降、現在までに実に6期連続当選を果たした彼は、日本の地方自治体トップの中でも指折りの「長老」と言える存在だ。

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だが、政策を執行する手法だけは、誰よりも若々しい感覚を備えている。かつて「郊外の田舎都市」と呼ばれた流山を、若い活力に満ちた都市へと変貌させたことがその代表例だ。

日本全体が人口減少の泥沼に沈むなか、流山市の急激な人口増加は異例のケースとして数えられている。いまや流山市は、日本国内の他の自治体が注目する「模範事例」となっている。

井崎市長
『時事ジャーナル』の取材に応じた井崎義治市長(写真=時事ジャーナル)

そこで今回、本サイト提携メディア『時事ジャーナル』では井崎市長にインタビューを実施。昨年12月11日、取材陣が市長のもとを訪ねた。

「小児科・産婦人科の誘致にインセンティブを支給」

―「母になるなら、流山市」をスローガンに掲げているのか。

市役所ロビーの一角に貼られている別のポスターには、こう書かれています。「父になるなら、流山市」と。この2つの文章は、この都市が子育てをどう捉えているかを一気に見せてくれます。

流山市の子育て政策は、決して女性だけのためのものではありません。長年、男性中心で回ってきた日本社会では、女性に対して「良い母親であれ」という期待と同時に、「仕事を諦めるな」という要求が重なってきました。ただ、流山市が掲げたメッセージは明確です。ここは母親になりやすい都市であり、同時に女性が仕事を続けられる都市だということです。

他の自治体が現金給付に重きを置くなか、流山市は異なる方向を選びました。財政支出政策も並行して行いましたが、出発点はお金ではなくインフラでした。子どもを預けて出勤する動線、親の時間を減らす仕組み、日常の中で育児負担を分かち合う設計。その土台の上で、流山市は「親になる人生」を都市の責任として引き受けたのです。

―都市を設計するうえで、重視している視点は何か。

女性が2人目、3人目を産むと、子どもを保育園に預けて東京へ通勤するケースが多い。しかし、子どもが熱を出したりすると、保育園は決まって母親に連絡します。遠距離で働く母親たちは、そのたびに子どもを迎えに行かなければならず、最終的に仕事を諦めるケースも少なくありません。

そこで流山市は、育児を理由に仕事を辞めた女性たちを対象に起業セミナーを開き、地域で働ける道を用意しました。過去9年間で235人が起業手当を受け、そのうち84人が実際に会社を立ち上げました。まだ多くの税金を納めるほど成長した企業はありませんが、流山市の中で自分の力を生かして働く女性は確実に増えています。育児で止まっていたキャリアに再び息を吹き込む実験が、この都市で続いています。

―雇用や医療に焦点を当てた政策も進めていると聞いたが。

流山市は典型的なベッドタウンでした。まさに、寝るだけの街です。昼間は人がいなくて街は寂しく、財政的な余力も大きくありませんでした。しかし、状況が変わりました。企業誘致によって、今では約1万5000人がこの街で働いています。人口も20年前に比べて1.5倍に増えました。ただ、医療インフラがそのスピードに追いついていませんでした。そこで小児科と産婦人科に限っては、固定資産税などの固定税を減免し、土地取得税も免除することで誘致を進めております。

―200世帯以上のマンションに保育所設置を義務づけた理由は何か。

大規模なマンションを建てながら保育施設を併設しなければ、入所待ちの子どもだけが増えてしまいます。そこで、200世帯以上の場合は、保育所の設置を原則としました。ただし条例はあくまで自治体の要請であり、法的な強制力はないという限界があります。そこで、私たちの街は別の動きを取りました。協力的でないデベロッパーに対しては、副市長が直接本社を訪ねて説得にあたったのです。

―自治体の力だけでは限界があるのでは。

当初は政府の補助金なしで始めました。他の都市にはない「送迎保育ステーション」が代表例です。その後、政府の官僚たちが現場を訪れ、その際に必要性を説明して予算支援を要請しました。現在は政府の支援も受けています。ただ、多子世帯や乳幼児ケアに対する支援は、依然として政府レベルで十分とは言えません。この点は今後、さらに拡大されることを期待しています。

―韓国の自治体トップに助言するのであれば。

流山市は日本で初めて、市役所にマーケティング課を設けた自治体です。「この街に住みたいと思う人をどれだけ増やせるか」が、都市の競争力だと考えたからです。株式会社であれ非営利団体であれ、世の中のあらゆる組織は最終的にマーケティングによって存在を証明します。

地方政府は税収が自動的に入ってくるため、あえてマーケティングをしなくても良いと考えがちです。しかし、税金で運営されているからこそ、より徹底すべきなのです。無駄遣いを防ぐためにも、ブランディングとマーケティングは重要です。

流山市の成果が知られるようになり、全国各地でマーケティング課の新設が検討されています。ただし、市長の政策とビジョンが明確でなければ、いかなるマーケティング戦略も成功することはないでしょう。

(記事提供=時事ジャーナル)

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