「これが国なのか…」日本人を含む159人が圧死した“梨泰院(イテウォン)惨事”、区庁関係者は全員無罪の判決

2024年10月01日 社会 #時事ジャーナル
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159人もの命を奪った「梨泰院(イテウォン)惨事」に関連する警察責任者の過失が、初めて認められた。

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2022年10月29日の事故発生から702日目のことだ。

不適切な対応によって被害を拡大させた疑いを受けている元ソウル龍山(ヨンサン)警察署長のイ・イムジェは、1審で懲役3年の判決を受けた。一方で、同じ疑いを受けていたソウル龍山区長のパク・ヒヨンなど龍山区関係者は、全員無罪判決を受けた。

過去2年間、「責任者の厳罰」を求めてきた遺族たちは「受け入れがたい判決だ」として憤りをあらわにした。

判決が分かれた理由

9月30日、ソウル西部地方裁判所・刑事合議11部(ペ・ソンジュン部長判事)は、業務上過失致死傷などの容疑で起訴されたイ・イムジェ元署長とパク・ヒヨン区長に対し、それぞれ判決を下した。

裁判所はイ・イムジェ元署長に懲役3年、パク・ヒヨン区長には無罪を言い渡した。また、イ・イムジェ元署長と共に裁判に臨んだ元龍山署112状況室長のソン・ビョンジュには懲役2年、元ソウル警察庁112治安総合状況室チーム長のパク・インヒョクには懲役1年と執行猶予2年の判決が下された。

裁判の核心争点は、事故が予見可能であったかどうかだった。

梨泰院惨事が起きた現場
(写真提供=OSEN)梨泰院惨事が起きた現場

業務上過失致死傷の疑いが認められるためには、被告が注意を怠った過失があるかどうか、過失によって事故の予見可能性があったかどうか、過失と死傷の因果関係があるかどうか、これら3つの要件が証明されなければならない。イ・イムジェ元署長とパク・ヒヨン区長には同じ容疑が適用されたが、裁判所はイ元署長にのみこの疑いを認めた。

2人の責任者に対する判決が分かれた理由は何か。まず、イ・イムジェ元署長が惨事当日に大規模な人波による事故を予見できたことが認められた点が挙げられる。

裁判所は「2014年のセウォル号事件以降に韓国で発生した最大の惨事であり、サンプン百貨店崩壊以降にソウル市内で発生した最大の人的被害事故だ」とし、「梨泰院惨事は自然災害ではなく、各自がその場で注意義務を果たしていれば防ぐことができた人災であることは否定できない」と強調した。

続けて「祝祭を迎えて群衆が傾斜した狭い路地に集まることが予想された場合、治安維持という具体的な任務が付与される」とし、「大規模な人的被害という結果全体は予見できなかったとしても、一部の区域における群衆密集による一般的な事故は予見でき、それを回避できたはずだ」と述べた。

裁判所はまた、「群衆集中を予防・統制し、それを管理する警備機能が必要であったが、別途の警備対策を立てなかった」とし、「ハロウィン祭りの現場で群衆の危険性などの情報収集が必要であったにもかかわらず、事故当日に情報官を現場に配置せず、安全対策を講じなかったため、業務上の過失が認められる」と判決理由を説明した。

龍山区庁の関係者は全員無罪

一方で、裁判所はこの日、同じ容疑を受けていたパク・ヒヨン区長をはじめとする龍山区庁の関係者全員に無罪判決を下した。

ここには、元龍山区副区長のユ・スンジェ、元龍山区安全災害課長のチェ・ウォンジュン、元龍山区安全建設交通局長のムン・インファンらが含まれている。

パク・ヒヨン区長らは、2023年1月に起訴された。彼らは、大規模な人波による事故が予見できたにもかかわらず、安全管理計画を立てず、常時稼働すべき災害安全状況室を適切に運営しなかった疑いを受けた。

裁判所は「事件当時、災害安全法令には多数の人が集まることで起こる圧死事故が災害の類型に分類されていなかった」とし、「特に災害安全法令には主催者のいない行事について別途の安全管理計画を立てる義務規定が設けられていない」と述べた。これに基づき、「事前の対策準備段階において、被告たちに業務上の過失として刑事責任を問うべきものは見られない」と無罪の理由を説明した。

惨事後の対応についても「区庁当直室には、ソウル市からの状況伝達メッセージが届くまで圧死に関連する特別な市民からの通報がなかったうえ、警察から協力要請もなかった」とし、「龍山区庁の状況対応がやや遅れたとしても、初期対応に著しい問題があったと断定するのは難しい」と判断した。

また、裁判所はイ・イムジェ元署長とパク・ヒヨン区長に対する偽証、虚偽公文書作成・行使の疑いについても、いずれも無罪とした。イ・イムジェ元署長の偽証の疑いについては、「午後11時1分頃まで、大規模な人的被害が発生したことやその規模を概ね認識していたとは考え難い」とし、「龍山署の職員に機動隊の要請を指示したというのも、虚偽だと評価するのは難しい」と説明した。

パク・ヒヨン区長が虚偽の報道資料を作成、または配布したとの疑いについても、裁判所は「直接的な証拠はない」と判断。さらに「一部に誤って記載された内容も、報道資料の前後の文脈を考慮すると単なる誤記に見えるなど、惨事の影響で混乱していた実務担当者たちのミスであった可能性や、誤りを確認できなかった状態で作成・配布した可能性を排除できない」と述べた。

虚偽公文書作成・行使の疑いで共に起訴された、元女性青少年課長のチョン・ヒョンウと、元生活安全課警部のチェ氏にも無罪が言い渡された。

先立って、検察はイ・イムジェ元署長とパク・ヒヨン区長にそれぞれ懲役7年の判決を求めていた。また、チェ元課長には懲役3年、ソン元112状況室長には懲役5年が求刑されていた。

「159人が亡くなったのに無罪だなんて…」

梨泰院惨事の遺族たちは、裁判所の判決に対して絶望感を吐露した。

遺族たちは、イ・イムジェ元署長に対する有罪判決には比較的落ち着いた反応を見せたが、パク・ヒヨン区長の無罪判決を聞いてからは、声を荒げて感情を爆発させた。なかにはパク・ヒヨン区長が乗った車を拳で叩いたり、車の前に横たわって警察に引きずり出されたりする者もいた。

「10・29梨泰院惨事遺族協議会」のイ・ジョンミン運営委員長は、記者会見で「159人が亡くなったのに、こんなことが言えるのか。この国の司法は一体どこにあるのか。159人が亡くなったのに、何事もなかったかのようなこの大韓民国は、一体どんな国なのか」と怒りを露わにした。

さらに「2年という歳月の間、私たちは路上で子供たちの無念を訴え、責任を持つべき人々の無責任さと無能さを指摘し続けてきた。それにもかかわらず、今日の判決結果はあまりにも無念で言葉にならない」と涙ながらに訴えた。

この日の裁判は、午後2時にイ・イムジェ元署長、午後3時30分にパク・ヒヨン区長の順で行われた。

パク・ヒヨン区長は判決後、法廷を出る際に「判決についてどう思うか」「遺族や犠牲者に対して何か言いたいことはないか」など、取材陣の問いかけに答えることなくその場を去った。

一方でイ・イムジェ元署長は「裁判所の決定を尊重する」とし、「(遺族に対して)申し訳なく、また申し訳ない」と述べ、法廷を後にした。

(記事提供=時事ジャーナル)

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