幹部の子女に対する特別採用問題で批判を浴びている韓国の中央選挙管理委員会(選管委)が、遅まきながら連日のように反省の意を表明している。
【注目】“不正選挙疑惑”に同調する者を次々と弾圧する韓国最大野党
選管委は、外部の監視強化策を積極的に検討し、国民の信頼を回復すると公言しているが、政界では「外科手術並みの改革が不可避」との指摘が出ている。
信頼の失墜に直面した選管委は、採用不正と「不正選挙疑惑」は別の問題だと強調し、線引きを図ろうとしているようだ。
中央選挙管理委員会のノ・テアク委員長は3月5日、国民向けの謝罪文を発表し、「高位職の幹部たちの子女に対する特別採用問題で、国民の皆様に大きな失望と心配をおかけした」と述べ、「選管委員長として痛切に反省し、頭を下げたお詫び申し上げる」と謝罪した。
今回の謝罪は、監査院が選管委の高位職の子女に関する採用不正や勤務態度の乱れについて、職務監察の結果を発表してから6日後のことだ。
ノ委員長は「国民の皆様が満足するまで制度改善に最善を尽くす」と述べ、「人事規定の整備や監査機関の独立性強化など、これまで講じてきた制度改革に満足せず、様々な外部統制方案も積極的に検討する」と強調した。
また、「今回の事件で選管委に対する国民の信頼が揺らいでいることを深く認識している」とし、「組織運営への不信が選挙プロセスへの不信へとつながる可能性があることに、責任を痛感している」と重ねて謝罪した。
さらに「特別採用問題に関し、不適切な業務処理を行った職員について、本日、懲戒委員会に処分を要請した」とし、「監査院が求めた懲戒水準や選管委の内部基準を考慮し、厳正に対応する予定だ」と説明した。
ノ委員長は「選管委は憲法機関としての独立性だけに頼るのではなく、国民の信頼回復のために自浄努力を惜しまない」と述べ、「改めて国民の皆様に申し訳ない気持ちをお伝えする」と謝罪の意を表した。
選管委は、前日に公式謝罪声明を発表したことに続き、この日はノ委員長による謝罪を公表することで、特別採用問題の鎮火を図った。
また、経験者採用試験の試験委員をすべて外部委員で構成し、開放型の監査官の任用など、独自の改革案も打ち出したが、これに対しては「自浄能力には期待できない」との批判が出ている。
採用不正が発覚した後も、選管委は具体的な改善策の策定に消極的な対応を続けてきたうえ、国会に対して虚偽の説明を繰り返していたことまで明らかになったためだ。
先立って、監査院は、2023年5月に選管委の幹部たちの子女の特別採用問題が浮上すると、経験者採用の実態などに関する監査に着手し、選管委も独自の監査を実施した。
選管委は内部監査の結果、特別採用の疑惑が確認されたパク・チャンジン前事務総長、ソン・ボンソプ元事務次長、シン・ウヨン元済州(チェジュ)常任委員など、幹部の子女5人を2023年7月に業務から外す措置を取った。しかし、2024年1月の総選挙を前に全員を業務に復帰させた。
これらを含め、キム・セファン元事務総長の息子など、特別採用の恩恵を受けたことが確認された10人が、「関連規定がない」という理由で現在も選管委に勤務していることが判明した。
また、選管委は2021年12月に「選管委の親子関係職員リスト」を作成し、2022年4月にはこれを更新して管理していた。しかし、2022年3月から2023年5月までの間に国会から10回以上提出を求められた際、「職員の家族関係に関する情報は存在しない」と虚偽の回答を繰り返していたことが発覚した。
さらに、高位職による「セカンドフォン(秘密の目的で使用される2台目の携帯電話)」使用問題により、政治的中立性違反の疑惑も浮上した。
子女の特別採用問題の中心にいるキム・セファン元事務総長は、2022年の大統領選の際、新型コロナ感染・隔離中の有権者が記入した投票用紙を「ザル」やビニール袋に入れて運搬したことで批判を浴びる「ザル投票」騒動の責任を取り、同年3月に辞任した。
今回の監査院の調査では、キム元事務総長が在職中の2022年大統領選と地方選挙を前に、選管委の名義で「セカンドフォン」を作成し、政治家と連絡を取っていたことが明らかになった。選挙の管理を総括するべき選管委の事務総長が、公にされていない電話を使い、政治家と直接やりとりしていたという事実が発覚した。
さらに、キム元事務総長が2024年に行われた仁川(インチョン)江華(カンファ)郡守の補欠選挙で、与党「国民の力」の予備候補として出馬したことから、選管委勤務中から政界進出を見据えた活動をしていたのではないかとの疑惑も浮上している。
選管委に対する追及の手を強めている「国民の力」は、腐敗改革のための5つの優先課題を発表し、早ければ3月6日にもこれを法案として提出する方針だ。
主な内容は、外部監視・チェック強化のための特別監察官制度の導入、選管委事務総長に対する国会人事聴聞会の導入、裁判官による選管委員長の兼任禁止、市・道選管委を対象とした行政安全委員会の国政監査の導入、地方選管委の常任委員の任命資格を外部人材に拡大するための選管委法施行規則の改正などが含まれる。
弾劾の危機に立たされている尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が、12月3日の非常戒厳を宣布した背景のひとつとして「不正選挙疑惑」を挙げたことで、選管委は採用不正問題に加え、さらなる試練に直面した。
選管委は採用不正と不正選挙を同一視すべきではないとの立場を改めて強調している。
キム・ヨンビン事務総長は3月5日、国会・科学技術情報放送通信委員会の全体会議に出席し、高位職の子女に対する特別採用問題について「どれだけ弁解しても許されることではなく、明らかに間違った行為だ」と述べ、「完全に根絶すべき対象だ」と語った。
また、「不正は必ず根本から摘発しなければならない」とし、「制度改善を行ってきたとはいえ、完璧ではない可能性がある。国政監査の権限を持つ国会の制度改善要求などを通じて修正していくべき問題だ」と指摘した。
与党「国民の力」が推進している特別監察官の導入については、「採用不正を契機に『制度改善がある程度完了した』という前提がある」とし、「それが十分かどうかについて国民の疑問があるのであれば、積極的に協力し、明らかにしていきたい」と強調した。
監査院による職務監察が憲法違反・違法であるとする憲法裁判所の決定に関しては、「他の憲法機関と差別的に扱うのは誤りだという趣旨だ」とし、「国会、裁判所、憲法裁判所と同じ憲法機関である選管委に対し、特別な扱いをすることは認められない」と説明した。
またキム事務総長は、職員の採用不正と不正選挙の関連について問われると、「関係はないと思う」と明確に否定した。
さらに、「不正選挙は多いのか」との質問には、「(不正選挙ではなく)管理の不備だ」と断言した。続けて、「不正選挙とは基本的に組織的な動員が行われるものだ」とし、「(不正選挙であれば)偽造された投票用紙が投票箱に入れられる行為があるはずだ。直接、投票所で見たと思うが、立会人が投票箱の管理をしている」と説明した。
彼は不正選挙疑惑の提起に対して、選管委が消極的な対応を取っているとの指摘については、「十分に対応できていなかったと考えており、反省している」と述べた。
(記事提供=時事ジャーナル)
■「北朝鮮や中国に介入された不正選挙だ」尹大統領を支持する、韓国保守勢力の主張とは?
前へ
次へ