赤ん坊を売り渡す韓国人たち、闇の取引は今も 背景には未婚母の増加と“望まぬ妊娠”

2025年09月01日 社会
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韓国では今も、生まれたばかりの新生児を秘密裏に養子に出したり、金銭と引き換えに売り払ったりする闇取引が依然として横行している。

【写真】小学生を刺殺した女教師

韓国の現行法では、個人による養子縁組は違法と定められており、金銭の授受があれば加重処罰の対象となる。それにもかかわらず、こうした危険極まりない取引は現在も続いており、その規模がどの程度なのか正確に把握することさえできないのが現状だ。

温床となったネット

40代の男性A氏と女性B氏は、それぞれ家庭を持ちながら2008年から不倫関係にあった。

だが2013年3月28日、B氏は釜山・沙下区の産婦人科で、A氏の子どもを出産した。現実的に育てられないと判断した2人は、ネットで“個人養子縁組”の方法を探し、「赤ん坊を養子に迎えたい」という投稿を発見して連絡を取った。間もなく相手夫婦が病院に訪れると、A氏とB氏は条件も確認せず、すぐに赤ん坊を引き渡した。相手夫婦の素性や養育環境について尋ねることもなかった。

それから約5年後の2018年1月10日、B氏は釜山・東莱区の病院で、再びA氏との子を出産。その際もインターネットに「新生児を引き取って育てる人を探す」という書き込みを投稿し、身元不明の人物と接触した。条件も「病院代を払えば赤ん坊を渡す」と提示していた。ほどなくして養子希望者が病院に現れ、入院費28万8000ウォン(約3万円)を支払うと、2人は何の確認もなく赤ん坊を引き渡した。つまり、親は実の子を病院代と引き換えに売ったのだ。未熟児として生まれた女児は、事件が発覚するまで出生届すら出されていなかった。

女児の口を塞ぐ成人男性
(写真=PhotoAC)イメージ

結果、A氏とB氏は児童福祉法(児童売買)違反などの罪で起訴され、A氏には懲役1年2カ月、B氏には懲役2年・執行猶予3年が言い渡されることに。2人が未成年の子どもを養育していた点が情状酌量された。

ただ、このような秘密養子縁組や赤ん坊の売買は、すでに「公然の秘密」と言われている。需要と供給が一致する限り、いくら取り締まっても根絶できないからだ。出生届を出さずに赤ん坊を養子に出すことを「秘密養子縁組」あるいは「個人養子縁組」と呼び、そこに金銭が介在すれば「赤ん坊の売買」となる。A氏とB氏のケースはその典型例である。

かつては養子縁組ブローカーが探偵事務所、助産院、産婦人科、養子縁組機関などとつながり、取引を仲介していた。依頼人が子どもを望むと、探偵事務所は未婚母や助産院などから赤ん坊を確保し、仲介料を得ていた。中には子どもを誘拐して売るケースもあったほどだ。

1997年4月には、全羅南道霊岩郡では2歳の女児が自宅から忽然と姿を消す事件もあった。祖母が目を離した、わずかな隙に誰かが狙って連れ去ったとみられたが、行方はいまも不明だ。1989年5月には京畿道水原で7カ月の女児が自宅から誘拐された。家に入れて休ませていた見知らぬ女が、母親の目を盗んでベビーカーごと抱えて逃げた。いずれも「子を欲する者による計画的な誘拐」だった。

ネットで広がる闇取引

現代はインターネットの普及により、もはや探偵やブローカーを介さずに、赤ん坊を手放したい親と欲しがる夫婦が直接つながれるようになった。ポータルサイトや掲示板には「子どもを養子に出したい」とする投稿が並び、簡単に相手を見つけられる。表現は取り締まりを避けて婉曲されているが、ネットは依然として“赤ん坊取引の温床”となっているのだ。

実際、出産直後に赤ん坊を養子に出したいと書き込む女性や、不妊で切実に養子を望む書き込みも見られる。供給と需要はこうしてネット上で自然に結びついている。

増える未婚母とブローカーの暗躍

こうした密かな養子縁組や売買がなくならない背景には、未婚母の増加がある。統計庁によれば、昨年の未婚母は前年より239人増えて約2万人。10人に8人が望まぬ妊娠だった。10代の妊娠も深刻化している。

多くの未婚母は妊娠を隠し、周囲に知られないよう一人で解決しようとする。その結果、公的な養子縁組より「秘密養子縁組」や金銭取引を選ぶ傾向が強い。ここにブローカーが介入し、取引をあおっている。

ブローカーは「代理で出産する」などと装い、赤ん坊を奪い取って他人に売り渡すケースもあった。実際、30代の女が病院で自分の出産と偽って別人の赤ん坊を引き取ろうとして摘発された事件もある。

消える記録と取り返せない命

秘密養子縁組や売買では記録が残らない。親は相手の素性を確かめず、連絡先すら交換しない場合も多い。そのため、子どもが成長しても実親を探す手立てはほぼない。DNA登録でしか可能性は残されていないが、実親が登録する可能性は低い。

こうして渡された赤ん坊が健全な家庭で育っているのか、それとも犯罪組織に引き渡されたのかは誰も確認できない。最悪の場合、臓器売買や虐待の犠牲になる危険すらある。

実際、秘密養子縁組で育てられた女性が自身の境遇をネットに投稿し、虐待や監禁同然の生活を訴えた事例もある。

出生通知制度とその限界

政府は2012年から「出生登録を義務化する養子縁組特例法」を施行し、出生届を出した子どもだけが養子縁組できるようにした。さらに、2023年7月からは医療機関が出生を自治体に通報する「出生通知制度」も始まった。これにより、出生届が出されない子は自治体が確認し、場合によっては裁判所の許可で職権登録できる仕組みとなった。

しかし、これを「未婚母を追い詰める制度」と批判する声もある。出生を隠したい母親が、かえって地下取引や中絶、さらには乳児殺害や遺棄に走るのではないかという懸念だ。

根本的な課題

望まぬ妊娠、子を欲しても授かれない人々。こうした現実が今も存在する以上、秘密養子縁組や赤ん坊の売買は完全にはなくならない。手続きが煩雑で身元が明らかになる公的養子縁組より、匿名性のある「個人取引」が選ばれやすいからだ。

政府や機関が個人間の取引を防ごうと努力しているが、根本的に「養子縁組への社会的認識」が変わらない限り、限界がある。さらにブローカーの手口は巧妙化しており、性の自由化と相まって水面下の取引はむしろ広がっていると専門家は警告する。

(記事提供=時事ジャーナル)

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