実の娘に性的暴行を繰り返し、児童ポルノまで制作した40代の男に対し、一審で懲役12年が言い渡された。
ただし裁判所は、検察が求めた電子足輪(位置追跡装置)の装着命令を棄却している。なぜなのか。
提携メディア『時事ジャーナル』が入手した20ページの判決文によると、9月10日、光州(クァンジュ)地裁第13刑事部は、児童・青少年の性保護関連法違反、性暴力犯罪の処罰特例法違反、児童福祉法違反などで起訴された男Aに懲役12年を言い渡した。
さらに児童・青少年関連機関および障害者関連機関への10年間の就業制限、5年間の保護観察、80時間の性暴力・児童虐待治療プログラムの履修も命じられた。
Aの犯行は2024年2月から2025年1月までの約11カ月間続いた。前妻との間に生まれた次女(当時13歳)を対象に、祖母の家や被害者宅、自宅などでわいせつ行為や性行為を繰り返したとされる。
娘が「やめて」と拒んでも暴行を止めず、その様子を携帯電話で撮影して児童ポルノを6回制作。さらにメッセージアプリで「性器の写真を送れ」「ビデオ通話で体を見せろ」といった屈辱的なメッセージを107回送った。
裁判所は「家族制度と社会倫理を根底から揺るがす重大犯罪」と断じ、「父親という立場を利用し、未熟な被害者を長期間にわたって搾取した」「意思を無視して絶望的な状態に追い込み、犯行を続けた」と非難した。
また「親族間の性犯罪は被害者個人の苦痛を超え、家族全体や社会に深刻な傷を残す。特に被害者は知能が低く状況を理解できず、その衝撃と後遺症は一生続く可能性がある」と指摘した。
一方で裁判所は、検察が「再犯の危険が高い」として請求した電子足輪の装着命令を棄却した。電子足輪は自由やプライバシーを大きく制約するため、装着が必要とされるほどの再犯リスクが認められなければならないという。
判決文には「Aの性犯罪リスク評価は“中間”レベルで、精神病質的傾向も低い」「懲役刑と保護観察、個人情報登録だけでも再犯防止は期待できる」と記されていた。
電子足輪は性犯罪者や殺人・誘拐・児童虐待犯など、再犯の危険が認められた場合に対象となる。通常は検察が起訴時に請求し、裁判所が判決時に必要性を審理して命令するが、リスクが中間以下と出たり、懲役刑や保護観察で十分と判断される場合は棄却されることもある。
こうした判断基準に対して、現地の法曹界からは「電子足輪装着命令の基準が現実と乖離している」との批判も出ている。刑事事件専門のキム・ソジョン弁護士は「親族間の性犯罪は、他の性犯罪よりも要件を緩和すべきだ。親族にすら性犯罪を行う者は、他人に対してさらに犯行に及ぶ可能性が高いのではないか」として、「再犯リスク評価だけで判断するのは単純で一面的だ。立法による補完が必要だ」と指摘している。
なお、判決の9日前に反省文を提出していたAは、判決から6日後の9月16日、不服を訴えて控訴した。
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