「1050ウォン(日本円=約110円)」という被害額で物議を醸した韓国の「チョコパイ窃盗事件」をめぐって、検察が被告人を宣告猶予で善処することを裁判所に要請した。事件に対する世論の反応や、先に行われた市民委員会の意見を考慮した結果とみられる。
10月30日、法曹界によると、検察は全州(チョンジュ)地裁・第2刑事部(キム・ドヒョン部長判事)の審理で行われたA氏(41)の窃盗事件控訴審の結審公判で、宣告猶予を求刑した。
宣告猶予とは、比較的軽微な犯罪に対して一定期間、刑の宣告を猶予し、その猶予期間(通常2年)が経過すれば、刑の宣告がなかったものとみなす制度である。
検察は、A氏の行為が“法理上”では有罪だと強調した。この日の検事は「本件は、保安要員である被告人が業務とは関係なく被害者の事務室に入り、被害者の会社職員のために設置された冷蔵庫から、権限なく食べ物を取り出して食べたことだ」とし、「すべての証拠と法理を総合すると、公訴事実は明白に認められ、これを有罪とした原審の判断には事実誤認や法理誤用はない」と述べた。
また、A氏に同種の前科がある点も言及。検事は「被告人は過去にも同様の犯罪を犯し、職を失う恐れを理由に宣告猶予を受けたことがある。本件の捜査過程から1・2審に至るまで、自身の犯行を認めず、反省もしておらず、被害者からの許しも得ていない。このような行動は非難されて当然だ」と指摘した。
ただそのうえで、「本件の被害額が1050ウォンと少額であり、有罪判決が確定すれば職を失うという結果はやや過酷である」として、「検察が同事件の最終意見に関して、市民の意見も傾聴し、市民が受け入れられる結論を導き出そうと努力した点などを裁判所も考慮し、最後の情状酌量として宣告猶予をお願いしたい」と裁判所に訴えた。
A氏本人は、「事件当時、託送ドライバーが退出した事務室の照明や冷暖房の稼働状況を確認するため見回っていた際に本件が起きた」とし、「一度もこのようなことが問題になったことはなかった。こうした事情を十分に考慮してほしい」と裁判所に求めた。
A氏に対する宣告公判は、来る11月27日に行われる予定だ。
なお、とある警備会社の労組員であるA氏は昨年1月18日、全羅北道完州郡(チョルラブクト・ワンジュグン)のとある物流会社事務室の冷蔵庫に入っていた、450ウォン(約50円)のチョコパイやカスタードなど1050ウォン相当の菓子を無断で食べたとして、窃盗の容疑で起訴された。
A氏は1審で罰金5万ウォン(約5300円)を言い渡されたが、これを不服として控訴した。これは、警備業法上、窃盗罪が確定すると職を失うことになるためである。
事件が知られると、「被害額1050ウォンの事件で職を失うのは妥当なのか」という議論が巻き起こった。これを受け、シン・デギョン全州地方検察庁長は先月22日、「検察が今回の裁判と関連して、常識的な観点から検察ができることを検討する」と述べていた。
また、今月27日に全州地検で行われた市民委員会でも、大多数がA氏に宣告猶予を求刑するよう検察に勧告したと伝えられている。
(記事提供=時事ジャーナル)
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