「最大のリスク」が「最大の追い風」に…起死回生を果たした李在明代表、韓国大統領への“残り3つの壁”

2025年03月28日 政治 #時事ジャーナル
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「事必帰正(すべてのことは必ず正しきところに帰する)ではないか」

【注目】李在明、まさかの逆転無罪…検察は上告へ

韓国最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表が3月26日、公職選挙法違反容疑に関する控訴審の判決公判の直後、法廷を後にしながら口にした言葉だ。

2審のソウル高等裁判所の裁判部は同日、1審の有罪判決を破棄し、李在明代表に無罪を言い渡した。

法廷で無罪の判決文が読み上げられると、李在明代表は裁判部に向かって90度の礼をした。法廷を出ながら、彼は支持者たちを安心させるように手を上げた。

判決前に法廷に向かう際には、取材陣の質問に「あとで話そう」とだけ答え、緊張した様子が明らかだったが、判決を終えて出てきた彼の姿は、重い荷を下ろしたようにやや穏やかになっていた。彼は晴れやかな表情でマイクの前に立った。

口を開いた李在明代表は、まず2審裁判部に感謝の意を示し、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権と検察を批判して「この当然のことに国家のエネルギーが消耗されたというのはまったく呆れる話だ」と語った。

3月26日、無罪判決を受けて支持者に手を振る李在明代表
(写真=写真共同取材団)3月26日、無罪判決を受けて支持者に手を振る李在明代表

続けて「李在明を捕まえるために証拠を捏造し、事件をでっちあげるのに使われたその能力を、山火事予防や国民生活の改善に使っていたならば、どれほど良い世の中になっていただろうか」と皮肉を込めた。

李在明代表は立場を表明した後、現場に駆けつけた数十人の議員や支持者たち一人ひとりと目を合わせて挨拶を交わした。彼が大勢の人々に囲まれて祝福を受け、車両に乗り込むまで、そこには「勝者の余裕」が溢れていた。

非・李在明派は一気に苦しく

まさに「大逆転」だ。

2024年11月15日、1審の裁判部は野党の有力な次期大統領候補である李在明代表に対し、懲役1年、執行猶予2年という重い刑を言い渡した。政治生命にとっては「余命宣告」に等しい判定だった。

大統領就任を意味する、いわゆる「星の瞬間」が遠のいたかのように見えた。しかし李在明代表は、わずか4カ月で「回復」の判定を得た。

政界の大多数は、1審で重刑が出た以上、量刑が軽くなったとしても少なくとも有罪は維持されると見ていた。しかし予想は裏切られた。180度覆された完全な無罪が宣告され、李在明代表の政治的生命と立場もまた、劇的な回復を遂げたのだ。「星の瞬間」が再び李在明代表に向かって近づいてきた格好だ。

実際、李在明代表は今回の無罪判決によって、大統領選挙への道における「最大の山」を越えたという評価を受けている。

当初、この日の判決は李在明代表にとって最大の関門と見なされていた。選挙法違反は政治家にとって最も致命的だ。罰金100万ウォン(約10万円)以上の刑が確定すれば職を失うだけでなく、5年間は選挙への出馬も不可能となる。

懲役刑となれば10年間出馬ができなくなる。他の容疑の裁判にはない「6・3・3」(1審6カ月、2・3審3カ月内に判決)原則も適用される。李在明代表の2審も、かなり急いで進行された。李在明代表が2度にわたり違憲法令審判の申請を行うなど引き延ばし戦略をとったが、裁判部はスピードを落とさなかった。

皮肉にも、そのおかげで李在明代表は、より早く致命的リスクを振り払うことができた。

もちろん、早期大統領選が行われる場合、それまでに最高裁の判断が出る可能性は、当初から高くないと分析されていた。尹錫悦大統領の弾劾審判が判決を残すのみとなっており、弾劾が認められて選挙が実施された場合、最長でも60日以内だ。

その期間内に最高裁の判断が出る可能性は限りなく低いというのが法曹界の大方の見方だった。

それでも、もし2審で罰金100万ウォン以上の刑が宣告されていたならば、李在明代表にとっては致命打となった可能性が十分にあった。党内の非・李在明派を中心に、「候補交代論」が激しく噴き出す起点になっただろうという予想が多かった。司法リスクは、非・李在明代表派の人物たちが依拠できる数少ない「頼みの綱」だった。

しかし李在明代表が無罪を勝ち取ったことで、彼らの名分は弱まり、大統領選における李在明代表の独走体制はさらに強固になると見られている。

取材によれば、非・李在明派の一部候補者は、今回の判決により「李在明優勢論」が定着したと判断し、仮に早期大統領選が行われても党内予備選への出馬を断念することも検討しているという。

李在明代表の無罪判決を喜ぶ支持者たち
(写真=時事ジャーナル)李在明代表の無罪判決を喜ぶ支持者たち

もっとも、李在明代表の司法リスクは依然として現在進行形だ。選挙法も最高裁の判決が出るまでは終わっていないうえ、これとは別に計5件の裁判が控えている。

偽証教唆、大庄洞・白峴洞開発汚職、サンバンウルによる北朝鮮への送金、京畿道の法人カード私的流用疑惑などだ。そのうち判決が出たのは、選挙法以外では偽証教唆事件のみだ。偽証教唆事件は2024年11月の1審で無罪判決が出て、現在控訴審が進行中である。今後も引き続き、これらの案件は李在明代表を追い続けることは明らかといえる。

ただし政治家にとって重要なのは、事実かどうかよりも、有権者の認識だ。早期大統領選が行われる場合、選挙法違反の裁判だけが選挙前に判決が出る可能性がある唯一の事件だったため、与党側もこれを足がかりに李在明代表を強く圧迫してきた。

それゆえ、選挙法裁判は李在明代表にとって最大のリスクとして浮上していたが、皮肉にもその脅威が解消されたことで、有権者の認識としては司法リスクそのものが消えたかのような印象を与える可能性がある。

「最大のリスク」が「最大の追い風」に転じる逆転劇だ。

特に李在明代表は今回の峠を乗り越えたことで、党内外のけん制を同時に抑える格好になった。匿名を求めた汝矣島(ヨウィド)のある政治分析家は、「選挙法の無罪のおかげで、自身の最大の弱点であり、ライバルたちの攻撃ポイントだった司法リスクの負担をかなり取り除き、李在明代表が羽ばたくことになった。大統領選への道に『青信号』が灯ったのも同然だ」と評価した。

では、李在明代表に今後残された関門は何か。

まずは尹錫悦大統領の弾劾が第一の関門だ。憲法裁判所が尹錫悦大統領の職務復帰を認めれば、早期大統領選はない。すなわち、李在明代表にとっては今が最適の機会といえる。

3件の裁判はまだ1審の判決すら出ておらず、司法リスクは時間が経つほど李在明代表にとって脅威となる可能性が高い。彼にとっては、特に判決の予定がない今こそが「ゴールデンタイム」なのだ。

ところが最近、憲法裁の雰囲気が不穏だ。尹錫悦大統領の弾劾判決が引き延ばされ続けているためである。当初有力な判決時期とされた3月初旬から中旬を大きく過ぎ、4月に突入した。

弾劾訴追案が憲法裁に提出されたのは2024年12月14日であり、3月24日で100日を越えた。盧武鉉(63日)、朴槿恵(91日)元大統領の記録を超え、最長記録を更新中だ。これほどまでに判決が遅れている背景には、憲法裁判官たちの間で意見の一致が得られていない可能性が指摘されている。

大統領が復職すれば再び司法リスク

李在明代表と「共に民主党」が最近、光化門(クァンファムン)に「テント党本部」まで設置し、街頭に出たのはもちろん、マ・ウンヒョク憲法裁判官候補の任命を要求し、ハン・ドクス大統領権限代行の再弾劾、チェ・サンモク副首相兼企画財政部長官の弾劾まで言及して全面的な攻勢に出ているのも、このような憲法裁内部の雰囲気と関係しているという見方が出ている。

もちろん、そこには李在明代表の選挙法2審での有罪判決に備える戦略という解釈もあった。

政界と法曹界では、憲法裁がいかに遅くとも、ムン・ヒョンベ、イ・ミソン両裁判官の任期が終わる4月18日以前には判決を出すだろうと見ている。その中で弾劾が認められれば、選挙法2審の無罪で一息ついた李在明代表にとって決定的な機会をつかむことになると見られている。

ムン・ヒョンベ憲法裁判所長権限代行
(写真=共同取材)ムン・ヒョンベ憲法裁判所長権限代行

弾劾が棄却されれば、元の政治日程である2027年の大統領選まで、李在明代表は残る裁判を含めて数多くの関門を再び越えていかなければならない。

司法リスクという外部からの脅威を除けば、李在明代表にとって最大の脅威は結局、自身に帰結する。

まず李在明代表には高い不支持率という容易には解決できない課題が付きまとっている。今年1月、世論調査機関メディアリサーチがニュースピムの依頼で有権者1000人を対象に実施した世論調査(無線ARS方式、信頼水準95%に標本誤差±3.1%ポイント、応答率5.5%)によると、李在明代表は好感度(39.1%)および非好感度(40.8%)の両方で圧倒的な1位を記録した。

好感度で2位だった与党の有力人物、オ・セフンソウル市長(9.5%)よりも圧倒的に高い支持を受けたが、それだけ非好感度も高かった。李在明代表の非好感度は、2位のオ・セフン市長(13.5%)の3倍を超える数値となった。

一部では、このような非好感度の主な原因が司法リスクにあるとされていることから、今回の選挙法無罪判決が李在明代表の非好感度を下げるきっかけになり得るとの分析も出ている。しかし反対に、司法リスクの一部が解消されたからといって非好感度に影響が出るとは限らず、むしろ反感が強く働き、非支持層の結集現象が生じる可能性があるという見方もある。

高い非好感度は、結局のところ、「拡張性の限界」ともつながっている。

歴代でも最も否定的な選挙と評価された前回の大統領選で、0.73%ポイント差で敗北した李在明代表にとって、拡張性の限界は一種の「反省材料」だ。李在明代表が最近、いわゆる「右寄り」の姿勢を見せ、中道・保守層に手を差し伸べているのも、これを意識した戦略的行動と解釈されている。

しかしその過程で出た「K-エヌビディア(NVIDIA)」発言などが、かえって相手の攻撃材料を提供する逆効果を生んだ点は悩みの種だ。

「李在明恐怖症」はなぜ生じたのか

李在明代表は現在、「汝矣島の大統領」と呼ばれるほどの強力な政治的地位を持っている。170議席(進歩系を合わせれば189議席)という圧倒的な多数派が、李在明代表を支える大きな柱となっている。

しかしここでも逆説が生じる。このような李在明代表と「共に民主党」が、大統領権力を含む行政権力まで握るようになれば、その影響について「共に民主党」支持層以外からの懸念が提起されているという点だ。

李在明代表
(写真=時事ジャーナル)李在明代表

最近登場した「李在明フォビア(恐怖症・不安感)」という新語も、このような背景が働いている。再び「拡張性の限界」だ。

中道・保守層の中には、尹錫悦政権の独善性に対する不満と同じくらい、李在明代表体制の「共に民主党」による立法独走に対する反感も根強いと解釈されている。

これは前回の大統領選以後、「野党主導の一方的な立法」と「拒否権」で絶えず対立してきた尹錫悦大統領と李在明代表の双方に対する強い反発から来ている。「尹錫悦大統領には失望したが、その権力を李在明代表に渡すのは不安だ」という一部の世論は、尹錫悦大統領が退く可能性がある現在の時点で、李在明代表が必ず解決しなければならない課題として浮かび上がっている。

しかし最近、李在明代表と「共に民主党」は、「急ぎすぎた」ことで返ってきた「連続弾劾」への逆風にもかかわらず、再びハン・ドクス権限代行の再弾劾とチェ・サンモク副首相の弾劾カードを切るなど、「自滅的な一手」を繰り返している様子もうかがえる。

これについて、尹錫悦大統領との「敵対的共生関係」から抜け出せない限界を引き続き示しているという指摘が出ている。党内からも「追加の案件を(憲法裁に)送れば、尹錫悦大統領の判決がさらに遅れる可能性がある。実利がなく、国民の疲労感を高める。自制すべきだ」(イ・ソヨン議員)という批判が出ている。

非支持層とは対極にある李在明代表の「ファンダム(熱烈な支持層)」もまた、「諸刃の剣」になり得る。

いわゆる「ケッタル(改革の娘たち)」と呼ばれる強硬な支持層は、李在明代表に対して高い忠誠心を持っていると解釈されている。しかし、その忠誠心と同じくらい強い閉鎖性と排他性によって、戦略的な忍耐力が弱いという限界があるとの分析も出ている。

李在明代表にとって、中道層の取り込みはもちろん、現在いくつかに分かれている進歩陣営の統合もまた重要な課題として提起されていることから、その過程で彼のファンダムの特異性が障害として働く可能性があるという見通しだ。

選挙法の控訴審で無罪を言い渡され、最も重かった足かせを外した李在明代表は、自身の「星の瞬間」をつかみ取ることができるだろうか。

李在明代表は2審の判決直後、最初の公式日程として大規模な山火事被害が発生した慶尚北道・安東(アンドン)へと向かった。安東は李在明代表の故郷でもある。彼が「民生」重視の行動を通じて、本格的な大統領選プランを動かし始めたという観測が出ている。

李在明代表は当面、「民生・経済」重視の活動と、尹錫悦大統領の罷免を求める「ツートラック」戦略を展開していくと見られている。

依然として多くの変数が残っているが、「共に民主党」はまず李在明代表を中心に強く結束し、「尹錫悦大統領弾劾後」の戦略構築に入る見通しだ。

李在明代表をけん制してきた一部の非・李在明派の声も、当面は力を失うと予想されている。派閥色の薄いある多選議員は、「選挙法で無罪となったことで、共に民主党の大統領候補は事実上、李在明代表に定まったと見ている」とし、「党内というよりもむしろ、内乱のような党外の環境が李在明を中心に共に民主党を一つにまとめる求心力をより強めていると思う」と語った。

(記事提供=時事ジャーナル)

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