日本では東京都知事選挙がイシューとなっている。NHKの世論調査によると、都知事選に「関心がある」と答えた人は73%に及んだという。
とはいえ一部からは、「まともな候補者がいない」「誰にも投票したくない」という嘆きも聞こえてくる。
それでも、お隣・韓国の知事を選ぶ「全国同時地方選挙」に比べれば、贅沢な悩みといえるかもしれない。
韓国の全国同時地方選挙は、主要8都市などの首長、議員、教育監(教育庁のトップ)を選出するもの。直近となる2014年6月4日に行われた全国同時地方選挙について見てみよう。
2014年6月の同選挙は、セウォル号沈没事故の直後に行われるということもあって、韓国国民が朴槿恵政権にどんな審判を下すかに注目が集まっていた。実際の選挙結果においても、与野党が拮抗する結果となった。
しかし、そもそも同選挙の立候補者たちの多くが、“前科持ち”であったことをご存じだろうか。立候補者8994人のうち、前科者はなんと全体の39.8%を占めたという。
特に、権限の大きい市や道のトップを決める“市・道知事”候補61人のうち、45.7%に当たる28人が前科持ちであることも明らかになっている。このなかには、7種類の前科記録を持つイ・ガプヨン蔚山広域市長候補をはじめ、6種類の前科者が6人、5種類の前科者が3人もいた。
気になる前科の中身は、韓国メディアによると、暴力事件が22件で最多。次いで、集会やデモに関する法違反21件、公務執行妨害18件、業務妨害と国家保安法違反がそれぞれ16件、交通違反10件の順となっている。
各政党は候補者審査の基準において、道徳性を重要視するとしていたが、まったくの建前だった。統合進歩党のイ・グァンソク氏(全羅北道知事候補)などは、飲酒運転で3度も罰金刑を受けているからだ。道徳性云々の話ではないだろう。
「前科者には投票しなければいいだけ」ともいえるかもしれない。しかし慶尚南道や仁川市の場合、知事候補3人のうち前科者が2人という有様。選択肢があまりに狭いという、悲惨な現状になってしまった。
ちなみに、地方教育庁のトップを決める教育監の立候補者も、72人うち19人(26.4%)、つまり4人に1人以上が前科持ちという驚きの数字が出た。教育は国家の根幹に関わるだけに、非常に心配な結果といえるだろう。
とはいえ、韓国では2014年6月の全国同時地方選挙から、公開すべき前科記録が「禁固以上の刑」から「100万ウォン(約10万円)以上の罰金刑」に拡大しており、候補者にとっては厳しい状況にあったことも事実だろう。
これは、「禁固以上の刑」であった第19代国会議員選挙(2012年4月)において、候補者の20.5%が前科者であったことを鑑みて、「選挙をよりクリーンに」という意図で、与党であるセヌリ党が法改正を試みた結果だ。
そんな法改正の経緯を踏まえて、候補者の前科の中身をあらためて注視すると、与党側の思惑が透けて見える気がする。
というのも、反政府活動や民主化運動を行った人物は、どうしても「集会やデモに関する法」や「国家保安法」の“違反者”(=前科者)になりやすい。彼らを選挙で厳しい状況に追い込むために、与党側が公開すべき前科記録を拡大したのでは……という推測もあった。
いずれにせよ、2014年6月の全国同時地方選挙の立候補者たちに前科者が多かったのは事実だ。
今回の東京都知事選の立候補者に前科者がいるかどうかは定かではないが、韓国よりも多いということはないのではないだろうか。
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