ソウルでは1万4000件以上の宿泊施設が違法…韓国前大統領の娘による「無許可」民泊運営で“盲点”が明らかに

2024年10月22日 経済 #時事ジャーナル
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韓国のムン・ジェイン(文在寅)前大統領の娘、ムン・ダヘ氏が営業許可を取得せずにシェア宿泊施設を運営していた事実が明らかになり、捜査当局が調査に乗り出した。

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この出来事を契機に、シェア宿泊プラットフォーム「エアビーアンドビー(Airbnb)」の法的な盲点が再び公論化される見通しだ。

緩い規制を縫って密かに運営されてきたエアビーアンドビーは、韓国市場に参入して10年で宿泊施設5万件を提供する主要プラットフォームに成長した。

『時事ジャーナル』は、ムン・ダヘ氏が2021年6月に分譲を受けたソウル永登浦(ヨンドゥンポ)区の住宅用オフィステルをエアビーアンドビー用の宿泊施設として利用している事実を10月14日に独自報道した。

ムン・ダヘ氏は、このオフィステルに対して永登浦区庁に営業許可を申請していなかったことが確認された。住宅用であっても、法的には業務用施設であるオフィステルは、そもそも宿泊目的の営業申請が不可能だ。この件に関する苦情を受けた永登浦警察署は、捜査を行うかどうかを検討中であると伝えられている。

先立ってムン・ダヘ氏は、自身が所有する済州道・翰林邑(ハンリムウプ)の住宅もエアビーアンドビーの宿泊施設として利用していた。この住宅は2022年7月にソン・ギイン神父から購入したものだ。

ムン・ダヘ氏
(写真提供=時事ジャーナル)ムン・ダヘ氏

住宅の所有事実は、ムン・ダヘ氏の元夫であるソ氏の採用恩恵疑惑を捜査していた全州地検が8月30日に家宅捜索を行った際に明らかとなった。この住宅も営業許可を取得していなかった。済州市は最近、この住宅で未申告の違法宿泊業が行われているという苦情を受け、済州自治警察団に捜査を依頼した。自治警察団は10月21日現在、事実関係を確認中だ。

ムン・ダヘ氏、いずれも「未申告宿泊施設」

営業許可を取得せずに宿泊業を運営することは、明確な公衆衛生管理法違反だ。

ムン・ダヘ氏の済州道の住宅の場合、農漁村振興法に基づく「農漁村民宿事業」として宿泊施設を申請することは可能である。しかし、その場合も公衆衛生管理法上の宿泊施設として申請されたと見なされる。さらに、済州道の住宅は農漁村民宿事業の宿泊施設としても登録されていないことが確認された。

問題は、エアビーアンドビーに登録されている宿泊施設の大半が公衆衛生管理法違反の可能性を含んでいる点にある。

共に民主党のイ・ゲホ議員室によれば、2023年9月時点でエアビーアンドビーに登録されているソウルの宿泊施設は1万6000件に上るが、ソウル市で営業許可を受けた正規施設は1520件(9.5%)に過ぎないという。残りの90%以上が未申告の違法宿泊施設ということだ。

この割合をエアビーアンドビーに登録されている全国約5万件の宿泊施設に当てはめると、違法と推定される宿泊施設は約4万5000件に達する。

ムン・ダヘ氏が保有または賃貸していた不動産3件
(写真提供=時事ジャーナル)ムン・ダヘ氏が保有または賃貸していた不動産3件。ソウル永登浦区のオフィステル(左)と済州翰林邑の住宅(中央)は所有しており、ソウル西大門区の住宅(右)はチョンセ物件(保証金を支払う賃貸契約)

こうした実態に対して、取り締まりの実績はわずかだ。祖国革新党のチョ・ギュグン議員室が全国16の自治体から受け取ったエアビーアンドビーの未申告事業者摘発件数は、2023年459件に留まった。また、同期間に税額徴収のために国税庁が摘発した未申告事業者件数はわずか7件だった。

エアビーアンドビーの違法運営が横行するなか、当局の対応が消極的であったため、税収にも影響が出ている状況だ。

ソウルでは1万4000件以上の宿泊施設が違法

エアビーアンドビーによる法的盲点を解消するために、政府は何度も動いたが、目に見える変化はない。国会でもエアビーアンドビーを合法化する法案が数回発議されたが、いずれも通過しなかった。関連法規はエアビーアンドビーが国内で始まった2014年以前とほとんど変わっていない。

例えば、都心のマンション住民がシェア宿泊施設を運営しようとする場合、まず公衆衛生管理法の条件を満たす必要がある。その条件には、必須施設の設置に加えて「客室数30室以上」や「(宿泊施設面積が)建物延べ面積の3分の1以上」などが含まれる。マンションの一世帯を所有する個人がこれを守るのは、現実的に不可能だという指摘がある。

観光振興法に基づく外国人観光都市民宿業として登録する方法もある。しかし、これにも客室数の条件があり、隣人の同意書が必要となる。また、内国人は宿泊が禁止され、申請者が同居していなければならないという制約もある。

エアビーアンドビーのホストとして活動している京畿道在住のA氏は、『時事ジャーナル』に「2021年頃、住んでいるマンションの空き部屋を利用して外国人観光都市民宿業の登録をしようと市役所に問い合わせたが、条件が厳しくて断念した」と伝えた。

このような中で、エアビーアンドビーの制裁が緩いことも、違法運営が蔓延している要因とされている。法的には公衆衛生管理法に基づき、2年以下の懲役または2000万ウォン(約220万円)以下の罰金に処される。しかし、A氏は「担当公務員に尋ねたところ、関連する苦情があれば注意を促して終わると言われた。また、警察に告発しても逃れるケースが多いそうだ」と語った。

「警察に告発しても逃れるケースが多い」

最近、大田(テジョン)ではエアビーアンドビーを通じて未申告の宿泊施設3件を運営していた40代男性が、公衆衛生管理法違反の疑いで起訴された。

彼は5年間で1泊あたり12万~13万ウォン(約1万3000円~1万4000円)を受け取り、総額1億3300万ウォン(約1450万円)を稼いだ。しかし7月に裁判所は、罰金600万ウォン(約66万円)の判決を下すに留まった。

ムン・ダヘ氏の場合、ソウルのオフィステルと済州の住宅をエアビーアンドビーに掲載し、1泊あたり28万~35万ウォン(約30万円~38万円)の収入を得ていた。2019年5月に購入したソウル陽平洞(ヤンピョンドン)の住宅(2021年2月に売却)も、エアビーアンドビー用の宿泊施設として使用されていたことが知られている。

これを含め、ムン・ダヘ氏はこれまで5年間にわたりエアビーアンドビーのホストとして活動していた。

エアビーアンドビー側は先制措置を取った。10月2日から新規登録する宿泊施設には営業許可証の提出が必要だと発表した。既存の登録施設も2025年10月から営業許可証の提出が義務化される予定だ。

これによってムン・ダヘ氏の宿泊施設を含め、営業許可が取得できないオフィステルなどは退場させられる見通しだ。

(記事提供=時事ジャーナル)

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