韓国でディープフェイク(AI技術を用いた映像の改ざん)などのデジタル性犯罪物の削除を求める被害者の要請が年々急増しているなかで、主管官庁である女性家族部が来年度の関連予算を削減したことが確認された。
国会・女性家族委員会所属のイ・ヨンヒ議員(共に民主党)が国会立法調査所から入手した資料によると、女性家族部傘下の「デジタル性犯罪被害者支援センター」に寄せられたデジタル性犯罪物の削除要請件数は毎年、急増している。
特に今年1月から6月までの6カ月間で計16万5095件の削除要請が受理され、これは2020年の1年間の削除要請件数(15万6136件)をすでに上回る数字だ。このままのペースで進むと、今年の総削除要請件数は昨年(24万3607件)に比べ、1.5倍増加する見込みだ。
近年、ディープフェイク技術を利用した性的搾取映像の制作・拡散が増加しており、韓国政府は「根絶」を公言している。ユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領も10月21日、「第79周年警察の日記念式典」に参加し、「ディープフェイクなどの先端技術を悪用した新型犯罪やフェイクニュースが絶えない」と述べ、「ディープフェイク識別システムの開発を加速し、関係機関との協力を通じてデジタル性犯罪を根絶すべきだ」と強調した。
しかし主管官庁である女性家族部は、デジタル性犯罪物の削除支援に関する来年度の予算案を今年に比べ2億ウォン(約2200万円)削減し、32億6900万ウォン(約3億6200万円)で編成したことが確認された。
削除要請業務を担当する人員も、今年の39人から41人に2人増加したにとどまり、削除要請件数の急増に対する対応が不十分という批判が提起されている。
予算削減について、女性家族部側は「デジタル性犯罪システムの構築がある程度完了したため、予算が縮小されたと見られる」と説明した。
しかし現場は、より多くの人員と予算が切実に必要な状況だ。実際にデジタル性犯罪被害者支援センターに寄せられた削除要請のうち、毎年約30%が「未削除」のままという結果が示されており、10件の要請のうち約3件については被害者支援が実施されていない。
2023年も全体の31.2%にあたる7万5922件が削除されなかったと集計されている。その原因の一つとして、支援人員の不足が指摘されている。
専門家たちは、デジタル性犯罪物は拡散スピードが速いため、削除の「ゴールデンタイム」が非常に重要であると口をそろえる。そうでない場合、二次被害が急速に拡大し、手の施しようがなくなるからだ。
これについて、イ・ヨンヒ議員は「技術の発展により、デジタル性犯罪の問題が日々深刻化しているにもかかわらず、対応する人員を含む政府の対策があまりにも安易に見える」と指摘した。
そして「特にディープフェイクの問題が激化しているが、政府がその深刻さを理解していないように感じる」とし、「被害者保護と迅速な不法撮影物の削除のために、積極的に人員を補強し、予算も増やすべきだ」と強調した。
(記事提供=時事ジャーナル)
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