現職大統領の弾劾局面において、韓国最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表および野党の支持率が低迷するなか、「李在明一極体制」に対する非・李在明派の批判が相次いでいる。
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非・李在明派は、李代表の政治哲学やリーダーシップが歴代の「共に民主党」の大統領候補たちと乖離しており、その結果、党の拡張性が制限されていると指摘する声がある。
最近、李在明代表と微妙な緊張関係にあるのは、「親・文在寅(ムン・ジェイン)派の嫡子」と呼ばれるキム・ギョンス前慶尚南道(キョンサンナムド)知事だ。
キム前知事は「ドゥルキング世論操作事件」で有罪判決を受け、公職選挙権を失い、「共に民主党」から除名された。しかし、2022年の年始特別赦免で釈放され、2024年8月の光復節の特別赦免で復権し、公職選挙権を回復して再び政治活動が可能になった。
これを機に党への復党を申請し、政治活動を事実上再開した。
キム前知事は復帰と同時に「李在明の民主党」に対する批判を展開した。
「12・3非常戒厳」の後、“政治的な死”を宣告されたと見られていた尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領と与党の支持率が、むしろ回復した背景について、キム前知事は「共に民主党」の失策が影響を及ぼしたと指摘。さらに李代表が「統合のリーダーシップ」を発揮できていないとも批判した。
キム前知事は1月29日にSNSを更新し、李代表に向けて「2022年の大統領選以降、地方選挙や総選挙の過程で、屈辱を感じて党から遠ざかったり、離れたりした人が多い」として、「彼らに心から謝罪し、快く戻ってこられるようにすべきだ」と強調した。
さらに「内乱勢力を圧倒できない各種世論調査の結果は、私たちに大きな課題を突きつけている。国民の声を読み取り、私たち自身の責任と原因を見つけなければならない」と述べ、「共に民主党」の対応に警鐘を鳴らした。
また、李代表に対して政権交代だけでなく、「憲法改正」にも積極的に取り組むべきだと訴えた。
2月4日、キム前知事はSNSで「国民の不安を解消するための改憲について、共に民主党が消極的である理由はない。今回の弾劾の最終地点は、この国で二度と内乱や戒厳が起こらないようにする“改憲”であるべきだ」と主張した。
また、李代表が憲法改正に慎重な立場であることを理解しつつも、「第2の尹錫悦、第2の戒厳と内乱が、この国に二度と根付かないようにすることこそが、真の内乱克服だ」と述べ、「李在明代表には、国民の不安を解消するために憲法改正の推進を主導してほしい」と重ねて強調した。
李在明代表をめぐる「司法リスク」は、非・李在明派からの主要な批判点の1つとなっている。
特に2月4日に李代表側が公職選挙法の違憲法律審判を提請したことについて、裁判の遅延を狙った“策略”だとの指摘が、与党だけでなく党内の一部からも上がっている。
違憲法律審判の提請とは、法律の違憲性が裁判の前提となる場合に、裁判所が職権または当事者の申請に基づき、憲法裁判所に違憲審判を提訴する制度のことだ。この申請が受理されると、憲法裁判所の決定が出るまで裁判は中断される。
野党側の有力な大統領候補とされるキム・ブギョム前国務総理は2月5日、CBSのラジオ番組『キム・ヒョンジョンのニュースショー』に出演し、李代表の違憲法律審判提請による裁判遅延について問われ、「李代表は過去、困難な状況の中でも裁判所と国民を信じたことで良い結果を得た。国会での逮捕同意案の採決時や、偽証教唆問題のときもそうだった。今回も正攻法で進むべきではないか」と指摘した。
また、「違憲法律審判を申請するよりも堂々と対応すべきではないか」と質問されると、キム前国務総理は「その通りだ。最終的には法律や裁判所の判断を信じ、国民の信頼を得ることが最善の道だ」と強調した。
さらに「親・李在明派は非・李在明派の批判を受け入れ、党内の包容力を高めるべきだ」とも指摘し、「共に民主党の生命力は結局、包容性、多様性、そして民主性にある。共に民主党がキム・ギョンス前慶尚南道知事やイム・ジョンソク元文在寅大統領秘書室長のような人物からの批判すら受け入れられないようでは、党の支持率は上がらない」と述べた。
李代表の「実用主義路線」が「共に民主党」の理念を損なう可能性があるとの懸念も、非・李在明派の間で浮上している。民意に応じた柔軟な政策対応は必要だが、「進歩主義の価値」を捨ててはならないという指摘だ。
李代表は今年に入り、党の従来の立場を転換し、金融投資所得税の廃止や仮想通貨課税の延期を決定しており、さらに半導体特別法への支持を示唆するなどの姿勢を示している。
野党の大統領候補とされるキム・ドンヨン京畿道(キョンギド)知事は2月5日、MBNのYouTube番組『私は政治家だ』で、「共に民主党が進歩の価値を実用主義的に実現するのは正しいが、実用主義そのものが目標や価値になることはありえない」と強調した。
続けて「共に民主党が追求する正しい進歩の価値を第一に置き、それを実現する手段として実用主義的なアプローチを取るのは正しい。しかし、実用主義が目的になってはならない」と釘を刺した。
さらに、金大中(キム・デジュン)元大統領や盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の政治理念に言及し、「この2人の思想と価値を実現するために、実用主義的かつ現実的なアプローチを取ることが、私たちの進むべき道だ」と述べ、「共に民主党」の進むべき方向性を示した。
(記事提供=時事ジャーナル)
■“政治生命”の危機…司法リスクで転落する韓国の次期大統領候補、李在明代表
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