韓国の歴代政権が苦しめられてきた「人事スキャンダル」の警報が、李在明(イ・ジェミョン)政権にも点灯した。
オ・グァンス前大統領室民情首席が「名義借り不動産」疑惑などで任命からわずか4日で辞任したのに続き、李在明大統領の最側近であるキム・ミンソク国務総理候補者も「私的な債務」や「親のコネ」疑惑に巻き込まれているためだ。
政界では、大統領職引継委員会すら存在しなかった現政権が、独自の人事検証システムを補完し、国民の目線に合った形にすべきだとの指摘が出ている。
李在明政権で初の人事辞任者は、大統領室民情首席のオ・グァンス氏だった。オ・グァンス前首席は6月8日、ウ・サンホ政務首席、イ・ギュヨン広報疎通首席らと共に任命された。
しかし、その後、検事在職時代の名義借りによる不動産保有、高位公職者の財産公開の漏れ、貯蓄銀行オーナーとの名義貸し融資への関与疑惑などが浮上し、野党のみならず、与党「共に民主党」内からも不適切な人選だとの指摘が相次いだ。
これを受けて、オ・グァンス前首席は任命からわずか4日で辞意を表明した。
これを契機に、野党はキム・ミンソク候補者に対する疑惑にも照準を合わせ、攻勢を強めている。野党「国民の力」は人事聴聞会を前に、キム・ミンソク候補者が過去に私的な金銭取引に関与していた疑いを集中的に追及している。
加えて、キム・ミンソク候補者が息子の高校在学中に校内のクラブ活動で発案された法案を国会で共同発議したことについても、「親のコネ」に当たるとして問題視している。
これらの疑惑に加え、「国民の力」はキム・ミンソク候補者に関する10件の疑惑を列挙し、国務総理指名の撤回を求めている。
キム・ヨンテ「国民の力」非常対策委員長は6月18日、国会での政策セミナー終了後、記者団に対して「人事聴聞会の対象というより、捜査対象ではないかという思いがある」と述べ、指名の撤回を主張。ホ・ジュンソク「国民の力」報道官も論評で「偽りの左派が示す偽善と二重性を赤裸々に見せている。こうした人物が大韓民国の政権を担うことは許されない」と非難した。
しかし、李在明大統領はキム・ミンソク候補者に対する疑惑について、6月24日から25日に予定されている人事聴聞会で適切に説明されるとの見方を示し、特に気にする様子は見られない。
李在明大統領は6月16日、主要7カ国(G7)首脳会議に出席するためにカナダへ向かう専用機内で、記者団との即席懇談会を開き、「キム・ミンソク候補者の件は、私自身も本人にどういうことかを尋ねたが、本人としては十分に説明可能な疑惑にすぎないと話している」と明かした。
韓国における新政権の「人事受難史」は、今回が初めてではない。
かつて李明博(イ・ミョンバク)政権では、2008年2月に発表された第1次内閣の際に、ナム・ジュホン統一部長官候補者、パク・ウンギョン環境部長官候補者、イ・チュンホ女性部長官候補者らが人事聴聞会で「住民票の不正移転」や「子どもの兵役問題」などの疑惑により、最終的に辞退した。
朴槿恵(パク・クネ)政権下では、人事辞任の事例が最も多かった。キム・ヨンジュン国務総理指名者は、不動産投機と息子の兵役免除疑惑が浮上し、指名から5日で自ら辞退した。
また、2014年6月には、チョン・ホンウォン国務総理の後任として指名されたアン・デヒ候補者とムン・チャングク候補者も、それぞれ高額の受任と元官僚優遇疑惑、歴史認識問題で相次いで辞任した。「総理人事の残酷史」とまで言われたほどだった。その他にもキム・ジョンフン未来創造科学部長官候補者や、キム・ビョングァン国防部長官候補者などが自ら辞任した。
文在寅(ムン・ジェイン)政権も、人事の過程は茨の道だった。チョ・デヨプ雇用労働部長官候補者が飲酒運転や副業問題で自ら辞退し、アン・ギョンファン法務部長官候補者は婚姻届の偽造疑惑で辞任に追い込まれた。イ・ユジョン憲法裁判所裁判官候補者とパク・ソンジン中小ベンチャー企業部長官候補者も人事聴聞会の過程で様々な疑惑が浮上し、辞退した。
特に、チョ・グク元法務部長官の家族に関する私募ファンドや入試不正の疑惑は「チョ・グク事態」として政権に逆風をもたらし、就任から35日で辞任する事態となった。
尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権も出帆直後から人事辞任が相次いだ。キム・インチョル社会副総理兼教育部長官候補者をはじめ、チョン・ホヨン、キム・スンヒ両保健福祉部長官候補者が順に辞退した。
パク・スンエ元社会副総理兼教育部長官も、学制改革論争などにより任命から35日で辞任。さらに政権中盤にも、キム・ヘン女性家族部長官候補者などが相次いで辞任に追い込まれた。
政界では、権力の最側近を信頼して任命する慣行から脱却し、人事検証システムを強化しなければ、人事の惨劇は断ち切れないという指摘がある。特に今回の政権は、引継委員会もなしにスタートしたため、人事検証のための時間的余裕がなかったという評価もある。
そのため、李在明政権も内部的な「人事原則」をきちんと構築できていない可能性が高い。同じ条件で任期を開始した文在寅元大統領は、「住民票不正移転、論文盗用、脱税、兵役逃れ、不動産投機歴がある人物は起用しない」という「5大原則」を掲げていた。
市民団体「経済正義実践市民連合」もこの問題を指摘し、大統領室に対して人事検証の基準と手続きを透明に公開するよう促した。
同連合のチョン・ジウン市民立法委員長は「“自己検証”構造による盲点の発生の可能性、検証の専門性と情報アクセスの限界、検証結果の非公開慣行による国民の信頼確保の困難性、検証範囲からの重要かつ敏感な公職倫理項目の漏れの懸念、国会聴聞制度の資料不備の問題、繰り返される人事検証の失敗がシステム欠陥によるものかどうかなどを構造的に点検していく」と予告した。
(記事提供=時事ジャーナル)
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