今、韓国を動かしているのは誰か。
2025年という巨大な盤を支え、動かすその躍動的なエネルギーの流れを精緻に読み解くことができれば、時代の要求を把握できる。民意が示す時代の希望と課題も見いだせる。
ついにはシグナルとノイズを区別できるようになるのだ。したがって「誰が韓国を動かしているのか」という問いへの答えを探す過程は、時代相を映し出す営みといえる。
「韓国を動かす」とは、民意に最も速く敏感に、そして国民が最も強く望む形で反応するという意味だ。そこには韓国の希望や要求、課題が込められている。韓国を貫く堂々たる民意の流れと時代精神を体現する人物を見極めることが重要である所以だ。
『時事ジャーナル』が1989年の創刊以来36年にわたり、毎年「誰が韓国を動かすのか」影響力調査を続けてきた理由もそこにある。
2025年においても韓国経済でイ・ジェヨンサムスン電子会長の地位は依然として強力であった。
「誰が韓国を動かすのか」経済人または経済官僚部門で、彼は圧倒的な1位を記録。一般国民の83.4%、専門家の74.8%が「韓国を動かす経済人」としてイ・ジェヨン会長を指名した。これにより、彼は2016年から10年連続で1位を守ることになった。
イ・ジェヨン会長が不動の1位を記録する一方で、今年の調査では2つの注目すべき点が現れた。チェ・テウォンSKグループ会長が一般国民と専門家の両方で二桁の指名率上昇を示した点、そして専門家調査で前年6位だったイ・チャンヨン韓国銀行総裁が3位に上がった点だ。
イ・ジェヨン会長は「最も影響力のある経済人または経済官僚」部門の一般国民調査で83.4%という高い指名率を得た。前年(80.0%)より小幅上昇だ。専門家調査では前年(77.2%)よりやや下落したものの、74.8%を記録した。
2014年から実質的にサムスングループを率いてきたイ・ジェヨン会長は、今年長く続いた「司法リスク」を解消した。2016年末の国政壟断事件を皮切りに、サムスン物産・第一毛織の不当合併・会計不正事件まで、10年間、彼を縛っていた裁判がすべて終了したのだ。
去る7月17日、最高裁第3部は不当合併・会計不正事件上告審で、経営権承継のために様々な不正行為があったという疑惑をすべて認めなかった。
その間、イ・ジェヨン会長は国政壟断事件で500日以上服役し、不当合併事件では100回以上法廷に出廷した。オーナーの経営活動に対する制約が解けない間に、サムスンの競争力は低下した。グローバル経済の流れが刻々と変化し、新たな競争者が台頭するビジネス世界でリーダーシップの不在は企業価値下落のきっかけとなった。
2021年の8・15光復節特別赦免で司法リスクを一部解消し、2022年10月には会長に昇進して経営の歩幅を広げようとしたが、「超格差」を叫んだサムスンの姿を取り戻すのは容易ではなかった。
強みを見せていたメモリ事業ではHBM(高帯域幅メモリ)開発での出遅れにより、SKハイニックスに王座を明け渡し、2030年までに世界1位奪還を宣言したファウンドリー(半導体受託生産)事業では業界1位TSMCとの格差が拡大した。
しかし司法リスクを払い落とすと、サムスンも走り出した。苦戦していたファウンドリー事業で相次いで大型受注を知らせているのだ。サムスン電子は7月28日、テスラから165億ドル(約2兆4300億円)規模の契約を獲得。契約期間は8年に及ぶ。
イーロン・マスクCEOは、追加契約の可能性も示唆した。8月6日にはアップルが次世代先端半導体チップをサムスン電子に委託するとの報も伝えられた。業界ではこのチップをスマートフォン用イメージセンサーと推定している。サムスンがアップルに半導体を供給するのは、2015年以来10年ぶりだ。
業界では、サムスン電子がファウンドリー事業の大口顧客であるビッグテック企業と相次いで契約を成功させ、反騰の足場を築いたとの評価が出ている。ビッグテックとの協業は、業界の信頼を落としていた歩留まり率が一定水準まで上がったことを意味し、追加受注の可能性を高めるシグナルでもある。大規模な物量確保は業績改善にも肯定的影響を与えるとの見方が出ている。
財界では、イ・ジェヨン会長がトランプ政権の「関税」政策による危機を機会に変えているとの評価もある。来年稼働を目標に建設中のテキサス州テイラー工場の戦略的価値を前面に出し、アメリカ産半導体チップを必要とするビッグテック企業の関心を引きつけているのだ。
トランプ政権の企業への関税圧力が強まるほど、サムスン電子の存在感が高まる形だ。
また、経済使節団としての役割を果たしているとの評価もある。イ・ジェヨン会長は米韓関税協商局面で渡米し、政府交渉団を側面支援して相互関税を15%まで引き下げることに貢献したと伝えられている。
イ・ジェヨン会長に続き、「最も影響力ある経済人または経済官僚」2位に選ばれたのは、チェ・テウォンSKグループ会長だ。
チェ・テウォン会長は一般国民から48.6%、専門家から31.6%の指名を受けた。順位は前年同様2位だが、指名率は大きく上昇した。前年に比べ、一般国民調査で22.6ポイント、専門家調査で12.6ポイントの上昇だ。
背景にはSKハイニックスの好業績があると分析される。SKハイニックスは2024年、売上66兆1930億ウォン(約7兆円)、営業利益23兆4673億ウォン(約2兆5000億円)という史上最大の実績を上げた。
勢いは今年も続き、第2四半期売上22兆2302億ウォン(約2兆3600億円)、営業利益9兆2129億ウォン(約9800億円)を記録。四半期として過去最大の実績で営業利益率は41%に達した。証券界では年間売上86兆ウォン(約9兆1400億円)、営業利益37兆ウォン(約4兆円)を達成するとの見通しだ。
SKハイニックスの疾走はAIブームのおかげといえる。複雑なAI演算に必要なGPUにはHBMメモリの搭載が不可欠。現在HBM市場の最強者は、AI半導体の先頭を走るエヌビディアにHBMを供給するSKハイニックスだ。市場シェアは50~60%水準に達する。
2013年にHBMを初開発したが、HBM2ではサムスンに後れを取り、需要も少なく利益は出なかった。しかし次世代HBM開発に集中し、AI市場の拡大とともに結実した。持続的な人材確保と長期投資を続けてきたチェ・テウォン会長の信念が光った瞬間だった。
チェ・テウォン会長は2021年から5年連続で大韓商工会議所会長を務め、財界の声を代弁している。前任者とは異なり、少子化や成長率低迷など社会・経済的課題を提示し、政府と財界の架け橋となっているとの評価を受ける。
2024年、一般国民と専門家調査で3位だったチョン・ウィソン現代自動車グループ会長は、今年の調査でも一般国民24.2%で3位、専門家11.4%で4位を記録。前年より一般国民で10.8ポイント、専門家で2.0ポイント上昇した。
現代自動車グループはアメリカ、アジア、中東、アフリカなど市場多角化を通じ、今年上半期にトヨタグループ、フォルクスワーゲングループに次ぐ世界完成車販売365万台で3位に上った。
収益性では営業利益13兆ウォン(約1兆3800億円)を記録し、フォルクスワーゲンを抜いて2位。半期基準でフォルクスワーゲンを抜いたのは初めてだ。
アメリカの関税爆弾がグローバル完成車メーカーを直撃するなか、在庫消化や生産調整など迅速な対応で善戦したとの評価が出る所以だ。
ただし「15%」というアメリカ関税は負担である。これに備えチョン・ウィソン会長は今年3月、ホワイトハウスで31兆ウォン(約3兆2900億円)規模の現地投資を発表し、関税の影響を最小化しようと奔走した。さらにアメリカ国内3つ目の工場「現代自動車グループ・メタプラント・アメリカ(HMGMA)」の生産能力を拡大し、アメリカ市場を攻略する戦略を打ち出している。
今年の調査で躍進した経済分野の人物は、イ・チャンヨン韓国銀行総裁だ。
韓国のマクロ経済の一角を担うイ・チャンヨン総裁は、一般国民調査で14.8%、専門家調査で12.0%を記録。前年の一般国民6.2%、専門家5.0%と比べ大幅上昇した。順位も一般国民調査で5位から4位に、専門家調査では6位から3位へと躍進した。
背景には基準金利水準を決定する韓銀金融通貨委員会のトップであるという点がある。彼の一言が金融・株式・不動産市場に影響を及ぼすため、前年より注目度が高まったとみられる。
今後、イ・チャンヨン総裁の負担は相当と予想される。彼は高止まりする首都圏住宅価格と、それに連動して増加する家計負債を懸念してきた。同時に景気刺激のための流動性供給にも配慮しなければならない。解決困難な難題を両手に抱えている状況だ。さらに米連邦準備制度が年内利下げに踏み切る可能性が高まっており、イ・チャンヨン総裁の苦悩は一層深まっている。
ク・グァンモLGグループ会長は一般国民10.0%、専門家4.6%でいずれも5位に入った。前年に比べ一般国民では1ランク下がり、専門家では3ランク上昇。
チョン・ヨンジン新世界会長とキム・スンヨンハンファグループ会長は一般国民調査でそれぞれ6位(9.4%)、8位(5.2%)。専門家調査ではキム・スンヨン会長が6位(4.4%)、チョン・ヨンジン会長が7位(4.2%)だった。
経済官僚ではバトンタッチもあった。ク・ユンチョル経済副総理兼企画財政部長官は一般国民6.2%、専門家3.2%でそれぞれ7位と8位。一方、前年一般国民6位(5.4%)、専門家4位(6.2%)だったチェ・サンモク元企財部長官は順位圏から姿を消した。
また前年の一般国民調査で8位(3.4%)だった故イ・ゴンヒサムスン電子先代会長はトップ10から外れ、その代わりにイ・ブジンホテル新羅社長(3.4%)が9位に新規ランクイン。専門家調査では、チェ・スヨンNAVER代表(2.4%)、チョン・シンアKAKAO代表(2.0%)が9位と10位に名を連ねた。
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