K-POPアイドルグループ“多国籍化”の光と影④韓国人のいない「K-POP」はあり得るか?

2017年08月14日 K-POP
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【前回】K-POPアイドルグループ“多国籍化”の光と影③外国人メンバーの探し方と育て方

K-POPアイドルグループの多国籍化が続いている。

日本で話題沸騰中のTWICEに日本人(ミナ、サナ、モモ)と台湾人メンバー(ツウィ)がいるのは周知のとおりであるし、ほかにもBLACK PINK、miss A、GOT7など、多国籍グループは枚挙にいとまがない。

外国人メンバーの登用は、本欄でも説明したとおりK-POPの世界進出を視野に入れた戦略の一つだが、今やK-POPがアジアのみならずアメリカやヨーロッパでも注目され始めている状況を見ると、この現象は当面は続いていくことが予想される。

全員外国人のグループが登場

ただ、多国籍化が進むということは、相対的に韓国人メンバーが減るということでもある。

TWICEは9人中4人、GOT7も7人中3人と、外国人メンバーの比率は半数に迫ろうとしている。

(写真提供=SPORTS KOREA)TWICE

逆に言えば、過半数を超えないことが「K-POP」のアイデンティティを保つボーダーラインと考えられているのかもしれないが、外国人メンバーの比率はどこまで許されるのだろうか。

ヒントになるのは、最近、韓国で話題を呼んでいるボーイズグループ「EXP EDITION」だ。今年4月に韓国でデビューしたが彼らは、なんと4人中4人全員が外国人なのだ。グループ全員が外国人であるのはK-POP史上でも初めてのことだ。

メンバーはそれぞれアメリカ、ポルトガル、コロンビア出身で、アジア人の見た目をしているメンバーはいない。

ただ、その振る舞いはK-POPアイドルそのもので、韓国の芸能番組に出演した際は「アンニョンハセヨ!EXP EDITIONイムニダ!(です!)」とあいさつしており、彼らが韓国語で歌う姿には韓国メディアも「まったく違和感がない」(『中央日報』)と称賛を送っている。

2014年に結成された彼らの生みの親は、当時コロンビア大学大学院映画学科に通っていたキム・ボラという韓国人女学生だ。

彼女はK-POPと韓流に関する論文の執筆過程に、友人とともにK-POPアイドルグループをつくりあげるドキュメンタリー映画を撮影することを決心し、オーディションを実施。

そうして誕生したのがEXP EDITIONだった。彼らは2015年にアメリカでデビューすると、キム・ボラが想定していた以上に人気を獲得し、韓国進出を決めたのだという。

そんな彼らの活動について、ソウル大学言論情報学科ホン・ソクギョン教授はこう語る。

「韓国人がいなくてもK-POPグループをつくりだせるだろうという発想が可能になったのは、(K-POPが)ミュージックビデオや化粧の方法など、いくつかの枝葉を通じて具現できる一つのジャンルに接近している証拠です」

「K-POPではない」が90%

問題は彼らがオーディエンスに認められるかどうかだが、現時点では懐疑的な意見が多いのが実情だ。

世界韓流学会会長を務める高麗大学のオ・インギュ教授はこう分析する。

「人々は、単純にK-POPの音楽を期待しているのではない。ミュージックビデオをはじめ、体系的なシステムの中で生産される多様なパフォーマンスに期待しているのです」

つまり、そのパフォーマンスを外国人が行ったとしても、オーディエンスが期待する「K-POP」のイメージとはかけ離れてしまうということだ。

(写真提供=SPORTS KOREA)GOT7

特に、「肌の色と文化圏が近い人に対してはオープンだが、その境界線を越えた途端に閉鎖的になる」(『中央日報』)韓国社会では、白人たちで結成されたEXP EDITIONの条件は悪いと言わざるを得ない。

実際、『BuzzFeed』が韓国で行ったアンケート調査では、EXP EDITIONをK-POPグループとは認められないという回答が90%に上ったというデータも出ているのだ。

逆輸入の流れが与える影響

こうした状況を見ると、現時点では、TWICEやGOT7のように、外国人が半数を超えないメンバー構成が妥当な形なのかもしれない。

ただ、前出のホン教授はEXP EDITIONの活動について「文化的な相互交流や市場の拡大の面から見ても肯定的な現象だと言える」とも語っている。彼らがアメリカで人気を獲得し、K-POPの“逆輸入”という新たな流れをつくったことは評価できるということだ。

そして、今後はその逆輸入という新たな流れが、K-POPグループのメンバー構成にも影響を与える可能性はあるだろう。

その中でどのような多国籍グループが生まれ、どのような役割を外国人メンバーは担っていくのかは興味をそそるところだ。今後の動向に注目していきたい。

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