声優になる前はリポーターだけでなく、韓国版コミケやコスプレ・イベントなど、国内のあらゆるサブカルイベントの司会をほとんど担当。その上、彼女自身も韓国でコスプレ文化が普及した初期からコスプレイヤーとして活動している。
「昔は熱血コスプレイヤーでした。自分で衣装作りもやっていましたよ。今は衣装や撮影などは知り合いにお願いしていますが、私が直接見直してから公開しています」
意外かもしれないが、最近は韓国でもコスプレヤーが芸能人並みの人気を誇っている。
韓国で最も有名なプロ・コスプレチーム「Spiral Cats(スパイラル・キャッツ)」のTASHA(ターシャ)は、“美女コスプレイヤー”として韓国はもとより世界的にも知られており、ファンクラブ会員数だけで30万人近くいるといわれるほどだ。
そんな韓国のコスプレ文化において、ソ・ユリが披露したジャンナのコスプレ姿は伝説的だ。
ジャンナは世界的人気ゲーム『League of Legends』の登場キャラクターのひとりだが、彼女はその変身姿で“コスプレ女神”の愛称を獲得したのだ。
ソ・ユリもジャンナのコスプレが最もお気に入りだという。
「実は私、『League of Legends』のジャンナの声を担当していたんです。それで約5年前、遊び心で“1万件のいいね!が集まればジャンナのコスプレをします”とSNSに公約したんです。
ジャンナの衣装ってほぼビキニじゃないですか。私がそれを着るのは1年間ダイエットしてからだなぁと思っていて、いいね!1万件が集まるのに1年はかかるだろうという計算もあったのですが、1時間足らずでいいね!1万件を達成するという事態になってしまって、焦りました。
結局、一生懸命運動と食事制限をして、なんとか公約を守りましたけど」
あの美しいコスプレ姿にそんな隠されたエピソードがあったのかと意外だったが、聞けばその反響は韓国だけではなかったらしい。
「その写真が米国のコスプレ関連コミュニティサイトのメインに上がるなど、全世界に広まりました。今も忘れた頃にまた記事で見かけたりします(笑)」
近年、韓国ではコスプレ・イベントだけではなく、モーターショーやゲームショウといった見本市や展示会でもモデルやコンパニオンなどが着飾るコスプレ文化が定着しつつある。
ソ・ユリは世界にもその名が知れたコスプレイヤーの顔も持つわけだ。
そんなサブカル層からも支持されるソ・ユリは、日本についてどんな印象を持っているのだろうか。
聞けば普段から仕事やプライベートなどで日本の文化に触れる機会は多いが、実際に日本に行った経験は2回しかないという。ちょうどインタビュー前日に大阪旅行から帰ってきたところだったということもあって、話題は自然と旅の思い出話となった。
「大阪で球体関節人形のイベントがあると聞いて、友だちと行ってきました。ただ、雨が降っていていろいろと大変でしたね。
食べたかった料理も多かったのですが、イベントに気を取られて食べずじまい。コンビニでどら焼きを買って、“これがドラえもんの好物なんだねー”と話しながら食べたのが記憶に残っています」
日本でもさまざま刺激を受けたという彼女の夢は、意外にも素朴で本質的だ。
「実は、病気療養のためここ1年間休業し、復帰したばかりです。そこで思ったのですが、ただ地道に今のお仕事を続けられたらいいな、と。声の老化が最も遅いと聞きますが、まだ精力的に活躍する声優の先輩たちを見ていてもそう思います。
私も先輩たちのように、長く愛される存在になりたいですね」
メインカルチャーからサブカルチャーまで縦横無尽に活躍するソ・ユリ。彼女とのインタビューでふと思ったのは、韓国と日本の文化交流の面白さだ。そこに“カルチャーショック”はない。
あるのは、同じ“楽しみ”や“面白み”を共有できる同質感。そのプレゼンターの役割を務めているソ・ユリに、今後も注目していきたい。
文=慎 武宏
*この原稿はヤフーニュース個人に掲載した記事を加筆・修正したものです。