「より良い柔道のために、私たちが変えなければいけないところがあると考える」
勝者となったカナダ代表・出口クリスタ(28)の言葉だ。日本出身の韓国代表ホ・ミミ(21)は、残念な判定で金メダルを逃す結果となった。
韓国代表のホ・ミミは7月30日(日本時間)、パリ五輪・柔道女子57kgの決勝で出口クリスタと激戦を繰り広げたが、延長戦の末、3つの指導で反則負けを喫し、銀メダルを獲得している。
ホ・ミミは韓国女子選手としては1996年アトランタ大会のチョ・ミンソン(当時66kg級)以来、28年ぶりの金メダルを狙ったが惜しくも敗北。それでも、2016年リオ五輪のチョン・ボギョン(48kg級)以来、8年ぶりの韓国柔道勢のメダル獲得だ。2021年開催の東京五輪では、ノーメダルに終わっている。
ホ・ミミが決勝で相まみえた出口は、世界ランク1位。ホ・ミミと同様に、カナダ人の父親と日本人の母親の間に生まれ、日本で育った。今年5月の世界選手権決勝でも対戦したが、 当時はホ・ミミが延長戦の末に反則勝ちで勝利している。
出口とホ・ミミはスタートするやいなや鋭い攻撃を交わしながら、一進一退の攻防戦を繰り広げ、1分ほどで両選手に指導が与えられる展開に。ホ・ミミは内股と背負い投げを交互に試みながら果敢に攻めたが、偽装攻撃で指導を受け、不利な状況に。一方の出口は無理をせず、低い重心で踏ん張った。
そして延長戦開始後、ホ・ミミは背負い投げを試みた。それでも出口の鉄壁の守備を崩せなかったが、延長戦も守備的だった出口に指導が与えられた。
2つずつ指導が与えられたことで、本当の意味での延長戦が始まった。ホ・ミミは疲れた出口を相手に攻め続けたが、審判は突然、偽装攻撃を宣言。結局、ホ・ミミは3つの指導で惜敗し、金メダルを逃すこととなった。決勝戦の間、まともな攻撃も一度も繰り出せなかった出口が金メダルを首にかけたのだ。
ホ・ミミにとっては、簡単には納得しがたい敗北だった。規定上の誤りはないというが、誰が見てもホ・ミミが優勢で、出口は攻撃がまともにできない状況だったためだ。
試合後、ホ・ミミはミックスゾーンでのインタビューで、「とても残念だ。それでも、幼い頃から夢だった五輪で、太極マーク(韓国国旗)をつけて決勝に出られて嬉しい」とし、「私も偽装攻撃だとは知らなかった。試合だから仕方ない。これからはもっと考えてうまくやらなければならない」と話した。
韓国代表のキム・ミジョン監督も、「3度目の偽装攻撃への指導は、見方によって異なる可能性がある。相手がモーションを大きく使いながら動いたことが影響を及ぼしたようだ」として、「終始立ち上がりながら試合を繰り広げたが、最後に偽装攻撃を認めたことは理解し難い」と残念さを吐露した。
また、金メダルを手にした出口も手放しで喜べなかったようだ。反則勝ちが宣言されたあとも笑みを浮かべず、しばらくは空中を眺めていた。「カナダ柔道初の五輪金メダル」という歴史的な選手となったにも関わらずだ。
そんな出口は記者会見で驚きの発言をしている。判定の話が出てくると、「かなり難しい質問だ」と前置きし、「この3年間、柔道は大きく変わった。私は、柔道のために私たちが変えなければならないことがあると思う」と力を込めて発言したのだ。
続いて、「(最後の)ペナルティーについては特に言うことがない。正確にどんな状況だったのかよく覚えていない。しかし、柔道が次の段階に進むためには変化が必要な部分だと思う」と重ねて強調した。
この発言は、ホ・ミミを泣かせた偽装攻撃のルールを指摘したものと解釈できる。偽装攻撃については、ただでさえ判定基準が曖昧なうえ、消極的な試合運営を助長するという批判が多い。特に、試合を見守る観客が直観的に受け入れがたいという点でも問題が大きい。
“柔道宗主国”の日本でも同様の不満が出ている。29日に行われた男子73kg級準々決勝では、橋本壮市(32)がフランスのジョアン・バンジャマン・ガバ(23)に偽装攻撃の判定で反則負けを喫したためだ。橋本は両手で相手を掴んで攻撃を試みたが、指導を受け、ホ・ミミのように指導3つで反則負けが宣言された。その後、敗者復活戦から銅メダルを獲得している。
このような偽装攻撃問題で、日本国内では批判世論が爆発。懸命に攻勢をかけた選手が敗れ、逃げの選手が勝利するのは話にならないという声が主だ。『東スポ』は「今大会の柔道では日本選手にも不利な判定が続き、誤審騒動が大きく注目されている。韓国でも同じようだ」と伝えたほどだ。
日本の柔道ファンも、「理解できない判定が続出している。酷い」「今、柔道は見ていられない。柔道着を着たレスリングのようだ。武術に戻るためには五輪から外さなければならない」「ルール改正で柔道ではなくなった。審判も未熟だった」「審判がもっとよく見なければならない。あるいは両方に指導を与えなければならない」「これは柔道ではなく、Judoだ」などのコメントがSNSなどで散見される。
ただ、ホ・ミミは貴重な銀メダルを首にかけて誇らしく表彰台に上がった。一生懸命覚えた国歌を歌えず残念だとしたが、「天にいる祖母に金メダルを見せたかったが、とても残念だ。それでも、メダルを取った姿を見せられてとても幸せだ。今回の五輪で太極マークが誇らしいということをたくさん感じた。決勝まで進めてとても幸せだった」とし、「次の五輪では必ず金メダルを取る」と意気込んでいた。
(記事提供=OSEN)
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