韓国で、コンサートの鑑賞マナーが問題視されている。
きっかけとなったのは、11月19日にソウルの「芸術の殿堂」コンサートホールで行われたクラシックコンサートだ。
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団と韓国の世界的ピアニスト、チョ・ソンジンが共演した公演の最中に、直前の演奏を録音した機械音が鳴り響いたのである。
このハプニングは、複数の韓国メディアが報道。「コンサートホールで起きた“騒音テロ”」と表現するメディアまであった。
同公演では、メッセンジャーアプリ「カカオトーク」の着信音が鳴ったことや、曲をよく知っていることをアピールするために、演奏の終了後、即座に拍手をする観客のマナーも指摘されている。
もっとも、クラシックコンサートで“騒音テロ”が起きるのは、韓国では珍しいことではない。
例えば、2011年には、世界最古のオーケストラといわれるライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の訪韓コンサートで、40秒近くも携帯電話の着信音が鳴ったことがあった。
楽団は公演後、コンサートの企画会社に対して公式に抗議を行っており、その後は韓国公演を嫌っているという。
また、2013年には、ソウル市立交響楽団の公演で観客のマナーが問題となった。
マーラーの交響曲第9番の演奏中、突然、韓国のボーイズバンド“Busker Busker”のヒット曲『桜エンディング』が会場に響いたのだ。
これも携帯電話の着信音だったが、ネット上では、マーラーの交響曲第9番に『桜エンディング協奏曲』と別名が付けられるほど話題を呼んだ。
2014年3月に、トンヨン・フェスティバル・オーケストラのコンサート中に起きた出来事はさらにすごい。
オーケストラがユン・イサン作曲の『流動』の演奏を終え、指揮者が指揮棒を止めたその瞬間。
もっとも感動がこみ上げるそのタイミングで、客席から“着うた”が鳴ったのだ。
「オッパ、江南スタイル~」
会場には、爆笑が巻き起こったという。
ただ、意図せず鳴ってしまった携帯電話の着信音なら、まだマシなほうかもしれない。
韓国には、泥酔状態でコンサートを訪れる客もいるという。
ソウル市にあるLGアートセンターのハウスマネージャーを務めるイ・ソンオク氏はこう証言する。
「忘年会や新年会の一環として、食事会でお酒を飲んだ後に、団体で鑑賞に来る人々もいます。公演中に気分が悪くなり、(その場で)嘔吐する観客もいました」
そのほかにも韓国では、観客同士が大喧嘩を始めた事件も報告されている。
オーケストラではないが、ミュージカルの公演中に客席でクッキーを食べていた60代の女性を隣の観客が注意したところ、悪口の応酬が始まり、ついには警察が出動するほどの騒動になったらしい。
こうした現状があるだけに、日本の鑑賞マナーをうらやむ声も上がっている。
サントリーホールでコンサートを観覧した『国際新聞』政治部のイ・ソンジョン次長は、「日本の観客の態度はとても印象的だった」「騒音が聞こえなかったのは、純粋に観客のおかげだった」と評価しながら、韓国のコンサート会場がオーバーラップしてしまったと嘆いていた。
韓国のコンサート会場で繰り返されるマナー違反。
今後、冒頭のハプニングが起こった「芸術の殿堂」では、基本的なエチケットを綴った小冊子を大量に配布する予定だというが、はたして、韓国人の鑑賞マナーは改善されるだろうか。
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