日本の芸能界に訃報が続いている。つい先日には女優・竹内結子が自宅で死去したとのニュースが広がり、衝撃を与えた。
今年だけでも三浦春馬、濱崎麻莉亜、芦名星、そして竹内結子といった芸能人が自ら命を絶ったとされている。
芸能人の訃報が多いといえば、お隣・韓国を思い浮かべる人も少なくないだろう。2019年にも、少女時代とともにK-POPブームを巻き起こしたKARAのク・ハラがこの世を去り、大きなニュースとなった。
過去には『冬のソナタ』のパク・ヨンハをはじめ、チェ・ジンシル、チョン・ダビン、イ・ウンジュと、トップスターが自ら命を絶った事例も少なくない。
理由は、それこそさまざまだろう。
それこそ一人ひとり違うだろうし、断定的に原因を特定するのは故人に対する侮辱になるともいえる。
今や芸能人が“極端な選択”をするのは、日韓芸能界の共通の問題点となったが、そもそも日韓は自殺率が高い国として知られている。
韓国の2019年の自殺死亡率(人口10万人当たりの自殺数)は26.9人で、OECD加盟国で最も高い。日本の自殺率も14.9人で、OECDの平均11.3人に比べて高い数字となっている。
では芸能界に限らず、なぜ日韓は自殺が多いのか。思い出されるのは2年前、韓国自殺予防協会のオ・ガンソプ会長をインタビューしたときの言葉だ。
彼は韓国における自殺予防について、データとともにさまざまな話をしてくれたのだが、最も印象的だったのは、日韓で自殺が多い理由について述べた“私見”だ。
「韓国と日本には、“自殺を許容する文化”があると考えています。それどころか、自殺を美化するところさえある。例えば日本では以前、会社を倒産させた社長が責任を取って自殺するということがあったと聞きました。
一見、これ以上ないほどの責任を果たしたように思えますが、冷静に考えれば、その社長はまったく責任を取る行動をしていない。本当に責任を取るのであれば、新たな事業を起こすなどして会社を生かすか、社員の就職先を探すといった行動をするべき。自殺するなんて、無責任です。しかし“責任を取って死ぬ”という文化が成り立っています。
これは韓国も同じです。顕著だったのは、盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領が自殺したとき。生前はそれこそ全国民が彼を非難していましたが、死後は“どれだけ検察が追い詰めたのか”、“どれだけ新政府が弾圧をしたのか”と世論が180度変化しました。人が死ぬことで、態度ががらりと変わったわけです。
韓国と日本には、誰かが自殺をしたら“どれだけ苦しんだのだろうか”と同情する文化がある。極論すればそれは、自殺したことを認めてあげるような態度です。私はそういう文化が両国の自殺率が高い背景にあると考えています」
オ・ガンソプ会長は「あくまで私見」というが、思い当たる節がある。日本でも自ら命を絶った芸能人に対しては、憐みや思い遣りの声が集まる。そんな文化こそが、自殺が多い理由だという指摘だ。
だからこそオ・ガンソプ会長は、一人ひとりの意識の改革が必要だと強調した。
「“自殺は絶対にしてはいけないこと”。どんな理由があってもです。すべての人の意識がそのように変わってほしいというのが私たちの願いであり、目指すところです」
あまりにも突然で悲しい訃報が多い昨今、「自殺は悪である」という認識を持つことは難しい。それでも、そんな意識を変えていかなければ、今後も悲劇が繰り返されるのではないだろうか。オ・ガンソプ会長の言葉は、今になってさらに説得力を持って聞こえてくる。
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