韓国で、とある日本の記事が話題になったことがある。その記事の内容は「韓国人は“トンスル”を飲む」というものだ。
トンスルとは、人や動物の糞(韓国語でトン)で造ったお酒のこと。韓国ネット民はもちろん、韓国メディアも強く反発し、「日本メディアが“韓国人はトンスルを飲む”と侮辱」「“韓国人はトンスルを飲む”という日本の記事が騒動に」などと嫌悪感を隠さずに報じた。
関連する韓国メディアの記事を見ると、「(トンスルは)犬や鶏の糞で酒を造ったともいわれている。しかし、現代においてそのような酒を飲む人はいない」「結局、確実な事実がない内容が記事化された」などと論じている。
『TV朝鮮』などは、「韓国人も知らない奇異な話を、まるで韓国に広がっている文化のように紹介しようとする意図が見える」「日本の右翼はこういった話を、韓国人を侮辱するために使う」と露骨に非難するほどだった。
たしかに、現代の韓国人がトンスルを飲むことはないのだろう。しかしトンスルという酒があること自体は、どうやら間違いないようだ。
それについては、人気料理トークバラエティ『水曜美食会』に出演する料理コラムニストのファン・ギョイク氏が綴っている。
2003年9月6日の『週刊京郷』に寄せたコラムで、タイトルは「ありとあらゆる酒があるね」というもの。そのコラムでファン氏は、トンスルの存在についてこう明記した。
「昔から我が民族は酒を薬として利用してきた。薬の効果がある漢方や果物類、野菜類はもちろん、動物や鉱物なども酒にして飲んだ。いや、今もまだ飲んでいる。ヘビ酒なんて朝飯前だ。このような奇怪な酒のうち、最も極端な事例がトンスルだ」
ファン氏はトンスルの効果について、「打ち身で鬱血が生じたときに、マッコリに糞を一晩漬けて飲むと治るという」としている。民間療法のようなものなのだろう。
ただし、「健康な10歳以下の子供の糞であってこそ効果があるという」としており、「犬と鶏の糞からも薬酒を造る」と付け加えている。
そのほかにもチョン氏は、なんとも奇々怪々な酒を紹介している。
鹿の陰茎酒、牛の目玉酒、羊の胆のう酒、オケラの酒など動物関連のものに始まり、鍾乳洞の石を使った鐘乳石酒、恐竜の化石を使った竜骨酒、貝の化石で使った竜宮酒などもあるというのだ。
本当に実在するのか疑ってしまうほどだが、チョン氏は「これらの酒を少しずつ味見する機会があったのだが、意外なほど“おぞましい”香りはしなかった。甘かったり、少し妙な香りがしたりするくらいだった」と感想を述べている。
いずれにせよ、韓国の酒文化が想像以上に多種多様なことは間違いないだろう。
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