「雪の日にはチメクでしょ」
大ヒットした韓国ドラマ『星から来たあなた』(2013年)の中で、ヒロインを演じるチョン・ジヒョンがこう言う。それまでジワリと流行の兆しをみせていたチメクは、彼女の一言でその名を全世界に知らしめた。
「チメク」とは、「チキン」と「ビール(メクチュ)」の最初の一文字ずつとった略語。「チキンにはビールが合う」という多数の意見によって、今や“文化”のひとつとして定着した。
そもそも、韓国ほどチキンを愛する国が他にあるだろうか。
昔は誕生日やクリスマスなど、特別な日の食べ物だったチキンが、今や「チヌニム(チキン+様)」「一人でチキン1羽は基本」という言葉を日常的に耳にするほど、親しみやすい存在になっている。
「韓国人はサムギョプサルや参鶏湯(サムゲタン)を好むのではないのか?」と思うかもしれない。
ただ、それらとチキンが決定的に違うところは、デリバリーの可否だ。季節や場所にこだわらず、老弱男女誰もが楽しめるデリバリーのメニューとして定着したからこそ、チキンを愛しているわけだ。
韓国・公正取引委員会が2016年に発表した資料によると、全国に存在するチキンのチェーン店舗数は2万4453店。
統計にカウントされていない個人営業の店舗を合わせると、約4万店と推測されている。
全世界のマクドナルドの店舗数が約3万6300店舗と言われているが、韓国のチキン店舗数はそれをも上回るのだ。
韓国メディア『韓国経済新聞』が今年の3月17日に掲載した記事には、ソウル地域のチキン店は2002年に875店だったが、2017年には6.7倍増加した5762店と書かれている。東京に約3296軒あるというラーメン屋(情報サイト「都道府県別統計とランキングで見る県民性」)と比べてみても、「ちょっと多すぎ…」と思わざるを得ない。
ここ数年でチキンのチェーン店も続々と登場した。
現在、韓国でチキンのチェーン店を展開している会社は250社以上。
なかでも“9大チキンチェーン店”と呼ばれる「メキシカナ」「BBQ」「キョチョンチキン」「BHC」「グッネチキン」「ネネチキン」「トレオレ」「チョガチプ」「ペリカナ」は、激しい競争を繰り広げている。
ちなみに、ビックデータ分析会社ダウムソフトが2011年から現在までのSNSを分析した結果、「チキン」の関連ワードは「幸せ」だったらしい。
韓国人の“幸せ指標”を測定する手段にもなってきたチキン。韓国人の“チキン愛”は、当分止まりそうにない。
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