最近、韓国に行くたびに窮屈な気分になる。私だけではない。韓国の一部の人々も肩身の狭い思いをしている。ほかならぬ喫煙者たちだ。
韓国では現在、すべての居酒屋やカフェ内が禁煙。歩きタバコなどに対抗する禁煙区域も拡大しており、タバコの“値上げリレー”も続いている状況だ。
そもそも韓国は喫煙率が高い国として知られている。
韓国保健福祉部(「部」は日本の「省」に相当)によると、韓国成人男性の喫煙率は39.3%(2015年)。他国に比べると未だに高い数字だが、2014年の43.1%に比べると大幅に下がっていることがわかる。1998年以降、初めて30%台に突入したという。
それは2015年から韓国政府が繰り広げた“喫煙との戦争”の効果だろう。
まず、2015年は年始から大幅値上げが実施された。国産・海外産問わず全商品1箱2000ウォン(約200円)値上げされ、2700ウォン(約270円)だったメビウスも4700ウォン(約470円)となった。日本よりも高い金額だ。そして、カフェや飲食店内の“全面禁煙化”も実施。禁煙区域も拡大された。
値上げが実施される数週間前からは、当然のように喫煙者たちによる買い占めが起こり、警察沙汰の事件まで起こってしまうパニック状態になったという。
韓国政府が掲げる目標は「2020年までに喫煙率を20%台にする」というもの。
今年に入っても、6月末にタバコ箱に掲載する10つの警告画像を選定している。最近、その画像がネット上で話題となったが、喫煙で発症可能性が高いとされる肺がんをはじめ、口腔がん、喉頭がん、勃起不全(ED)などの患者の写真となっている。実際に確認してみたが、目を背けたくなるほど写真はグロテスクだ。
今年12月23日からタバコ箱に掲載されるそうだが、ここまでやるとは、韓国政府の本気度がうかがえる。
しかし、韓国政府が仕掛ける“喫煙との戦争”に持続的な効果があるのかは、今ひとつ疑問と言わざるを得ない。というのも、たしかに喫煙率は下がっているが、“一時的なもの”というデータが明らかになっているからだ。
実際に、調査機関『ニールセン・コリア』が7月20日に発表した調査結果によると、2016年度上半期の韓国国内タバコ販売量は353億969万1400箱。昨年の同時期より14%も増加したという。タバコの販売量は落ちていないどころか増えていることがわかった格好だ。
国家予算政策処が最近まとめた「2015会計年度総収入決算分析」報告書でも、2016年1月~3月の販売量は、2014年同時期の90%ほどまで回復している。国会予算政策処も今年のタバコの個人消費は増加すると見ているのだ。
さらに、韓国女性の喫煙率が下がっていないという指摘もある。
韓国女性の喫煙率はもともと低いが、2015年の喫煙率は5.5%。韓国政府が“喫煙との戦争”を必死に繰り広げているものの、昨年対比0.2%ポイントしか下がっていないのだ。男性の喫煙率が3.8%ポイントも下がっていることと比べても、いかに効果が薄いかがわかるだろう。
いずれにせよ、世界各国と同じく禁煙に舵を切っている韓国。一進一退の状況が続くのか、それとも韓国政府の思惑通りに喫煙率は下がっていくか。日本以上に政府の“禁煙キャンペーン”が厳しいだけに、喫煙者のひとりとしてどんな結果になるのか注目したい。
前へ
次へ