韓国では昨年11月から全国的な鳥インフルエンザ(Avian Influenza)が発生しており、養鶏場などでは過去最悪の殺処分が行われている。その影響で卵の価格が急騰し、庶民生活にも大打撃を与えているのが現状だ。
韓国で大問題となっている今回の鳥インフルエンザは、「高病原性鳥インフルエンザ(H5N6亜型)」。農林水産省によると、日本でも5道県7戸の農場で高病原性鳥インフルエンザが確認(12月27日現在)されている。
そもそも韓国の鳥インフルエンザは、冬になると中国から朝鮮半島にやってくる“渡り鳥”が原因だ。
韓国の農林畜産食品部は、今回の大規模な拡散の理由を感染した渡り鳥がさまざまな地域に同時多発的に現れたからだと見ている。気温が寒くなるとウイルスの生存期間が長くなり、消毒液が凍ってしまう場合もあって防疫が難しいという話もあった。
ただ、渡り鳥の渡来を防ぐことは不可能だろう。さらに韓国では2003年から鳥インフルエンザが多数発生しており、そこが日本と大きく異なる点だ。
2003年12月~2016年11月までに発生した鳥インフルエンザの発生件数を見ると、日本が32件となっているのに対し、韓国は112件だ。渡り鳥だけが原因でないことは、火を見るよりも明らかだろう。
殺処分される鳥の数も、日本と韓国には大きな開きがある。
昨年9月基準、韓国国内で飼育されている鶏とアヒルは1億6526万羽。現在までに2800万羽が殺処分されており、その数は全体の6分の1にも上る。過去最悪の被害だ。
しかも、とある専門家は「この拡散速度であれば5000万羽の殺処分も予想される」と話す。
韓国が2000万羽以上も殺処分しているのに対して、日本はわずか57万羽(同12月初旬時点)。日本は早期発見・早期通報、移動制限と清浄性確認の検査などの対策マニュアルが徹底されているわけだが、両国の差はそれだけではない。
韓国の専門家は日韓の違いについて、「廉価で大量生産するための密集飼育が主になっている韓国と(日本では)、飼育環境が違う重要な差がある」と分析する。
国際連合食糧農業機関(FAO)は、鳥インフルエンザが流行する原因を「工場式密集飼育(factory farming)」と指摘。
家畜を密集して飼育すると、ウイルスが一瞬にして広がるだけでなく、個々の家畜の免疫力が低下して疾病に弱くなるという。
韓国の養鶏場は、廉価で大量生産が可能な“密集飼育”がメインとなっている。
韓国の農林畜産検疫本部の資料によると、1平方メートルに鶏は9羽、アヒルは2~3羽を超えないことで固有の習性を守ることができるというが、そうはなっていないのが韓国の養鶏場の現実だ。事実、韓国国内でその規律を守る110カ所の養鶏場では、鳥インフルエンザがほとんど発生しなかったらしい。
韓国も“日本モデル”を導入しようとする動きを見せている。
しかし、「大規模な財政投入を通じて養鶏産業のパラダイムを変える決断が必要だが、議論は行われていない」(『中央日報』)のが現状だ。
過去最悪の大問題となっている韓国の鳥インフルエンザは、はたして自然災害なのか、“人的災害”なのか。いずれにせよ、早期対策が求められている。
(文=呉 承鎬)
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