韓国・慶尚北道(キョンサンブクド)の浦項(ポハン)で、走行中のタクシーから女子大学生が飛び降りて死亡した事件で、80代タクシー運転手の無罪が確定した。
2月18日、法曹界によると、最高裁第3部(主審:オム・サンピル大法官)は、1月23日に交通事故処理特例法違反(致死)の罪で起訴されたタクシー運転手A氏の無罪判決を確定した。
さらに、タクシーから飛び降りた女子大学生をはねて死亡させた運転手B氏の無罪も確定した。
この悲劇は2022年3月4日20時45分頃、浦項駅で女子大学生がA氏のタクシーに乗車したことから始まった。
車両のブラックボックス映像によると、彼女はタクシーのドアを閉めながら「○○大学まで」と目的地を伝えた。しかし、加齢による難聴を患っていたA氏はこれを正確に聞き取れず、「ハンドン大学ですか」と確認した。これに女子大生は「はい」と答えた。
ここから誤解が生じた。タクシーが意図しない方向に進むと、不安を感じた女子大生は「この道で合っていますよね?ねえ、運転手さん」と尋ねた。だが、聴力が低下していたA氏は反応しなかった。
さらに、A氏は制限速度である時速80kmを超え、時速109kmで運転するなど荒い運転をしていたため、彼女の不安はさらに募った。
実際に女子大生は死亡前、「タクシーが変な方向へ行く」「すごいスピードで走っている」「怖い」と、恋人にメッセージを送っている。
不安を募らせた彼女は、A氏に「運転手さん、降ろしてもらえませんか?」と尋ねた。しかし、A氏はまたもや返答をしなかった。
状況を誤解した女子大生は、誘拐されたと確信してタクシーのドアを開けた。驚いたA氏は「なにしているんだ」と言いながら急ブレーキをかけたが、彼女はすでに車外へ飛び出していた。
女子大生は道路に投げ出され、その後ろを走行していたSUV車にひかれ、命を落とした。
検察は、A氏に女子大生の死亡責任があると判断し、起訴に踏み切った。
A氏が全体的に乱暴な運転をしていたこと、乗客の様子を気にかけなかったこと、聴力が低下しているにもかかわらず、適切な補聴管理を怠ったことなどを理由に、A氏の責任を追及。また、SUV運転手B氏についても前方不注意と安全距離の維持義務違反があったとして起訴した。
しかし、裁判所は1審、2審、最高裁すべてでA氏に無罪を宣告した。
1審の裁判所は「A氏は浦項駅で乗車した時点から女子大生の目的地をハンドン大学と認識していた」とし、「A氏の立場では、女子大生が恐怖を感じ、時速80km/h以上で走行中のタクシーから飛び降りることをまったく予見できなかった」と判断した。
SUV運転手B氏についても、「事前に女子大生を発見し、事故を回避するのは難しかった」として無罪を言い渡した。
検察は判決を不服として控訴したが、2審でも無罪判決となった。裁判所は「A氏が難聴にもかかわらず補聴器を着用せず、女子大生の不安を増長させた側面はあるが、それでも運転手のA氏とB氏が女子大生の飛び降りを予見することは困難だった」と指摘した。
検察はさらに上告したが、最高裁も「原審に法律の誤認はない」として、A氏とB氏の無罪を最終確定した。
(記事提供=時事ジャーナル)
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