北朝鮮の非核化への意志を示すトランプ大統領、そのメッセージを“誤読”し混乱ばかり育てる韓国

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米トランプ政権2期目の発足から3週間を注意深く見ていると、既存の観念や現状を揺るがし、速度戦を展開している。

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1期目で「マッドマン(madman)理論」を駆使する姿を見てきた世界の人々は、再び同じようなことが起こるのではないかと不安を抱いている。

「自分が怒ったら誰も止められない」といった予測不能な危険人物として認識させ、相手の態度の変化を迫り、交渉の目的を達成しようとする。不確実性と曖昧さを好むのが特徴だ。

しかし、国家は合理的かつ理知的だ。審議と信頼性のある理論に基づき、政策対象の反応まで考慮する意思決定システムを備えている。プーチンのロシアであれ、習近平の中国であれ、金正恩の北朝鮮であれ、その例外ではない。

したがって国家は予測可能であり、それが国家と国際秩序を存続させる要因となる。このような文脈において、トランプの「不可測性」は実際には「可測的」と解釈するのが理性的だ。

トランプ、北朝鮮の非核化への意志を表明

1月20日のトランプの就任前後に出た北朝鮮の核関連の「発言」は、2期目の政策のシグナルであり、戦略的意図が込められている。特に3つの場面が目に留まる。

金正恩国務委員長(左)とトランプ大統領
(写真=シンガポール政府)2018年6月12日、シンガポールで首脳会談を行った金正恩国務委員長(左)とトランプ大統領

第一に、1月14日、ピート・ヘグセス国防長官指名者および就任初日に、トランプ大統領は北朝鮮を「ニュークリア・パワー(nuclear power)」と称した。

アメリカ国内の専門家らは、「これは北朝鮮が軍事力の一部として核兵器能力を持つ国家である現実を明確に認識するという意味であり、いかなる承認や容認でもなく、地位を付与するものでもない。核不拡散条約(NPT)における米・英・仏・中・露のP5核保有国(nuclear weapon state)とは明確に異なる概念」と解釈している。

1月28日、ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)は、1期目と同様に「北朝鮮の完全な非核化」の追求を再確認し、2月7日にはトランプが日本の石破茂総理との会談で、そのための断固たる意志を再び確認した。

第二に、1月15日、マルコ・ルビオ国務長官指名者は、金正恩委員長が核兵器を権力維持の保険として活用する状況において、いかなる制裁も核開発やその資源確保を阻止できなかったこと、そして北朝鮮がロシアに武器や兵力を提供し、朝鮮半島を超えた紛争に関与するまでに至ったことに注目し、対北朝鮮政策をより広範かつ真剣に見直すべきだと述べた。

これまでの失敗を省みるとともに、直面する危機を直視し、新たな解決策を模索する意図が読み取れる。

1月30日、トゥルシー・ギャバード国家情報長官指名者は、より実務的な立場を示した。対北朝鮮政策の優先事項は、北朝鮮の核による脅威の削減に集中すべきであり、「緊張を緩和し、衝突を防ぎ、長期的な解決のための条件を整えることが目標だ」と述べた。

第三に、トランプは就任当日、「私は金正恩と良好な関係を築いていた。私が戻ってきたことを歓迎するだろう」と述べ、北朝鮮沿岸部の膨大なリゾート開発の可能性に言及した。1月23日には金正恩を「賢い人物(smart guy)」と称賛し、再び連絡を取るつもりだと語った。

これは、1期目に行われた2度の首脳会談、1度の会談、そして27通の親書を交わした首脳外交の記憶を想起させるものだ。

バイデン前政権が「調整された実用的アプローチ(calibrated practical approach)」という対北朝鮮政策を打ち出すのに3カ月を要したことを考えると、トランプの政策を現時点で断定するのは時期尚早だ。

しかし北朝鮮の非核化という目標を堅持し、状況を管理しながら対話の場に引き出そうとする意図がうかがえる。バイデン政権との違いを明確にすることも、重要な要素となるだろう。

混乱の根源は韓国国内に

実際、混乱の根源は韓国国内にある。アメリカ発の発言がトランプの予測不能な性格と混ざり合い、過度に誇張される。希望的観測やドグマ、政派的な視点が絡み合い、雑音を生み出している。

韓国の戦略的価値は考慮されていない。

金正恩国務委員長(左)とトランプ大統領
(写真=シンガポール政府)金正恩国務委員長(左)とトランプ大統領

ある一派は、「ニュークリア・パワー(nuclear power)」という発言を北朝鮮の核保有を容認するものと受け止め、北朝鮮の非核化を非現実的で違和感のある言葉だとみなす。

北朝鮮の核能力が高度化し、ロシアと北朝鮮が接近するなかで、非核化を語ること自体が「金正恩に鼻で笑われる」と主張する。「北朝鮮の核放棄」はあり得ない前提とし、「北朝鮮の非核化」は道徳論にすぎないと切り捨てる。北朝鮮の核能力を過大評価し、制裁や抑止を無力としながら、韓米の対応能力を過小評価する。時間が北朝鮮側にあると考え、対話による平和への希望を抱いている。

同じ文脈で、別の一派は、韓米合同軍事演習の中止と、北朝鮮の核実験および大陸間弾道ミサイル発射の停止という「相互中止」の古い提案を持ち出す。米朝間の核軍縮を語り、核の凍結と制裁緩和を交換する「スモールディール(小規模合意)」を見込んでいる。

しかし、警戒を緩めれば北朝鮮が歩み寄るという確証はない。核軍縮は、核能力が拮抗し、相互に脅威となる国同士で成り立つものであり、それは北朝鮮の核保有を認める別の表現に過ぎない。また、一度解除された制裁を再び課すことは困難であることが考慮されていない。

最後の一派は、「トランプと金正恩による危険な核取引」の可能性を指摘し、韓国の核武装を主張する。しかし、それが実現可能か、実益はあるのか、移行期の安全保障や経済への影響に耐えられるのか、国論を統一できるのかといった複雑な要素を考慮せず、軍事バランスの維持を至上命題としている。

北朝鮮の核開発は70年に及ぶ。北朝鮮との核外交の30年は失敗だった。振り返れば、盲目的な平和主義や一時的な妥協、そして強硬一辺倒の対応が堂々巡りし、政策の振れ幅を大きくしてきた。

米朝および南北関係が互いに混乱を招いたこともあった。金委員長の不信を招き、アメリカの不満を買う結果となった。

北朝鮮の核問題に関する議論が健全であってこそ

NPT(核不拡散条約)体制の下で、北朝鮮が「核保有国」として認められることはない。最終的な(end state)非核化は交渉の対象ではない。

核軍縮や「双停止(相互中止)」といった雑音が積み重なると、北朝鮮が誤った認識を持つ可能性があるため、警戒が必要だ。

金正恩委員長の立場は厳しい。「敵対的な二つの国家」という表現は国内向けのものであり、韓国による吸収統一への恐れも内在している。輸出は封鎖され、為替レートは不安定だ。地方経済は存在せず、1万2000人の若い兵士の命をかけてロシアに依存している。

生存はできたとしても、成長は困難だ。核は安全保障や経済的な繁栄を保証するものではない。最終的に手を差し伸べる相手が韓米であることを、金正恩も理解しており、現在は関心を引くための行動を取っている。

トランプ政権2期目では、主要ポストと対北朝鮮政策を担うラインが決定され、彼らが内部の官僚や軍と議論を重ねるなかで、政策の重点を修正していくだろう。北朝鮮の核問題は、ウクライナ戦争や台湾海峡の緊張、ロシア・北朝鮮関係、中国・ロシア関係、米中競争が相互に影響を及ぼす複雑な問題だ。

4年間の任期は短く、やるべきことは多い。政策の変動性を抑え、継続性を高めることが求められる。

すでに構築された韓米同盟の一体型拡大抑止と、韓米日による安全保障協力は防衛の基本だ。対北朝鮮制裁の枠組みの隙間を一つずつ埋めていく必要がある。

また、北朝鮮の体制を保証し、繁栄を支援するような地域安全保障の枠組みを創造することも考えられる。もし米朝対話が成功するのであれば、韓国が「パッシング(passing)」されたとしても何の問題があるだろうか。

北朝鮮の核問題に関する議論が健全であってこそ、正しい政策が立てられるのだ。

(記事提供=時事ジャーナル)

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