韓国の最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表が「共に民主党は中道保守の立場」と発言したことをきっかけに、「党のアイデンティティ」をめぐる論争が政界を揺るがしている。
「共に民主党」内の非・李在明派は、「一夜にして党のアイデンティティを変えることはできない」「中途半端な主張は混乱を招くだけだ」と強く反発している。
さらに与党「国民の力」側からは「中道保守を訴える李在明は、国民の力に入党せよ」と皮肉る声まで上がっている。
最近、李代表が「我々は進歩(リベラル)ではない。今後、共に民主党は中道保守の立場を取り、右派の役割も果たすべきだ」と突然の方針を示したことで、「共に民主党」内では激しい議論が巻き起こっている。
特に次期大統領候補とされる有力な政治家たちは「悠久の歴史を持つ共に民主党のアイデンティティを、代表一人が勝手に定義するのは越権行為だ」(キム・ブギョム前国務総理)、「一度の宣言で共に民主党のアイデンティティを変えることはできない」(キム・ギョンス前慶尚南道知事)と批判を強めている。
これに対して李代表側は、過去の金大中(キム・デジュン)、文在寅(ムン・ジェイン)元大統領の「中道保守的な発言」を持ち出して反論を試みたが、党内の論争は収まる気配がない。
イム・ジョンソク元大統領秘書室長は2月21日、自身のフェイスブックで「共に民主党は中道保守政党ではない」と明言し、「(党のアイデンティティを変えることは)実用性の次元を超えており、代表が独断で決められる問題ではない。軽率な主張は混乱を招き、将来的に進歩勢力との連携を難しくする可能性がある」と警告した。
特にイム元秘書室長は、李代表について「自身が実際とは異なり、左派または進歩派として認識されることに不快感を覚えているようで、その不快感が“右寄り”への強迫観念を生み出しているようだ」と指摘し、「右寄りの路線が正解ではない」と強調した。そして、「今の共に民主党のリーダーシップに必要なのは、信頼感と安定感だ。分断された社会を統合する意志と能力を示してほしい」と促した。
一方、与党もこの発言を攻撃材料と捉え、「李在明叩き」に乗り出した。
「国民の力」のキム・ギヒョン議員は2月20日、自身のフェイスブックで「突然の寝耳に水のような李代表の“突飛な”発言が、国民全体を困惑させている」とし、「李代表の見え透いた“羊頭狗肉”(うわべが立派で中身が伴わないこと)に国民が騙されることはないが、百歩譲ってそれが本心なら、大いに歓迎する。李代表には、韓国唯一の中道保守政党である国民の力への入党を正式に勧める」と皮肉った。
キム議員は「つい先日まで全国民に現金をばら撒く左派ポピュリズム的な補正予算案を出していたのに、一夜にして“中道保守”を語るとは、よほど焦っているのだろう」と述べ、「自分が選挙に勝てば公職選挙法違反の裁判が止まるとでも思っているのか。冬の夜の儚い夢を見ている李代表にとって、魂を売ってでも生き延びたいという心境なのだろう」と痛烈に批判した。
さらに、「“ケッタル”(李代表の熱狂的支持者)に囲まれ、分裂を煽ってきた李代表を誰が中道保守だと考えるのか」と一蹴した。
ソウル市のオ・セフン市長もフェイスブックで「遅ればせながら、ようやく社会が進むべき方向に気付いたようで歓迎する」とコメントした。
オ市長は「もちろん、党内では“越権”、“非民主的”、“私党化”、“歴史無視”といった批判にさらされるだろうが、李代表には屈せず、一貫性を持って進んでほしい」と述べた上で、「ただし真の中道保守政党になるためには、いくつかの実践が必要だ」と注文をつけた。
彼は「まず、全国民に25万ウォン(約2万6000円)を配るような無分別な現金支給はやめるべきだ」とし、「民主労総(韓国の労働組合のナショナルセンター)の顔色をうかがうのではなく、企業が活動しやすい国づくりを推進するべきだ」と指摘した。
さらに「何よりも中道保守らしく、裁判には堂々と臨むべきだ」と強調し、「この3つを実践すれば、李在明式の“中道保守”の真意を認めよう」と述べた。
「国民の力」のチョン・ヨンウク議員もフェイスブックで「中道保守のコスプレはしないとしていた李在明が中道保守を名乗るなら、国民の力に入党すべきだ」とコメントした。そして中央選挙管理委員会の審査を経た後、「李在明、中道保守、国民の力に入党しますか?」というスローガンを掲げた横断幕を設置する予定だと伝えた。
(記事提供=時事ジャーナル)
■「昨日は『シエシエ』、今日は『アリガトウ』」親中・反日の路線を急転換した李在明代表
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