早期大統領選を前に、韓国の最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表が描く「実用外交」戦略が徐々に明らかになっている。
当初の親中路線から親米路線へと転換を図り、日本に対しても友好的な姿勢へと方針を変えるなど、同盟国に積極的なアプローチを展開している。
野党内では、これまでの尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権の「一方通行外交」との違いを打ち出し、国益を得られる可能性があるとの期待が高まっている。一方で、外交方針を急転換したとしても、同盟国の信頼を即座に得るのは難しいとする懸念の声も上がっている。
李代表は最近、アメリカに積極的なアプローチをかけ、外交路線においても「実用主義」を掲げている。
1月23日の新年記者会見では、「韓米同盟の強化」と「戦略的経済パートナーシップ」の重要性を強調し、「半導体、バッテリー、エネルギーなど主要経済分野で協力を強化し、揺るぎない貿易・投資パートナーとしての地位を確立すべきだ」と述べた。
また、2月3日の最高委員会議では、「急速にグローバル通商戦争が始まっている。国会に通商特別委員会を設置し、超党派で対応しよう」と提案した。 党としても、最大の同盟国であるアメリカとの結束を次期政権でも維持できるよう基盤を固める動きを見せている。
「共に民主党」は1月21日、トランプ政権2期目の発足を前に「韓米同盟支持決議案」(キム・ビョンジュ議員代表発議)を突如提出した。李代表自身も共同発議者として名を連ねた。
さらに翌22日、国会でジョセフ・ユン駐韓アメリカ大使代理と会談し、弾劾の政局下でも米韓同盟の維持を再確認した。特にトランプ前大統領に対しては積極的にアプローチを展開している。
国家情報院出身のパク・ソンウォン議員は、李代表を含む指導部の意向を反映し、トランプ大統領をノーベル平和賞候補に推薦したことを発表した。これは、トランプ政権1期目と文在寅(ムン・ジェイン)政権時代に米朝対話の仲介役を務めた経験を踏まえた推薦であると説明されている。
日本に対しても、これまでの強硬な対立姿勢から友好的な立場へと転換する動きを見せている。
李代表は昨年12月26日、水嶋光一駐韓日本大使と会談し、「日本への深い愛情がある」と発言。また、最近公開されたイギリスの週刊誌とのインタビューでも、「韓国は自由民主主義陣営の一員であり、日本との関係をより深め、韓米日3カ国の協力を継続することに異議はない」と述べた。
これは、過去に日韓の歴史問題を強く批判し、形成された「反日」のイメージを払拭する狙いがあるとみられる。
一方で、中国との関係については、以前より距離を置く動きを見せている。2023年6月にシン・ハイミン駐韓中国大使と会談して以降、李代表は中国との接触を控えている。
「共に民主党」関係者によると、昨年末、駐韓中国大使に戴兵氏が新たに任命されたが、現時点で会談の予定は立っていないという。これは、ジョセフ・ユン米国大使代理と任命直後に会談を行ったこととは対照的な動きだ。
また、かつて物議を醸した「シエシエ(謝謝=ありがとう)」発言についても釈明した。
李代表は「台湾海峡がどうなろうと、我々が気にする必要があるのか。まずは韓国の利益を優先すべきではないか」と述べ、「単に韓国が実用的な外交をすべきだという意味であり、国益を損ねるほど中国との関係を悪化させるべきではないという趣旨だった」と説明した。
これは、李代表が昨年の総選挙期間中、尹錫悦政権の対中外交方針を批判し、「中国にちょっかいを出すな。ただ『シエシエ』と言えばいい。台湾にも『シエシエ』と言えば済む」と発言したことが波紋を呼んだ件についての釈明とみられる。
李在明代表の政治路線の転換について、政界では意見が分かれている。
「共に民主党」内では、李代表が「実用外交」路線を通じて複数の大国と幅広い関係を維持し、最大限の国益を確保できるとの期待感が強まっている。
「共に民主党」の戦略担当の関係者は電話取材に対し、「トランプ氏も『MAGA(アメリカを再び偉大に)』政策の下で自国優先主義を採用している。李代表も同じ方向性で、最大限の国益を追求することが目標だ」と説明。さらに「尹錫悦政権の『一方的かつ屈従的な外交』とは明確に差別化されるだろう」と期待を示した。
一方で、過去に「親中」論争まで巻き起こした李代表が、一夜にして外交路線を転換したことが、はたして同盟国に受け入れられるのかとの懸念も出ている。
日本は当初からトランプ大統領の当選可能性を見越し、早い段階から与党・自民党がトランプ大統領と接触するなど、継続的な交流を続けてきた。
しかし韓国は、政府や国会の次元でトランプ大統領との交流の動きをほとんど見せなかった。そのため今後の貿易摩擦が本格化する局面で、韓国は不利な立場に立たされる可能性があるとの指摘もある。特に与党側は、こうした李代表の外交姿勢を「詐欺劇」「機会主義」「偽装路線」として激しく批判している。
与党「国民の力」のクォン・ソンドン院内代表は、2月3日の非常対策委員会で、「国際社会がこの事実を知らないはずがない。昨日までは『シエシエ』と言って、今日は『アリガトウ』と状況に応じて言葉を変える朝令暮改の外交は、国民と国際社会を欺くものに過ぎない」と強く非難した。
さらに「外交は短期的な政治的利益を得るための手段ではなく、国家の未来を左右する重要な原則だ」と断じた。
専門家らも、李代表が真の意図を示すには、「なぜ路線転換を行ったのか」という背景を、本人自らが詳細に説明する必要があると指摘する。
慶熙(キョンヒ)大学政治外交学科のソ・ジョンゴン教授は、電話取材に対し、「政治家が状況に応じて新たな立場を表明することは十分にあり得る。しかし問題は、李代表が外交政策の転換について、背景の説明をほとんど行わず、単に方針を一方的に打ち出している点だ」と批判した。
続けて「国民が知りたいのは、李代表が単なる選挙戦略として発言しているのか、それとも本当に信念を持って外交方針を転換したのか、という点だ」と指摘。その上で「李代表自身も外交的な素養を深め、具体的なビジョンを持って説明しなければ、国民の納得は得られない」と強調した。
また、「なぜ親中路線から転換し、韓米同盟を重視するようになったのか、その詳細な背景を国民に説明する必要がある」と求めた。
(記事提供=時事ジャーナル)
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