尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に対する弾劾訴追案が可決された後、日韓間の首脳外交は事実上の停止状態となった。
菅義偉元首相、中谷元防衛相、石破茂首相の訪韓が相次いで中止された。
混乱した政局が続くなか、昨年12月19日、石破首相はハン・ドクス大統領権限代行(当時)と電話会談を行い、日韓関係を維持・発展させる重要性を確認し、緊密な意思疎通を続けることを誓った。
岩屋毅外相も12月23日、チョ・テヨル外交部長官と電話会談を行い、北朝鮮の挑発の可能性への対応を含む日韓および日米韓協力の重要性を再確認した。
同月26日午後には、水嶋光一駐韓日本大使が「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表と会い、日本政府は国際社会の様々な課題に対応する上で重要なパートナーである韓国の状況を注視しており、「現在の戦略的関係下で日韓関係の重要性は変わらない」という立場を表明した。
しかし、12月27日にハン・ドクス権限代行に対する弾劾訴追案が通過し、チェ・サンモク副総理兼企画財政部長官が「権限代行の代行」という職務を担うという、韓国憲政史上初の事態が発生すると、日本の各メディアは韓国の不安定な状況を迅速に報道した。
日本のNHKは、韓国で副総理が大統領の職務を代行する「異例の事態」が発生したと伝えた。産経新聞は、ハン・ドクス総理に対する弾劾訴追が韓国の政治的混乱を加速させ、韓国経済および外交にも影響を与えることは避けられないと報じた。
毎日新聞は翌12月28日、チェ・サンモク副総理が大統領権限代行および総理権限代行を兼務し、「1人3役」を担うという「異常事態」が発生したと報道した。さらに、この混乱した状況で国政運営に支障が生じた場合、非難の矛先は第一野党である「共に民主党」に向かうだろうと指摘した。
同日、朝日新聞も、ハン・ドクス代行がバイデン米大統領や石破首相と電話会談を行った約1週間後に職務停止状態に追い込まれたとし、国際社会が韓国に対して「不信感」を抱く懸念があると報じた。
産経新聞は12月29日、「大統領代行を弾劾、韓国野党は愚挙に走るな」と題した社説で、韓国政治の混乱が「日本を含む(東アジア)地域の安全保障を阻害する」と主張し、朝鮮王朝時代の「党争」を現代で繰り返すべきではないと訴えた。
ハン代行の職務停止後、公式な立場表明を避け慎重な態度を見せていた石破首相は、12月30日、務安(ムアン)国際空港で発生したチェジュ航空旅客機事故の翌日、「深い悲しみを感じる」と述べ、遺族に慰問のメッセージを伝えた。岩屋外相も哀悼の意を表した。
韓国の政局混乱に加え、様々な事件・事故が相次ぐなか、朝日新聞をはじめとする日本メディアは、大統領および首相の職務停止、国防部・行政安全部長官の空席により、韓国政府の「指揮塔」が事実上不在となっている現状を指摘。「経済官僚」出身のチェ副総理が外交・安全保障や行政など、すべての分野で円滑に国政を運営できるか疑問の声が上がっていると報じた。
韓国が国政の空白で混乱するなか、日本はまもなく発足するトランプ政権との接点を作るため、準備を加速させている。
昨年12月中旬、安倍晋三元首相の妻である昭恵夫人がトランプ次期大統領のフロリダ州マール・ア・ラーゴ邸を訪問した。その直後、トランプは1月20日の大統領就任前に石破首相と会う意向を示し、日本政府は石破首相とトランプの早期会談を検討し始めた。
トランプ政権発足前に、石破首相とトランプの「個人的信頼関係」を構築する狙いがあるとされる。
しかし、日本政府は「(トランプの大統領)就任前では(首脳会談で)十分な成果を得るのは難しい」との理由から、石破首相の訪米日程をトランプの正式就任後である2月中に調整することを決めたと、複数の日本メディアが報じた。石破首相は「(トランプ)政権が発足してからしっかりと話し合うことにも意義がある。(トランプとの会談が)早ければ良いというわけではない」と述べ、トランプとの会談を通じて確実な成果を得たいとの意向を示した。
石破訪米に関する主要な議題の1つは、外交・安全保障問題になると予測されている。
石破首相は1月1日の新年の挨拶で、ロシアのウクライナ侵攻や北朝鮮の継続的なミサイル発射などにより、日本周辺の安全保障環境が悪化している点を指摘し、外交と安全保障を二本柱として国益を守ると強調した。
このように訪韓・訪米の日程が延期されるなか、石破首相は1月9日から12日までマレーシアとインドネシアを訪問する。
昨年10月の首相就任以来、石破首相がアジア太平洋経済協力会議(APEC)などの国際会議への参加目的以外で外国を訪れるのは、今回が初めてだ。マレーシアが2025年に東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国を務め、インドネシアがASEAN最大の人口を抱える国であることから、ASEANとの関係強化を目指す日本政府の意図が明確に表れている。
また、日本政府は中国との関係改善にも意欲を示している。
昨年12月25日、岩屋外相が北京を訪問し、李強首相および王毅外相と会談を行い、日中間で「建設的かつ安定的な」関係を構築する必要性を指摘した。石破首相も12月29日、日本のTBS放送に出演し、台湾問題などで日中関係が複雑な状況にあるなかで「日本の首相が中国を訪れることは非常に重要だ」と述べ、隣国である中国の指導者と緊密な信頼関係を築き、相互利益を模索したいとの意向を示した。
アメリカのトランプ政権発足を控えた新政権は、関税の引き上げや同盟国に対する防衛費分担増額要求を行うと予想されている。
韓国の国政混乱の中、米韓関係で不確実性が高まる一方で、日本政府は日中関係改善やASEANとの関係拡大を通じてリスクを分散させる「リスクヘッジ戦略」を取っていると見られる。
アメリカ第一主義を掲げるトランプ政権下では、アメリカの国際問題への関与が縮小するとの見通しが続くなか、日本国内では自由で開かれた国際秩序の維持に向けて、日本がインド太平洋地域の国々とアメリカとの間で橋渡し役を果たし、地域内の国際協力の雰囲気を醸成していく必要性が指摘されている。
(記事提供=時事ジャーナル)
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