一部の憲法学者が憲法裁判所の問題点を指摘…尹大統領の釈放、弾劾審判に与える“意外な影響”とは

2025年03月10日 政治 #時事ジャーナル
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尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が釈放され、保守派による憲法裁判所への圧力が激化している。

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これは、尹大統領が内乱首謀の容疑で起訴され拘束されたことに疑問を投げかけた裁判所の判断が、憲法裁判所の弾劾審判にも影響を及ぼす可能性があるとの見方が背景にある。「違法な捜査」、ひいては「違法な弾劾」という主張が強まっているわけだ。

内乱事態による弾劾訴追を受けた史上初の現職大統領の命運を決める憲法裁判所に対する負担がさらに増しており、尹大統領の弾劾審判の判決が延期される可能性も指摘されている。

一部の憲法学者たちが問題点を指摘

法曹界では、尹大統領の弾劾審判の判決時期を3月第2週と予測していた。過去の事例から3月13日から14日が有力と見られていた。

尹錫悦大統領
(写真=写真共同取材団)尹錫悦大統領

憲法裁判所は1988年の設立以来、計8件の弾劾審判を審理しており、そのうち7件は木曜日または金曜日に判決が下されている。朴槿恵(パク・クネ)元大統領は2017年3月10日、盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領は2004年5月14日と、いずれも金曜日に弾劾審判の結果を受けた。

両者は最終弁論期日からそれぞれ11日後と14日後に弾劾認容と棄却の決定を受けた。このため、尹大統領の弾劾審判の判決も最終弁論期日である2月25日から約2週間後の3月第2週、特に3月14日が取り沙汰されていた。

しかし、予想外の事態が生じた。裁判所が手続きの適法性に疑問を呈し、尹大統領の拘束を取り消したのだ。

大統領側は特に、内乱罪の直接捜査権を持たない高位公職者犯罪捜査処(公捜処)の捜査の問題点や、公捜処と検察が拘束期間を分けて使用した事実を違法なものと指摘した。

ソウル中央地裁・刑事合議25部(チ・グィヨン部長判事)はこれに関し、「最高裁の最終的な解釈と判断が出る前に、弁護人が指摘する事情のみで被告の拘束の違法性を軽率に判断するのは難しい」と述べた。そのうえで、「刑事裁判手続きが進行中のこの事件において、手続きの明確性を確保し、捜査過程の適法性に関する疑問を解消することが望ましい」とし、拘束の取り消しを決定した。

検察と憲法裁判所出身の法曹人らは、「裁判所の拘束取り消し決定と憲法裁判所の弾劾審判は別問題だ」と口をそろえる。しかし、捜査権の問題が争点となっている内乱罪が弾劾の主要な理由であることを考慮し、憲法裁判所が慎重な決定を下すために判決時期を再考する可能性も指摘されている。

これまで憲法裁判所の裁判官たちは、最終弁論期日後に評議を開き、事件を検討してきた。彼らは憲法研究官のタスクフォースによる草案を基に判決文を作成する過程を踏んでいる。徹底した保秘も維持されている。

こうした状況の中、裁判所の決定が憲法裁判所に負担を与える可能性があるとの見方が出ている。尹大統領側と保守派が「大統領の防御権の制限」など、憲法裁判所の拙速な審理と手続き上の瑕疵を指摘してきた点も影響を与えている。

一部の憲法学者もこれに加わった。大統領弁護団は憲法学者の意見書を尹大統領の釈放翌日の3月9日に公開した。これは3月7日に憲法裁判所に提出された資料である。

この意見書には、憲法学の権威とされる慶熙(キョンヒ)大学法学専門大学院のホ・ヨン碩座教授をはじめ、大韓憲法学会会長を務めた成均館(ソンギュングァン)大学法学専門大学院のチ・ソンウ教授、中央大学法学専門大学院のイ・インホ教授、国民大学法科大のイ・ホソン学長、江原(カンウォン)大学法学専門大学院のチェ・ヒス教授、東国(トングク)大学法科大学のキム・サンギョム名誉教授、梨花(イファ)女子大学法学専門大学院のチョン・ヒョンミ教授らが名を連ねた。

ホ・ヨン教授は、△弁論期日の一方的な指定△弾劾訴追の核心である内乱罪の撤回による訴追の同一性喪失、訴追理由の撤回に関する国会決議の不存在△大統領の反対尋問権の制限△イ・ジンウ、ヨ・インヒョン、キム・ヒョンテ、クァク・ジョングンの陳述、“ホン・ジャンウォンメモ”の信憑性問題など、10の瑕疵を指摘した。

3月8日、尹大統領の釈放を伝えるニュース
(写真=時事ジャーナル)3月8日、尹大統領の釈放を伝えるニュース

チ・ソンウ教授も、核心証人の証言と「ホン・ジャンウォンメモ」の信憑性に疑問を呈し、全面的な再調査を主張した。さらに、不十分な憲法裁判所の審理や内乱罪撤回の問題など、手続き上の瑕疵を指摘した。

そのうえで、「(弾劾認容の可否を判断する際には)非常戒厳が宣告された6時間ではなく、非常戒厳の宣告に至る過程やこれに対する判断、国民の受容性や国家・社会の安定性などを総合的に考慮すべきだ」と述べた。

イ・インホ教授も、内乱罪の撤回問題を指摘した。さらに、「(非公式かつ非職務的行為で弾劾訴追された過去の2人の元大統領とは異なり)尹大統領は『議会クーデター』と『外部勢力による体制崩壊』の差し迫った危機に対抗し、憲法システムを守るための憲法擁護の責務を果たした」と説明した。

イ・ホソン法科大学長、チェ・ヒス教授、イム・サンギョム教授らは、審理手続きの問題を指摘し、「憲法裁判所法第32条に違反し、捜査中の記録を送付させて証拠として使用し、反対尋問権を制限したことは、手続きの適正性を欠いた違法な手続きである」と主張した。

憲法裁判所法第32条は、「裁判、訴追または犯罪捜査が進行中の事件の記録については、裁判部が他の国家機関などに送付を要請することはできない」と規定している。

「裁判官の全会一致の見解形成」が遅れれば判決に影響

憲法裁判所が検討してきた資料も議論の的となっている。捜査機関の被疑者尋問調書や起訴状などの捜査記録だ。

改正された刑事訴訟法によれば、被疑者尋問調書は、当事者である被疑者または弁護人がその内容を認めた場合にのみ証拠として使用できる。しかし、尹大統領側は弾劾審判において、非常戒厳に関与したとされる人物の捜査記録が、当事者の同意なしに採用されたと問題を提起した。

捜査権の問題を間接的に提起した裁判所の決定は、さらなる議論を引き起こす要因となっている。内乱罪の直接捜査権を持たない捜査機関が違法に収集した証拠であるとする主張が提起される可能性があるためだ。

これは、尹大統領側と「国民の力」が指摘した問題の一つでもある。

憲法裁判所
(写真=共同取材団)憲法裁判所

憲法裁判所の関係者は、これについて3月10日、「高位公職者犯罪捜査処から直接憲法裁判所に送られた捜査記録はない状況」と述べ、「裁判所の決定が弾劾事件に影響を与えるかどうかは、最終的に裁判部の判断による」と説明した。

ただし、研究官出身の法曹関係者は、「憲法上、身体の自由に直接関係する刑事裁判と、大統領の罷免を決定する弾劾裁判は別の問題であり、拘束取り消しが直ちに弾劾の判断に影響を与えることはない」と前置しながらも、「憲法裁判所が世論を重視する場合、その判断材料となる可能性はある」と指摘した。

これだけではない。裁判官たちの意見が分かれることも、判決の時期に影響を与える要因となる。

憲法裁判所が「裁判官全員の一致した結論」を導き出すための議論を続ける可能性があるのだ。

現行法では、裁判官9人のうち6人以上の賛成があれば弾劾を認める決定を下せる。しかし現在、裁判官の1人が空席となっており、大統領弾劾のような重大な事件では、国論の分裂などの混乱を最小限に抑えるため、裁判官たちができる限り同じ結論を導き出そうとするのが法曹界の一般的な見解だ。朴槿恵元大統領の弾劾審判の際も、一部の裁判官が弾劾棄却の立場を取ったが、最終的には弾劾が認められた。

憲法裁判所は、最終判決が下されるまで厳格な保秘を維持している。裁判官たちは最終弁論期日後も協議を続けており、評議の内容が投票にかけられる評決手続きが完了しているかどうかについても、公には明らかにされていない。

(記事提供=時事ジャーナル)

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