私たちが知っているかつての“中国製”ではない…韓国市場を席巻する「Made in China」

このエントリーをはてなブックマークに追加

「中国製」が変わった。

【注目】「もう二度とごめんだ」中国人観光客が韓国にガッカリする理由

かつては安価で品質の劣る製品と見なされていたが、もはや昔の中国製ではない。

最新技術を搭載した中国の家電製品が韓国市場に本格的に定着しつつある。特に今年は、中国ブランドが韓国市場への本格的な攻勢を開始する「元年」となると予測される。

ロボロック(Roborock)、シャオミ(Xiaomi)、BYDなどの中国ブランドが製品発表会や韓国法人設立を発表し、市場でのシェアを獲得するだけでなく、「ファンダム(熱心な支持層)」を基盤に市場を拡大しようという自信さえ示している。

ハイテクを搭載した「Made in China」が、グローバル市場でも競争力を認められるようになったことで、中国製家電が韓国市場を席巻するのではないかという懸念も浮上している。

品質問題で物議を醸す他の中国製品とは異なり、中国製家電の韓国進出が危機感を呼んでいる理由とは何か。消費者が中国のハイテク製品を見る目を変えたのはなぜなのか。

「低価格製品」から「コスパの良い高品質」へ

最近、新婚家庭向けの家電を購入したキム・ミジョンさん(仮名、36歳)は、ロボット掃除機として中国ブランドのロボロックを選んだ。

キムさんは「ロボロックはロボット掃除機の分野では最も有名なブランドで、周囲から新婚家庭用家電として勧められて購入した」とし、「バッテリーの持ちも良く、性能も優れているため、満足度が高い」と話した。

ロボロック製品
(画像=Roborock)ロボロック製品

このように、冷蔵庫や洗濯機などの「婚礼家電」はすべてサムスンやLGを選ぶが、ロボット掃除機だけはロボロックを選ぶというケースが増えている。実際、ロボロックは新婚夫婦向けの百貨店イベントのブランドリストに名を連ねるほど、高い認知度を誇っている。

いわゆる「三大必須家電(ロボット掃除機、食器洗い機、乾燥機)」のうち、ロボット掃除機の分野では韓国ブランドの存在感が薄い。韓国の消費者は一般的にブランド認知度やアフターサービスを考慮し、価格差が大きくなければ国内ブランドを選ぶ傾向があるが、この分野では例外だ。

最近、ロボロックが発売した新型ロボット掃除機「S9 MaxV Ultra」の一般モデルは184万ウォン(約19万円)で、2024年にLG電子が発売した「ロボキングAIオールインワン(フリースタンディング)」(199万ウォン)や、サムスン電子の「ビスポークAIスチーム」(179万ウォン)とほぼ同じ価格帯だ。

価格差がほとんどないにもかかわらず、中国製ロボット掃除機を選ぶ理由は、その性能にある。韓国ブランドの製品とロボロックのロボット掃除機の機能を比較するレビューが、SNSでも相次いでいる。この傾向は数値にも表れており、2024年上半期のロボロックの韓国市場シェアは46.5%に達している。

特に、150万ウォン以上のプレミアム市場では65.7%のシェアを誇る。中国製品を見る目が「価格」から「性能」へとシフトしているのだ。

ロボロックは今年初め、「アーム付きロボット掃除機」を公開し、その技術力をアピールした。靴下やタオルなどの軽い物を持ち上げて掃除ができる「Saros Z70」というモデルで、年内に韓国市場での発売が予定されている。

中国の代表的な家電ブランドが韓国市場に食い込みつつあるなか、かつて「大陸の失敗」と揶揄された中国の技術力が、市場を揺るがす「大陸の革新」となるのではないかという危機感が高まっている。

この「大陸の失敗」という異名を生んだシャオミは最近、最上位モデルのスマートフォン「Xiaomi 15 Ultra」を発表した。グローバル価格はなんと228万ウォン(約23万5000円)で、サムスンやアップルの最上位モデルを上回る価格設定となっている。

「Xiaomi 15 Ultra」
(画像=Xiaomi)「Xiaomi 15 Ultra」

ドイツのカメラブランド「ライカ」との共同技術開発により、カメラ性能を向上させ、ディスプレイの輝度もGalaxyやiPhoneの最上位モデルを超えるレベルに引き上げ、プレミアム市場への本格参入を宣言した。

今年1月に開催された世界最大の家電見本市「CES 2025」では、韓国の主要企業関係者が「中国のハードウェアはもはや遜色ないレベルに達している」と、中国の技術力を直接評価する場面も見られた。

今年、韓国市場に進出した中国の電気自動車ブランド「BYD」の動きも、警戒感を呼んでいる。

コストパフォーマンスと技術革新の両方を強みとするBYDは、最近、韓国で小型電気自動車「ATTO 3」の販売を開始した。すでにグローバル市場で100万台以上を販売し、その商品性が証明された「ATTO 3」は、3000万ウォン(約310万円)台前半という競争力のある価格設定、充実した標準装備、TMAPやFLOなど韓国向けの特化サービスを搭載し、注目を集めている。

自動車関連のオンラインコミュニティでは「コストパフォーマンスに驚いた」「エントリー向け電気自動車としては他に選択肢がない」といった試乗レビューが続々と投稿されている。

BYDはテスラを抜いて電気自動車販売台数で世界1位を記録し、グローバル市場の勢力図を塗り替えている。エネルギー専門市場調査会社SNEは、「BYDはヨーロッパ市場などで価格競争力だけでなく、技術力を前面に押し出し、ブランド認知度を高めている」とし、「これは単なる販売拡大ではなく、電気自動車市場全体における競争力を最大化する戦略の一環だ」と分析した。

「ATTO 3」「DOLPHIN」「SEAL」
(写真=BYD公式HP)上から「ATTO 3」「DOLPHIN」「SEAL」

かつては低価格と大量生産を武器に海外市場を攻略していた中国ブランドが、「ディープテック(先端技術)」を武器に注目を集めているのだ。

この変化は、国家主導の強力な技術開発政策と豊富な人的資源が相まって生じた結果と考えられる。

韓国流通学会の顧問であるキム・イクソン東徳女子大学教授は、「かつては中国製品の品質が低いという認識が強かったが、最近では技術力が大幅に向上し、消費者が性能を重視する傾向にある」と指摘した。また、「中国政府の支援と規制緩和によって技術革新のスピードが韓国よりも速くなり、デザインの革新にも拍車がかかっている。さらに、SNS上で肯定的なレビューが増えていることから、消費者の意識にも変化が見られる」と述べた。

韓国大手eコマースを通じて本格的な市場攻略

ロボロック、BYD、シャオミ、エコバックス(Ecovacs)、TCLなど、中国の代表的なブランドが、アメリカに代わる新たな市場として韓国を注視している。ロボット掃除機、大型家電、スマートフォン、自動車など、カテゴリーも多岐にわたる。

シャオミは2024年末に韓国法人を設立したのに続き、1月からスマートフォン、テレビ、掃除機、空気清浄機、加湿器などを韓国市場に投入した。韓国での「ファンダム」を基盤に、市場を拡大する計画も発表している。3月10日には新型スマートフォン「POCO X7 Pro」の公式販売を開始し、コストパフォーマンスと高性能を前面に押し出した。

ロボロックは2月20日にソウルのパルナスホテルで「2025ロボロック・ローンチショー」を開催し、新製品を発表。エコバックスも2月5日の記者会見で、ロボット掃除機「DEEBOT X8 PRO OMNI」と「WINBOT」を韓国市場向けに公開した。

特に「直輸入(海外通販)」をする必要がなく、信頼性の高い販売チャネルを通じて購入できる点も、中国製品の販売増加につながっている。

シャオミの「POCO X7 Pro」は、クーパン(Coupang、韓国のeコマース)やネイバー(NAVER)ブランドストアでも購入可能だ。業界関係者によると、2019年からシャオミ製品の事前予約販売を行っているクーパンでは、シャオミ・コリア公式サイトを大きく上回る販売量を記録しているという。これは、割引特典や30日間の無料返品ポリシー、「安心ケア」システムの影響が大きい。クーパンが直輸入するTCLのテレビは、翌日設置サービスも可能となっている。

ロボロックやエコバックスなどの中国製ロボット掃除機の成長を支えているのは、デジタル・家電に特化した韓国eコマースのGマーケット(Gmarket)だ。

Gmarket
(画像=Gmarket)

Gマーケットの代表的なセールイベント「ビッグスマイルデー」では、ロボロックが「16回連続で単一製品販売1位」を記録するという快挙を達成した。2024年11月1日~10日に開催されたビッグスマイルデーでは、ロボロックの前モデル「S8 MaxV Ultra」シリーズの売上が153億7000万ウォン(約15億8800万円)に達した。

2024年5月のセール時には、ロボロックに次いでナーワルのロボット掃除機が売上2位を獲得し、エコバックスのロボット掃除機も個別商品ランキングで9位にランクインするなど、中国製ロボット掃除機が好成績を収めた。従来、中国製品や海外製品を購入する際の障害となっていた配送や設置、アフターサービス(AS)問題が、オンラインプラットフォームを通じて解決されつつあるのだ。

中国ブランドも、独自の「保証サービス」の提供を強化する傾向にある。

ロボロックは、全国11カ所の公式ASセンター、11カ所のロッテハイマート修理センターを含む合計22カ所のASセンターを運営している。また、全国のロッテハイマート315店舗でもASの受付が可能になった。さらに、来店が難しい顧客向けに宅配回収用の梱包箱を提供するサービスや、訪問回収サービスを開始するなど、利便性を向上させている。

これまでAS対応の遅さが批判されてきたシャオミも、直営センターの運営計画を発表し、問題を迅速に解決するとしている。

唯一の欠点は「中国製」?残る不安要素

販売戦略も多様化している。

シャオミは消費者との接点を増やすため、オフライン販売チャネル「Mi Store」を2024年上半期中にオープンする計画だ。韓国1号店は、汝矣島(ヨイド)のIFCモールか、三成洞(サムソンドン)のCOEXに設置されるのではないかとの予測が出ている。

さらに、「外国製スマホの墓場」と呼ばれる韓国市場での影響力を拡大するため、格安SIM事業者(MVNO)とも提携した。KTの格安SIM子会社であるKT Mモバイルと提携し、2年間月額2万1000ウォン(約2170円)で「Redmi Note 14 Pro 5G」モデルを実質無料で利用できる料金プランを発表した。

かつて韓国市場で苦戦したシャオミが、再び市場に挑戦し成功するのか注目されている。

しかし、中国製品に対する否定的なイメージは依然として根強い。「唯一の欠点は中国製」という表現が、それを如実に示している。

中国製品の技術力はグローバル市場でも認められているが、消費者の心理には長年にわたる不信感が根付いている。最近では、ディープシーク(DeepSeek)の「セキュリティ問題」が浮上し、中国製品を通じて個人情報が流出する可能性があるという懸念も加わった。

DeepSeek
(画像=Pexels)DeepSeek

特に不信感を加速させているのは、消費財分野での品質問題だ。アリババ傘下の「AliExpress(アリエクスプレス)」や「Temu(テム)」といった韓国進出したCコマース企業は、超低価格を武器に消費者を引きつけたものの、有害性や品質問題からは逃れられなかった。

文房具やアクセサリーから鉛、カドミウム、フタル酸系可塑剤などの有害物質が韓国の基準値を超えて検出されたほか、低品質な子供用玩具の安全性問題も指摘されている。最近では、アリエクスプレスで販売された一部のデジタルドアロックが、火災時に爆発する可能性があるという韓国消費者院の調査結果も発表された。

業界関係者は「中国製品に対する否定的なイメージが続く限り、シャオミやBYDといったブランドが韓国市場で大きな成果を出すのは難しい」とし、「中価格市場に食い込むことはできても、市場全体をひっくり返すのは容易ではない」と分析した。

現在、BYDの電気自動車「Atto 3」の納車が遅れていることも、同社に対する否定的なイメージを生んでいる。韓国政府は2024年から電気自動車の火災予防のため、バッテリー充電量情報機能を搭載した車両のみ、補助金の対象とする方針を打ち出した。しかし、「Atto 3」にはこの機能がまだ搭載されていない。

BYDは「1年以内にソフトウェアアップデートで対応する」と約束したが、韓国環境部がこの対応を認めなければ、補助金が削減される可能性がある。納車の遅れと補助金問題が重なり、中国EVに対する不信感がさらに強まる懸念もある。

オフライン店舗を活用し、消費者との接点を広げようとする中国企業の取り組みは、こうした否定的なイメージの払拭を目的としているとも考えられる。

前出のキム・イクソン教授は、「中国ブランドは、アフターサービスの改善やオフラインストアの開設などを通じて、韓国の消費者水準に合わせようと努力している。ただし、収益性を考慮しながら慎重に進めるだろう」と述べた。

また、「国内企業が中国ブランドに対抗するためには、技術・デザインの優位性を維持するための研究開発投資が不可欠だ。政府も中小企業支援や規制緩和を通じて、国内企業の競争力を強化すべきだ」と助言した。

(記事提供=時事ジャーナル)

「中国人は2人以上集まると…」“爆弾回答”した韓国のソウル交通公社が謝罪

日本ビールと中国ビール、韓国で明暗…「ノー・ジャパン」運動と“放尿ビール”事件を経て

「だから中国産は信用できない」キムチの“原産地”に対するディープシークの回答とは?

前へ

1 / 1

次へ

RELATION関連記事

デイリーランキングRANKING

世論調査Public Opinion

注目リサーチFeatured Research