中国による「限韓令」の解除の可能性が表面化し、韓国企業が再び中国市場に関心を寄せている。
最近、中国は韓国人観光客の誘致や韓国アーティスト関連イベントの開催に加え、ポン・ジュノ監督の映画『ミッキー17』も劇場で上映した。
政治・外交的な理由で流通が遮断されていた韓流コンテンツに対する規制が緩和されるなか、2017年以降、8年にわたり打撃を受けてきた流通業界にも、追い風が吹くのではないかという期待が高まっている。
3月25日、香港の『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』は「中国が韓国人観光客の呼び戻しやK-POPなどの文化コンテンツを受け入れながら、韓国に和解の手を差し伸べている」として、中韓関係の改善の可能性に言及。「中国が非公式に維持してきた限韓令を段階的に緩和する可能性がある」と報じた。
実際、中国は今年に入ってから韓国コンテンツや韓流文化に積極的な姿勢を見せている。
最近、上海ではK-POPガールズグループIVEのサイン会やTWICEのアルバムプロモーションイベントが開催された。ポン・ジュノ監督の『ミッキー17』も中国全土の劇場で上映中だ。
3月22日に東京で開かれた中韓外相会談では、両国間の文化交流を回復することで一致し、習近平国家主席も中韓間の文化交流拡大の必要性を言及した。
コンテンツ交流の再開によって段階的な市場開放が進むと見られるなか、化粧品、食品、ファッションなど関連産業全体にも期待が広がっている。K-POPや韓国ドラマが活性化されれば、それに連動して韓国製品にも注目が集まるためだ。
特に高物価・高為替レートなどで韓国の内需が冷え込むなか、世界最大級の人口を抱える中国市場が再び開かれる可能性がある。
中国政府は、THAAD(高高度ミサイル防衛システム)の韓国配備を受けて、2017年から韓国のコンテンツや製品に対して非公式な規制をかけ、韓国企業はその余波をもろに受けた。
代表的なのが、THAADの用地を提供したロッテだ。ロッテマートは度重なる抜き打ち検査を受け、相次いで店舗を閉鎖し、最終的には中国市場から完全撤退した。韓国製品不買運動も広がり、代表的なKビューティー企業であるアモーレパシフィックやLG生活健康、食品企業の営業利益も減少した。
限韓令以降、化粧品業界は海外販路の多様化戦略を取ってきた。アモーレパシフィックの場合、2024年の米州地域の売上(5246億ウォン=約538億3600万円)が中華圏の売上(5100億ウォン)を上回り、中国市場への依存から脱却したとの評価もある。
ただし、中国市場の巨大な人口を無視できないため、現地流通組織の構造的な再整備にも着手している。LG生活健康も高級ブランド「THE WHOO」を中心に市場を再攻略している。中国に初の海外生産拠点を設立予定の三養食品も、限韓令解除が追い風になる可能性が高い。
長期不況にあえぐ免税業界にも回復の兆しが見え始めている。
THAAD問題以降、韓国への訪問を断っていた「中国人団体観光客」の流入が再開されれば、売上の増加が見込まれるためだ。百貨店業界も、中国人観光客の需要が大きい高級ブランド、ファッション、化粧品分野で特需が期待されている。
業界関係者は「中国は14億人を抱える巨大消費市場であり、これまでの規制の影響も大きかった。中国で韓国ドラマやK-POPなどのコンテンツが拡大すれば、自然と韓国文化への関心も高まり、ポジティブな影響が出る可能性が高い」としながらも、「中国も内需の低迷が長期化しており、すぐに実績が急回復するとは限らない」と語った。
中国経済の不調や、自国ブランド保護の姿勢が続いている現状から、「全面解除」ではなく「部分的な雪解け」にとどまる可能性があるという。
実際、限韓令の解除に対する期待は過去にも何度か浮上してきた経緯があるため、慎重な見方もある。それでも最近の中国は、内需の刺激と外資誘致を重点課題に掲げており、米中対立が長期化するなかで、韓国との対立を戦略的に管理しようとする姿勢が見られる。
外資系企業や民間企業への規制緩和策(外資安定行動方案)を打ち出し、中韓投資協力委員会なども再稼働していることから、今回は状況が異なるとの見方も出ている。
韓国貿易協会国際貿易通商研究院は、3月23日に発刊した『限韓令解除の動きと我々の対応戦略』という報告書で、「限韓令はもともと公式な規制ではなかったため、政府が公式に解除を宣言するという形ではなく、民間レベルの交流拡大という形で現れる可能性が高い」と予測した。
韓国流通学会の顧問である東徳女子大学のキム・イクソン教授は、「限韓令の解除は食品・美容業界の成長を後押しし、すべての韓国企業にとってチャンスとなり得る」とし、「特に国家という境界よりもコストパフォーマンスが購買力を左右する今の流通市場において、製品力はあるが販路がないスタートアップや、中小企業にとっても中国市場への進出が知名度向上の足がかりになるだろう」と述べた。
(記事提供=時事ジャーナル)
■“韓国人立ち入り禁止”を2度も実行した日本の神社、再び…「不敬行為」で観光客お断りに
前へ
次へ