中国の工場で撮影された高級ブランドなどの原価を暴露する動画が、アメリカのオンライン上で急速に拡散している。
4月16日、動画共有プラットフォームTikTokやソーシャルメディア「X(旧Twitter)」などSNSでは、エルメス、ナイキ、ルルレモンなど有名ブランド品の製造原価を公開する動画が広まっている。
4月13日には「X」で超高級ブランド・エルメスのバーキン・ケリーの原価が1395ドル(約19万8000円)である一方、実際の販売価格は3万8000ドル(約539万6000円)に達するという内容の動画が公開され、780万回の再生数を記録した。
また、別のTikTokインフルエンサーは、「アメリカで100ドル(約1万4200円)以上で販売されているルルレモンのヨガレギンスは、中国の工場では実際には5~6ドル(約710~850円)で製造されている」と暴露した。
これに対してルルレモン側は、「中国本土で生産される完成品は全体の3%に過ぎない」とし、「正規のレギンスはルルレモンの店舗と公式ウェブサイトなどでのみ購入可能だ」と直接釈明に乗り出した。
主に中国の工場で撮影されたこれらの動画は、世界第2位の経済大国である中国で、高級ブランド品などがどのように生産されているのかを暴露することを目的としていると、ブルームバーグ通信は報じた。これらの動画は真偽の確認もないまま急速に拡散しており、中には数百万回以上再生されるなど、その波及力を示している。
これらの動画は単なる暴露にとどまらず、実際の購入を誘導するマーケティング手段としても活用されている。多くのアカウントがウェブサイトのアドレスや連絡先を一緒に公開し、「我々に直接連絡すれば、信じられない価格でこれらの製品が購入できる」と宣伝している。これは、中国のブランドOEM(委託生産)企業がTikTokを新たな流通経路として開拓しようとする戦略だとの見方も出ている。
さらにアメリカのドナルド・トランプ大統領が火をつけた関税戦争を批判する世論を、アメリカ国内で刺激しようとする意図もあるのではないかという観測もある。最近、トランプ大統領が中国に対して145%に達する高率関税を追加で課したことで貿易摩擦の緊張が高まり、これらの動画が登場したためである。
併せて短期間で暴露動画が急速に拡散したのは、アメリカの消費者の間でも高関税政策による価格上昇への懸念が高まっていることを示しているとの分析もある。現行の関税政策に対する各国の反発と同様の反応が、アメリカ国内の消費者からも出ているのだとブルームバーグは指摘している。
(記事提供=時事ジャーナル)
■日本ビールと中国ビール、韓国で明暗…「ノー・ジャパン」運動と“放尿ビール”事件を経て
前へ
次へ