「憎たらしいが偉大すぎる」韓国が抱くイチローへの愛憎

このエントリーをはてなブックマークに追加

「彼のことはオリックスで200本安打を達成したときから見てきましたが、正真正銘の“天才”ですよ。思い通りにボールを投げることができる者は多いが、思い通りにボールを打ち返せるバッターは、イチローしかいない」

キム・ヨンジュンは“スカウティングの達人”とも言われている。多数の球団でスコアラーや戦略コーチを務め、第1回WBCでは韓国代表スカウトとして日本代表の分析を担当した。当然、イチローに関しても過去のデータや資料映像を分析して、対策を練ったという。

「通常ならインサイドの高めとアウトサイドの低めを攻めるのがセオリーですが、イチローにはあえて内角、外角ともに高めにボールを集めるよう指示しました。もともと本塁打を狙ってくるタイプではないし、ボテボテのゴロでも内野安打にしてしまう足の速さがあっただけに、高めにボールを集めてレフトフライで打ち取ろうというイメージでした」

完璧に封じることはできなくとも、最低限に抑えられる勝算はあった。

確信を持ったのは、大会前にヤフードームで行われた日本代表対12球団選抜のエキシビションマッチ3連戦を視察したときだったという。

「試合前のバッティング練習も、三塁側のカメラマン席からチェックしたんです。頭とへそが動かず、ヘッドもしっかり残したまま、左胸をピッチャーに見せることなくスイングしていましたが、体の重心がいつもよりも前に出すぎている印象を受けました。インパクト時の顔の表情もどこか苦々しい。調整に遅れ、自分のバッティングができていないようでしたね」

その見立てが東京での第1ラウンドやアメリカでの第2ラウンドでは見事に的中。イチローは韓国戦2試合で9打数2安打に止まった。

2006年WBCでのイチロー(写真=SPORTS KOREA)

「口だけ一流のイチロー」「30年発言の厄運」

逆に韓国は日本戦2連勝。キム・ヨンジュンは第1ラウンド終了後、「今のイチローなら、ど真ん中でも易々とヒットにはできないはず」というレポートを首脳陣に提出したという。

「そう言い切れるほどに、大会序盤のイチローは彼らしくなかった。調整の遅れもさることながら、原因はメンタルにもあったと思います。自分がジャパンをリードしなければならないという自覚が気負いになり、その心理的重圧があの天才的な感覚を狂わせたのでしょう」

そんなイチローの不振を嘲笑うかのこどく、当時の韓国メディアの記事にはイチローを露骨に揶揄する見出しも多かった。

前へ

2 / 4

次へ

RELATION関連記事

デイリーランキングRANKING

世論調査Public Opinion

注目リサーチFeatured Research