Kリーグで活躍する日本人選手のなかで、今、最もその評価を高めているのはFCソウルでプレーする高萩洋次郎だろう。
ウェスタン・シドニー・ワンダラーズ退団後、2015年6月にアジア枠選手としてFCソウルに加入した高萩は昨季、7月25日の仁川ユナイテッド戦でKリーグ・デビュー。移籍直後は体の動きも鈍くコンディションも万全ではなかったが、徐々にKリーグへの適応を見せ、3試合目の釜山アイパーク戦(8月19日)で初ゴールを決めた。
そのときに見せた“相撲セレモニー”は、FCソウルのサポーターたちの間でも話題になった。彼がウェスタン・シドニー時代にチームメイトと見せたパフォーマンスを、Kリーグ初ゴールを決めた釜山アイパーク戦でも披露し、その動画がネットにもアップされたほどだ。
そんな高萩が韓国でもその名を轟かすキッカケとなったのは、FAカップだった。
FAカップ準決勝・蔚山現代(ウルサン・ヒュンダイ)戦では1得点1アシストを記録。FCソウルを2年連続決勝に導く活躍を見せ、FAカップ準決勝の“マン・オブ・ザ・ラウンド”に輝いた。10月27日に行われたFAカップ決勝メディアデーではFCソウルのチェ・ヨンス監督ともにチームを代表して記者会見に出席し、その様子が多くのメディアで取り上げられた。韓国のサッカー専門誌『Four Four Two KOREA』のホン・ジェミン編集長も言う。
「FA準決勝では先制点となるミドルシュートを決め、決勝点もアシストする大活躍だった。蔚山には同じ日本人の増田誓志もいて記者たちの間ではひそかに“日本人MF対決”にも注目が集っていたが、より強い存在感を放っていたのは高萩だった。完全にFCソウルに欠かせぬキーマンになっている」
そして迎えたFAカップ決勝戦。FCソウルは仁川(インチョン)ユナイテッドを3‐1で下して17年ぶりのFA制覇を成し遂げるが、その立役者も高萩だった。
高萩は前半33分に先制点を決めてチームに勢いをつけたのである。そんな高萩の活躍は高く評価され、FAカップ大会MVPにも輝いている。日本人選手が韓国サッカー界の公式大会でMVPに輝くのは史上初のことだ。
2016年シーズンも高萩はFCソウルの“中盤の要”として確固たるポジションにある。3月1日にはACLで古巣のサンフレッチェ広島と対戦し、素晴らしい活躍も見せた。
そんな高萩に韓国メディアがつけた修飾語が“パス・マスター”でもある。前出のホン・ジェミン編集長もこう絶賛する。
「とにかくそのビルドアップ能力が光っている。FCソウルのGKやDFもまずは高萩にボールを預けようと意識していると話していた。FCソウルの攻撃は高萩から始まると言っても過言でない」
今季はKリーグ制覇とACL優勝を目標に掲げている高萩。Kリーグで日本人選手の威力を見せつけてくれるはずだ。
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