大谷翔平の助言が選択に影響を与えたというが…24歳のキム・ヘソン、なぜドジャースに?危険な“賭け”

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韓国のプロ野球選手キム・ヘソン(24歳)がアメリカ・メジャーリーグへの進出に成功した。

【注目】ドジャースの優勝を導いたのは大谷ではなく、韓国系選手だった

キム・ヘソンは1月4日、ロサンゼルス・ドジャースと3年総額1250万ドル(約19億7000万円)の保証契約で合意した。ドジャースが2年のオプションを行使すれば、総額は5年2200万ドル(約34億7000万円)に達する。

韓国プロ野球KBOリーグの打者によるポスティングシステムでのメジャー進出は、2015年のカン・ジョンホ(ピッツバーグ・パイレーツ)、2016年のパク・ビョンホ(ミネソタ・ツインズ)、2021年のキム・ハソン(サンディエゴ・パドレス)、2024年のイ・ジョンフ(サンフランシスコ・ジャイアンツ)に続き5人目であり、すべてキウム・ヒーローズ所属選手だ。

選手契約の20%を移籍金として受け取るヒーローズは、累積移籍金収入が4500万ドル(約71億円)に達した。

ドジャースの主力二塁手トレードはキム・ヘソンに有利

ドジャースがキム・ヘソンを選び、キム・ヘソンがドジャースを選んだことは、どちらも驚きだった。ドジャースは競争が最も激しいチームであり、キム・ヘソンにはいくつかの疑問点があった。

キム・ヘソン
(写真=OSEN)キム・ヘソン

キム・ヘソンのエージェントは大谷翔平を看板選手とする「CAAスポーツ」だ。CAAによると、キム・ヘソンはアメリカで大谷と共にトレーニングしながら真剣な会話を交わし、大谷の助言が選択に影響を与えたという。

ロサンゼルス・エンゼルスの提示した総額はドジャースを上回ったが、保証額はドジャースのほうが多く、最高のチームで最高の選手たちとプレーしたいというキム・ヘソンの意向でドジャースを選んだとされる。

メジャーリーグ挑戦では、契約金額が重要だ。年俸に比例して出場機会が与えられるからだ。カン・ジョンホの平均年俸275万ドルやパク・ビョンホの300万ドルは、彼らを獲得したピッツバーグやミネソタにとってはかなりの金額だった。

しかしミネソタでは1年後にGMが交代し、新GMはパク・ビョンホに出場機会を与えなかった。これはパク・ビョンホの失敗が前任GMの責任となるためだ。4年2800万ドル契約を結んだキム・ハソンは、年俸700万ドルを受け取り、4年間で8700万ドル相当の活躍を見せた。

キム・ヘソンの平均年俸417万ドルは、メジャーリーグ選手の平均年俸(450万ドル)とほぼ同じであり、多くのチームでは安定した立場を得られる。しかし、ドジャースでは事情が異なる。エンゼルスの平均年俸は520万ドルで、キム・ヘソンはその中で10位に位置するが、ドジャースの平均年俸は900万ドルであり、キム・ヘソンはチーム内で20位にとどまる。主力選手として保証されるわけではない。

キム・ハソンは4年契約を結び、最後の2年間はマイナー拒否権を保証された。1年目は守備で優れた活躍を見せ、2年目は打撃面で成長したため、マイナー降格の心配はなかった。対照的に、アメリカで華々しくデビューしたイ・ジョンフは6年間、すべて保証された。

一方、キム・ヘソンには拒否権の保証がない。別のチームであれば、400万ドルの年俸を投じた選手に最初から出場機会を与えるだろうが、ドジャースはそうしたチームではない。

ドジャースがなぜキム・ヘソンと契約したのか。

1998年のバンコクアジア大会で台湾の陳金鋒がパク・チャンホから本塁打を放った後、ドジャースに入団したことがある。2024年3月、ドジャースはメジャーリーグのソウル開幕戦を控え、韓国代表チームと練習試合を行ったが、この試合でキム・ヘソンはボビー・ミラーの時速156kmの速球を捉え、本塁打性の二塁打を放った。この時からドジャースはキム・ヘソンに注目し始めた。

ドジャースはキム・ヘソンと契約後、主力二塁手だったギャビン・ラックスを他チームへトレードした。チームはキム・ヘソンに「スーパー・ユーティリティ」役割を期待しているが、キム・ヘソン獲得に伴い主力二塁手を手放したことは、それだけキム・ヘソンへの期待が大きいことを意味する。

キム・ヘソン
(写真=OSEN)キム・ヘソン

野球におけるユーティリティとは、複数のポジションをこなす選手を指す。以前は二塁手や遊撃手、三塁手などを兼任する内野ユーティリティを指していたが、現在では内野に限らず外野守備もこなせるスーパー・ユーティリティが重宝されている。

メジャーリーグでは先発投手の登板時間が短くなり、より多くのリリーフ投手が必要となったため、ベンチ入りする野手の数が4人に減少した。そのうち1人は捕手、1人は内野手、1人は外野手で、最後の1人は内外野を行き来できるユーティリティ選手が求められる。

キム・ヘソンはKBOリーグを代表する二塁手だったが、特有のサイドアーム送球を改善できず、遊撃手としては厳しい評価を受けた。外野守備の経験も多くない。しかしドジャースは、キム・ヘソンのスピードと運動能力があれば試す価値があると信じた。

ドジャースでは、同様の役割を担っていたクリス・テイラーの契約が今年で終了し、エンリケ・ヘルナンデスとの契約も終了、控え内野手ミゲル・ロハスも引退が近いため、新たな選手が必要だった。1250万ドルは失敗しても痛手ではないが、成功すれば優れたユーティリティ選手を5年間、安く使えることになる。

「機会」よりも「競争」を選んだ挑戦精神を示す

問題はキム・ヘソン自身にある。ギャビン・ラックスをトレードしたため、主力二塁手のチャンスがまったくないわけではない。

しかし、ドジャースがキム・ヘソンを獲得した第一の理由は、彼を単なる二塁手として起用するためではなく、ユーティリティ性を期待してのことだ。ただキム・ヘソンはこれまでユーティリティとしての経験がなく、主力二塁手への道も険しい。

キム・ヘソン
(写真=OSEN)キム・ヘソン

最悪の場合、3年間マイナーにとどまる可能性もある。成功すれば5年間の安価な契約に縛られることになり、28歳のシーズン終了後にFAとなったキム・ハソンとは異なり、キム・ヘソンは30歳のシーズンを終えて初めてFAとなる。

キム・ヘソンは、これまでにメジャーに進出したアジア出身の打者のなかで、自国リーグでの成績が最も良くない。所属リーグの平均を100とし、150で最上位クラス、180でリーグトップレベルとされる「調整得点生産力(wRC+)」において、キム・ハソンは通算124、イ・ジョンフは144だった。一方、キム・ヘソンは108に過ぎない。

鈴木誠也(シカゴ・カブス)は日本での最終年に199、吉田正尚(ボストン・レッドソックス)は201という成績を残していた。鈴木は健闘しているものの、吉田は苦戦している。

日本リーグで圧倒的な成績を残した打者でさえ、メジャー進出後に成績が大きく落ち込む傾向があるため、KBOリーグでの最終シーズンが124だったキム・ヘソンにリスクがあることは否めない。キム・ヘソンは負担が少なく、出場機会の多いチームから始めるべきだったが、正反対の選択をした。

では、キム・ヘソンはなぜドジャースを選んだのか。

ドジャースの獲得目的をキム・ヘソン自身も理解している。イ・ジョンフとヒーローズへの同期入団であるキム・ヘソンは、イ・ジョンフが一躍スターとなったのとは対照的に、スターになるまでに長い時間を要した。ポスティングを撤回してあと1年、KBOリーグでプレーすればFA選手になれたにもかかわらず、厳しいスタートを覚悟してドジャースに入団したのは、メジャーリーグでも最も競争の激しい環境で挑戦するという決意が必要だったからだ。

最高の野球チームとは、スター選手を集めただけのチームではなく、全選手がそれぞれの役割を完璧に果たすチームだ。スター選手の隙間を埋める接着剤のような、優れたユーティリティ選手も必要不可欠だ。

キム・ヘソンは偉大なチームが必要とする役割を担うため、自ら厳しい道を選んだといえる。ドジャースはその役割の重要性を十分に理解しており、成功したユーティリティ選手には惜しみなく大金を投じるチームだ。

キム・ヘソンが危険な選択をしたと考える人は少なくないが、リスクは成功のパートナーでもある。

(記事提供=時事ジャーナル)

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